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私はこう考える【ダム建設について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1999/11/22 朝日新聞朝刊
巨大ダム着工へ流れ急 岐阜・徳山と熊本・川辺川(時時刻刻)
 
 二つのダム計画が年度内の本体着工へ向けて動きを早めている。岐阜県の徳山ダムは、揖斐川の流れを変える仮締め切り工事が始まり、県収用委員会が買収の進まない土地に強制収用を認める裁決を出した。子守歌で有名な「五木」が水没する熊本県の川辺川ダムも、仮締め切り工事を目前に漁協との交渉がやま場だ。自然破壊などへの反省から、欧米では無用論さえ出ている巨大ダムだが、国内の二つの計画は後戻りできない段階に入りつつある。
(岐阜支局・前島慶太郎、熊本支局・中島一仁)
●強制収用、県が裁決
 徳山ダムの建設予定地、岐阜県藤橋村の土地に対する強制収用を初めて認めた裁決は、十二日付で出された。水没するため廃村となった旧徳山村の男性が権利の一部を持つ土地だった。三日後にこの裁決を知った「徳山ダム建設中止を求める会」の近藤ゆり子事務局長は「何が何でも本体工事にかかろうという姿勢だ」と感じた。
 水資源開発公団は十七日、今度は近藤さんら建設反対派が共有する土地の強制収用も申請した。水没する千四百ヘクタールのうち、旧村民や建設反対派が所有する未買収地は、二%に相当する三十ヘクタールにまで減っている。
 建設現場では今、狭い道路をダンプカーが行き交う。十月二十六日に始まった仮締め切り工事は進み、公団は二十四日には揖斐川の流れを変える方針だ。
 ところが、岐阜県の調査で最近、ダム下流域などの約二百八十社のうち、新たな工業用水を必要としているのは五%に過ぎないと分かった。大垣市などの企業は、水温が一定で水質のいい地下水を使っている。県は企業の水需要をダム建設の根拠にしているが、ダムの水は使いたくないというのが企業の本音だ。
 岐阜大学の富樫幸一助教授(地理学)は「徳山ダムの水を企業が買わないと、自治体が一般会計から金を出して補うことになりかねない」と警告している。
●水需要・治水に疑問符も
 熊本県の川辺川は、環境庁の河川水質調査で日本一の清流になった。今年もアユ釣り客でにぎわった。
 建設予定地の相良村の河原に、川の流れを変える直径約十メートルの仮排水路の口が開いている。建設省は数百億円分を一括発注し、来年早々にも本体工事に着手する考えだ。
 川辺川ダムが計画されたのは一九六三−六五年に人吉市を襲った洪水がきっかけだ。六五年には六人が死亡、約千三百戸が損壊、流失した。その後、堤防などの河川改修が進み、ここ十七年間、死者が出る被害はない。市民グループは、ダムの洪水調節の機能に疑問を突き付けている。
 「おれたちが『うん』と言わなきゃ工事はできやしない。徳山ダムみたいにはさせない」
 川辺川に漁業権を持つ球磨川漁協(約千九百人)の総代吉村勝徳さん(五一)は言う。下流の人吉市の市民団体も「漁協が最後のとりで」と支援する。
 しかし、漁協の反対、容認派の力はきっ抗している。容認派の求めで開いた八月の臨時総代会では、反対を掲げる一方で「関係機関と話し合う」と、含みのある決議をした。
 三十年以上、ダム問題にほんろうされた水没地域の五木村では「今さら反対しても」の声がある。ダムの関連工事で生活している人もいる。
 ダムから約三千ヘクタールに農業用水を引く農水省の川辺川土地改良事業も、利水の意味を問われている。「農業後継者がなく、新たな負担をしてまで水はいらない」と、受益農家約四千人のうち半数が農水相を相手に「事業はむだ」と、農家の同意取得の取り消しを求めて訴訟を起こしている。
●「見直しに水差した」
 日本が手本にしてきた米国で、ダム建設を見なおす動きが始まっている。環境への影響が大きいうえ、住民の抵抗で完成までに時間がかかり過ぎ、投資効率が悪いからだ。建設省も長良川河口堰(ぜき)で批判を浴び、事業ごとにダム建設事業審議委員会を作って見直しを進めた。地方の中小ダムを中心に三年間で三十四の計画を中止、休止した。治水面では、堤防沿いに樹林帯を造り、洪水の力を和らげる手法も取り入れている。
 しかし、徳山、川辺川の両ダムは、工事に踏み切る構えだ。建設省河川局は「ダム審で承認された」(開発課)と話す。二つの計画の審議委員会は、いずれも早期建設の結論を出した。委員は地元の市町村長や経済団体代表、学者ら。「建設省だけで進めているわけではない」と、地域からの要望が強いことを強調している。
 ダム問題に詳しい東京都環境科学研究所職員嶋津暉之さんは「巨大ダムほど見直そうとしない。政府が公共事業ばらまきに戻り、見直し機運にも水を差した」と指摘している。
<徳山ダム>
 総貯水容量6億6000万トンで、日本一の規模になるロックフィルダム。1957年、電源開発を目的に計画され、87年、水没する徳山村の廃村を決めた。主な用途は水利用から洪水対策へと変わり、2007年度の完成をめざす。総事業費2540億円。
<川辺川ダム>
 総貯水容量1億3300万トンのアーチ式ダム。宮崎県の九州電力・一ツ瀬ダムに次ぐ九州第2の規模で、五木村の中心部が沈む。1966年に、まず治水専用ダムとして発表された。2008年度完成をめざす。総事業費2650億円。
 
 
 
 
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