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私はこう考える【ダム建設について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1999/08/12 朝日新聞朝刊
ごり押しは許されない 川辺川ダム(社説)
 
 熊本県の南部を流れる球磨川の支流、川辺川に九州最大級のダムをつくる計画に、大きな転機が訪れた。
 これまで、「絶対反対」の立場を取ってきた球磨川漁協が、建設省など関係機関との話し合い路線に踏み出した。
 話し合いが直ちに漁業補償交渉の開始などに結びつくものではないにしても、建設省にとっては、懸案解決のための大事な足がかりを築いたことは間違いない。
 日本三大急流のひとつに数えられる球磨川は、豊かで清らかな水で知られる。天然アユの好漁場でもある。
 その水は、一九六〇年に建設省と県が本流の上流につくった多目的の市房ダムによって、水質が損なわれた。
 それでも大きく悪化せずに済んできたのは、川辺川から豊かな水が流れ込んでいたからだ。球磨川漁協の約千九百人の組合員は、その水を糧として生活してきた。
 川辺川ダムの建設は、そうした営みを危地に陥れる。天然アユは激減し、人気の急流下りも振るわなくなりそうだ。漁協が反対し続けたのは当然だった。
 その漁協がなぜ、建設省との話し合い路線にかじを切ったのか。ダム建設に向けて既成事実が積み上げられていくなかで孤立感を深め、先行きの展望を見いだせなくなった苦悩を見て取らざるを得ない。
 「子守唄(うた)」で知られる五木村は、ダムができると湖に沈む。そこで最初に起きた反対運動は、周辺自治体を介したさまざまな働きかけと、村民一人ひとりを対象とした金銭補償によって押さえ込まれた。
 下流の人吉市などではその後、ダムの主目的である治水について、「ダムに頼るのは危険だ。遊水地や放水路といった代替策を」と反対運動が起きた。しかし、建設省は再検討に動こうとしない。
 ダムからかんがい用水を引く農水省の川辺川土地改良事業をめぐっても、受益農家の半数を超える約二千百人が「水は間に合っている。負担金を払ってまで建設する必要はない」と、裁判を起こしている。計画変更の際に農家の同意書がでっちあげられていたことが引き金になった。
 長良川河口堰(ぜき)の強引な建設が世論の反発を招いて以来、建設省の河川行政には従来ほどのごり押しはみられなくなった。
 各地のダム計画を見直したり、コンクリート三面張りだった河川改修に自然に近い工法を採り入れたりしている。吉野川の可動堰建設でも、推進の方針は堅持しつつ、住民との対話を模索している。
 その建設省が川辺川ダムについては、既定路線を一切変えようとしていない。
 五木村では、水没する村中心部の移転代替地がほぼ完成した。ダムサイトまでの工事用道路や、川をう回させる仮排水路もできた。漁業補償が片づけば、ただちに本体工事にかかれる状態だ。
 だが、ダムは本当に洪水防止に役立つのか、農業用水は必要なのか。全国有数の清流を殺すことにならないのか。根本的な疑問はまったく解消されていない。
 二千六百五十億円にのぼる総事業費は、国費と地元負担でまかなわれる。財政難と高齢社会の到来で、公共事業のあり方が厳しく問われるなかで、三十数年も前の計画にしがみつく理由は見いだしにくい。
 必要性に疑問符がつき、同意書の件にみられるように手続きにも問題があるのに、問答無用で押し切る態度は許されない。建設省と農水省は踏みとどまるべきだ。
 
 
 
 
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