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私はこう考える【ダム建設について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1999/02/25 朝日新聞朝刊
五木の子守唄のお里は湖底? 熊本・川辺川ダム着工へ(時時刻刻)
 
 熊本県五木村は「五木の子守唄(うた)」で知られる。その村の中心部が湖底に沈む建設省の川辺川ダム計画が、新年度からの本体工事の着工に向け、大詰めを迎えている。すでに総事業費の半分近い千二百億円が関連工事などに投じられ、着工には同川流域の球磨川漁協との補償交渉が残るだけだ。だが、公共事業見直し機運が高まるなか、県内の環境保護派は反対の声を強めている。ダムの水を利用して土地改良事業を行う下流域の農家の半分近くも、事業費の負担をためらって反対に転じた。計画から三十三年。長過ぎた「助走」のつけが噴き出してきた。
(熊本支局・樫本淳、社会部・伊藤智章)
●アユの川
 二十三日夜、住民グループ「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」(約三百人)が、人吉市で、雑誌「つり人」社の鈴木康友社長を招いて講演会を開いた。「川辺川や本流の球磨川は、全国からアユ釣りに人が来る。ほかの川がダムや堰(せき)でアユが釣れなくなったからだ」と鈴木社長は力を込めた。
 県民の会は三年前、熊本市の元高校教諭や会社員らが結成した。まだ小さな運動だが、三重県の長良川河口堰や徳島県の細川内ダムなどの反対グループと連携し、国会議員への現地視察を働きかけている。
 昨年暮れ、民主党の菅直人代表が視察し、長崎県の諫早湾干拓を例に挙げて、「役所はいったん(事業を)決めると、変えようとしない」と批判した。今月半ば、超党派の国会議員で作る「公共事業チェック機構を作る議員の会」の武村正義会長が訪問。二十四日には共産党の志位和夫書記局長が熊本市で講演し、「でたらめな事業。きっぱりと中止を求めていく」。
 この計画を公共事業批判のシンボルに、という動きが一挙に高まった形だ。
●1200億円投入
 ダムの計画が発表されたのは一九六六年のことだ。完成すれば五木村の中心部と相良村の一部の計約三百九十ヘクタール、約五百戸が湖底に沈む。目的は治水だったが後で利水、発電が加わった。当初は反対だった五木、相良両村は、その後条件闘争に転じ、三年前にともに本体着工に同意している。
 総事業費二千六百五十億円のうち、九七年度末までにすでに千二百億円が投じられ、九九年度予算は前年度に比べ五割増の百五十一億円。一月に申し入れた球磨川漁協(約二千人)との補償交渉が解決すれば、新年度からダム本体工事に着工する予定だ。
 公共事業批判の動きは気になるものの、建設省も、協力してきた県も、いまさら中止はできない。
 その球磨川漁協は二十六日に総代会を開く。これまでは反対の立場だったが、ダム関連工事で収入を得ている組合員も多く、反対・賛成両派がきっ抗した状態という。
 このダム建設をめぐっては、下流域の農家からも反対の声が上がっている。
 八三年、ダムの水で農地をかんがいする国営川辺川土地改良事業が着工された。下流域の七市町村、約三千ヘクタールが対象となる。
 だが、九六年に対象農家の約八百七十人が国を相手に訴訟を起こした。その二年前に対象面積を縮小した際の同意書の一部を無効とする訴えだが、本当の狙いは事業の差し止めだ。
 国営事業は三分の二以上の同意が必要とされる。訴訟への補助参加を含めると原告団は二千人に上り、対象農家の半数を占めている。「減反や後継者難で、今さら負担金を払ってまでやりたくない、というのが農家の本音だ」と梅山究原告団長は話す。
 さらに今年一月、原告団の追及で、同意書にすでに死んでいた農家の人の名前三十五人分が含まれていたことを国側が認め、原告側は勢いづいた。
●戸惑う村
 「この村はもう何百年かけても、元に戻れない。万が一、ダム建設が中止になったら・・・」。五木村の水没予定者で作る川辺川対策同盟会の照山哲栄会長は、こうした反対運動に戸惑いを隠せない。
 基幹産業の林業の衰退もあって、八二年に村議会が反対決議を撤回したあと、補償金を手に村を出る人が続出した。当時、三千数百人だった人口は、いま千五百人。水没する住宅や村役場の代替地の造成も、ほぼ終わっている。
 「五木の子守唄」は、口減らしのため、奉公に出された娘たちが故郷を思って歌った。水没予定地には、そのシンボルである「五木の子守唄公園」もある。
 
 
 
 
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