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私はこう考える【ダム建設について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1998/08/09 朝日新聞朝刊
「五木の里」を沈める愚 ダム建設(社説)
 
 日本三大急流のひとつ球磨川の支流である川辺川は、高知県の四万十川に匹敵する清流だ。アユが群れ、周辺では、絶滅が心配されているクマタカなど千七百種の動植物が確認されている。
 そこに、九州で最大級のダムをつくるという。完成すれば「おどま盆ぎり盆ぎり・・・」の子守唄(うた)で知られる、熊本県五木村の集落は湖底に沈む。住民団体がその計画に待ったをかけた。行政不服審査法に基づき、基本計画の取り消しを求めたのだ。
 住民側は「建設の目的は科学的な吟味を経ていないし、地域住民の意思を正しく反映してもいない」と主張している。
 建設省は住民の意見に誠意をもって耳を傾け、説得力があると判断すれば、建設をただちにやめるべきだ。
 川辺川ダムは、三十二年も前に計画された。根強い反対を押し切って建設省は昨年五月、ダム本体建設の準備となる仮排水路トンネルの工事に踏み切っている。
 同省はまた、今年六月に基本計画を変更した。総事業費を一九八四年の見積額より千五百二十億円増やし、二千六百五十億円にするとともに、工期も八年延ばして二〇〇八年までにする。住民団体は、これに異議を申し立てた。
 このダム計画には、日本の公共事業に共通する問題点が集約されている。
 まず、建設目的があいまいだ。
 建設省は洪水防止を第一に掲げるが、河川改修などで、計画当初よりその危険性はずっと少なくなっている。
 それどころか下流の人吉市の住民は、建設されたダムに限界までたまった水が、一気に放流されるときの増水の方が怖いという。同市では、有権者の多くが建設見直しの陳情書に署名している。
 二番目の目的である農業用水については、減反や後継者不足が進み、水量を増やす必要がなくなった。七三年に計画されたかんがい事業に、利用農家の半数以上が、同意できないと裁判を起こしている。
 これでは、ダムをつくること自体が目的になっているように見える。
 第二に、事業費が膨らみ続けることを挙げねばならない。計画時には三百五十億円だったのが、二度も大幅に増額された。熊本県の負担額は五百八十億円にもなる。
 このように「小さく生んで大きく育てる」のが官僚と業者の手法とすれば、完成までにいくらかかるか見当もつかない。
 さらに、検討の過程が不明朗、不透明である。建設省は九五年にダム事業審議委員会を設置し、ゴーサインを得てはいる。しかしその審議のなかで、批判的な意見が真剣に取り扱われた気配はない。
 ダムの建設によって清流が失われれば、球磨川下りなど観光に与える悪影響も大きいと、反対派はいう。
 解せないのは、大蔵省の態度である。財政は危機的な状況にあると言いながら、このように疑問の多い事業になぜ巨額の予算を認め続けるのか。
 先の参院選で自民党が、とくに都市部で大きく後退した背景には、公共事業への批判があった。公共事業の安易な積み増しは、経済の改革を遅らせてもいる。
 無駄な事業を切ってその財源を社会保障費などに回す。それが、多くの国民の望んでいる財政構造改革なのである。
 小渕内閣が姿勢を変えれば、有権者の政権を見る目も大きく変わろう。川辺川ダムは、それを示す好例ではないか。
 
 
 
 
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