日本では、ダムに対する反対運動が強まると、建設省がよく治水を前面に出す。人の命がからむと、ダムに反対しにくいからで、治水論は時に「魔力」のような響きを持つ。長良川河口堰(ぜき)の場合がそうだった。
三峡ダムの発端は、一九一二年に成立した中華民国の創設者・孫文が大規模な水力発電を発想したことだ。その是非について中国国内で長く議論が続いてきたのは、それだけ、ダムの得失を測りかねたためだろう。
長江の治水自体に異論はないが、治水は、ダム以外にも山を守り、開発を抑え、堤防を強化するなど、もっと総合的に取り組むものだ。日本で何度もダム治水論の「魔力」に接してきただけに、三峡ダムにも無関心ではいられない。〈斉〉
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