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私はこう考える【ダム建設について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1996/02/15 朝日新聞朝刊
目的(教訓は生かされるか 徳山ダムと矢作川河口堰:中)【名古屋】
 
 朝日新聞社による審議委員へのアンケートでも、徳山ダム・矢作川河口堰(ぜき)ともに、推進の理由は「治水」が筆頭だ。それは水利用(利水)を主眼に計画された長良川河口堰が、水余りに直面すると、岐阜県を中心とする「治水論」に比重を移し、推進された経過に似ている。
 しかし、揖斐川流域治水連絡会議の発足は一九八九年、ダム建設促進期成同盟会は九二年のことだ。ダム計画に遅れること約二十年。河口堰を推進した松永清蔵県議も言う。「決壊した長良川ほど、緊急性を感じなかった」
■進まぬ堤防の整備
 建設省も木曽川と長良川の堤防整備はほぼ終えたのに、揖斐川はまだ六割以下だ。七五年、豪雨で想定以上の土砂が流れ込んだ横山ダム(揖斐郡藤橋村)でも、除去作業はまだ計画段階だ。昨年十一月、岐阜県議会で「徳山ダムを必要とするほど治水対策が遅れているのに、たまった横山ダムの砂をなぜ取り除けないのか」(渡辺信行県議)と問題になった。
 河川工学者の中には「最上流で水をためるより、下流の堤防補強が現実的ではないか」という人もいる。が、揖斐川でダム以外の治水対策がまともに検討されたことはない。
 旧徳山村民(五九)も言う。「治水上の危機と言うならなぜ、国は強力に用地買収し、本体着工に入らなかったのか。住民はいつも論議の道具にされている」
■節水で需要横ばい
 「意外にみんな、関心があるんですよ」
 名古屋市西区の保険業臼井章二さん(五八)が昨年六月呼びかけた「雨水利用を進める会」は、会員が百五十人に達した。五月に初のシンポジウムも開く。
 臼井さんは、雨水を地下の水槽に流し、ポンプアップして使っている。水道使用量はゼロだ。一昨年の渇水時を機に、知られるようになった。頻発する渇水や阪神大震災で住民意識が変化したのか、自治体からも問い合わせがある。
 でも、市民の節水意識が定着すれば、需給ギャップが拡大する。昨年度の日平均給水量は八十六万トン。二年連続で減った。今年も横ばい。一方で現在の給水可能量は長良川河口堰を含め、百七十一万九千トン。徳山ダムができると二百十六万トンになる。
■近畿へ導水の話も
 「徳山の水を、近畿に持っていったらどうか」
 自治体幹部の間では、こんな話も飛び出す。ダム西側の山地にトンネルを開けて琵琶湖に流し込む「徳山導水」構想だ。二十年前から、ささやかれている。
 西尾武喜名古屋市長が考えているのは、国の不特定容量の拡大だ。開発水量毎秒十五トン(名古屋市六トン、岐阜県五トン、愛知県四トン)の一部を、国が治水分として持ち、費用負担する。
 ただ、財政の厳しい国が負担増に踏み切れるか。自治体側も水利権の一部返上を言い出せるか。「首都移転」など大規模プロジェクト誘致には、豊富な水資源が欠かせない。今後ほかに大規模ダム開発の可能性は低いだけに、慎重だ。
 衣浦臨海工業地帯での需要を当て込み、工業用水毎秒三トンを開発しようとした矢作川河口堰も、事情は同じ。上流の矢作ダムの水も使い切っていない。
 米国では、既存施設の調整の方が安上がりと、新規のダム開発をストップする動きが出ている。東海地方でも一昨年夏、古くからの水利権を持つ農業用水に自主節水してもらい、渇水を乗り切った。
 「今までと状況が違うことは分かっている」(愛知県幹部)。大きな政策転換となる決断。各自治体は慎重に検討を進めている。
(伊藤智章・桑山朗人)
○利権巡り思惑交錯
 岐阜県藤橋村のはずれに城がそびえている。高さ二十三メートルの村が建てた「藤橋城」。内部にはプラネタリウム。近くには西美濃天文台やオートキャンプ場がある。
■客を当て込み施設
 役場から奥に入ったさびしげなこの場所に、奇妙なことだが、真新しい施設が目立つ。村幹部は「ダムの見物客を当て込んだが、関連施設が先にできてしまった」と苦笑いする。
 二年前、商工会役員らが「藤橋流通センター」をつくった。建設労働者向けの食品、雑貨販売、人材あっせんが目的だが、思惑が外れた。資本金一千万円の七割はもうない。「ダム早期着工を」と商工会長の清水政則さんは切実だ。
 ダム着工の遅れは、共有地買収の遅れが原因だが、村人の水資源開発公団を見る目はしんらつだ。「用地担当者が半減した。本気でやる気があるのか」
 ただ、今度のダム審議委員会で、村幹部も「ダム中止」までは心配していない。用地買収を除き、すでに約四百五十五億円の工費がつぎ込まれている。このうち「地元に七割は還元している」(坂田登・公団徳山ダム建設所副所長)。
 国道改良も進んだ。福井県へ抜けるトンネル計画もある。周辺町村も含め、国の「水源地域対策特別措置法」で、約九十六億円をかけて林道や村道などが整備された。さらに九七年度までに約六十六億円が追加投資の予定だ。
■うまみの多いダム
 この地域はすでに、ダム抜きに、将来は描けなくなっている。
 建設業者もしたたかに見ている。地元大手の西濃建設は「バブル崩壊で受注が落ち込んだが、準備工事で穴埋めができた」。
 ダムは工期が長く、工費も大きい。人や機械も一カ所に張り付けて大量のコンクリートを処理する。材料も地元から購入でき、手間が省ける。「公共工事でダムほどうまみのある仕事はない」と、大手ゼネコンの元幹部が打ち明ける。
■ゼネコンがしのぎ
 八八年、藤橋城の入札には清水建設、大成建設、鹿島、大林組など、超一流のゼネコン八社が顔をそろえた。人口四百四十四人(今年一月末現在)のミニ村で初めのことだった。
 村の元幹部によると、入札を三回したが、いずれも不調。村は最低札の六億一千万円を入れた熊谷組に頼んで、五億三千万円にまけてもらって契約した。
 一見、同社が出血サービスしたかのようだが、「これでダム工事に向け、発言権を得た」というのがゼネコン幹部の見方だ。
 日本ダム協会(東京)によると、九四年四月現在、全国で完成済みダムは二千五百五十六。さらに五百八十七カ所で、工事、または調査中だ。総事業費は少なくとも、十三兆六千六百八十九億四千五百万円にのぼる。
(的場次伸)
<水需給>
 水問題に詳しい東京都環境科学研究所所員の嶋津暉之さんによると、木曽川流域の水需要(1日平均)は工業用水と上水道を合わせて598万トン(93年)だった。前年より20万トン減っている。国土庁のフルプラン予測(93年発表)は2000年に905万トンと見込むが、嶋津さんは「せいぜい630万トン」。これなら長良川河口堰や徳山ダムを使わなくても、余っている工業・農業用水を漸増傾向の上水道に回せば渇水にも十分耐えられるという。
 
 
 
 
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