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私はこう考える【ダム建設について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1995/04/05 朝日新聞朝刊
長良川の清流を保つために(社説)
 
 四月一日に予定されていた長良川河口堰(ぜき)の運用が、延期された。
 野坂浩賢建設相が先週、「決定を五月二十日ごろまで延期し、賛否両派による円卓会議と魚類への影響調査を続ける」と発表したからだ。この判断を歓迎する。河口堰建設に批判的だった社会党閣僚ならではの決断だろう。
 われわれは今年はじめ、成田空港問題で大きな役割を果たした「円卓会議」を長良川でも開くよう求めた。建設省事務当局が重い腰をあげ、三月十二日から四回開かれたが、論議が尽くされたとはいえない。
 成田の円卓会議では、推進、反対両派が有識者の座長グループを選び、期限を切らずに納得のいくまで話し合った。それに比べ長良川では、建設省の調査委員会の委員たちが座長をつとめ、三月末までに終わらせようと急いだきらいがある。
 にもかかわらず、反対派の提案した「地震調査の追加」や「耐震堤防への変更」については、推進派の地元町長も合意するなど、それなりの成果があった。
 座長もつとめた調査委員は「円卓会議は単なる儀式であってはいけない。議論を詰めれば歩み寄れる」と語っている。建設省は、この発言を重く受け止めるべきだ。
 会議の再開にあたっては、できるだけ成田方式にならうよう望みたい。まず、法律や経済の専門家を座長団に加えることだ。河口堰の是非の判断には水需要の見通しなどの検討も必要なのに、現在の調査委員には自然科学系の学者しかいない。
 そもそも長良川河口堰は、高度成長期に工業地帯への給水を主目的に計画された。予測がすっかり狂い、いますぐ取水を始めなければならぬほどの需要はない。また、洪水防止に必要とされるしゅんせつは、堰を開いたままでも作業ができる。運用開始を急ぐ理由はないのだ。
 時間をじっくりかけて、今後のモデルになるような、しっかりした議論と調査をしてもらいたい。
 いま全国では、北は北海道の千歳川放水路から南は熊本県の川辺川ダムまで、二十近い水源開発地やその予定地で反対運動が起きている。
 なかでも、徳島県の西南端にある木頭村(きとうそん)は、昨年末に「ダム建設阻止条例」を制定した。村内に計画されている細川内ダムの建設を許せば、清流と森林が失われ、安全で快適な村民の生活が脅かされる、と考えてのことだ。
 条例は、村長が事業者に建設中止を勧告できることや、ダム予定地の地主が所有地を譲渡するときは事前に村長に届け出なければならないこと、を定めている。
 現在は、国の巨大事業に対して地元自治体や市民が対等に話し合えるルールがない。各地で「円卓会議」を開こう。公開の議論に応じてこそ国民の広い支持も得られる、と建設省は知るべきである。
 建設省に望みたいのは、過去のいきさつやメンツにとらわれぬ柔軟な姿勢だ。ダム開発のような大型公共事業は計画から着工まで、場合によっては何十年もかかる。その間に経済情勢も国民意識も変化する。必要性が薄くなったダムは、計画を撤回する勇気をもってもらいたい。
 長良川河口堰が完成すると、三重県は巨額の工事費償還金を支払わなければならない。それなのに表立った反対の声が少ない理由を、ある県議は「建設省の意向にさからうと、ほかの事業で仕返しされるから」と語っている。このようなことが許されないのは当然である。
 
 
 
 
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