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新たな小型船舶操縦士制度について
“船舶職員及び小型船舶操縦者法”
 船舶職員法は、船舶職員又は小型船舶操縦者として船舶に乗組む者の資格を定めその船舶の航行の安全を図ることを目的としているもので、海技士及び小型船舶操縦士の免許や国家試験などについて規定しています。
 しかし、近年マリンレジャーの増加、多様化が進み、結果として小型船舶の海難事故の多発はゆるがせに出来ない問題として、大きな課題となってきました。
 このため、小型船舶の航行安全を強化する為、「小型船舶操縦士制度」の抜本的な見直しを内容とする「船舶職員法の一部を改正する法律」が平成14年6月7日に公布されました。
 平成15年6月1日に従来の「船舶職員法」は「船舶職員及び小型船舶操縦者法」として施行されました。
 この改正法の特徴は下記の通りで
1. 大型船乗組員の海技免状と小型船舶船長の海技免状(小型船舶操縦免許証)と分離されました。
2. 従前の小型船舶操縦士の資格は1級から5級に区分されていたが、改正法では1級及び2級と特殊小型船舶操縦士(水上オートバイ用)の3区分に改められました。
3. 小型船舶操縦者の遵守事項が定められ、違反者には行政処分が課せられることになりました。
 以下この法律の概要について紹介いたします。
 
1 船舶職員と小型船舶操縦者の分離
・小型船舶の船長を「小型船舶操縦者」と定義し、「船舶職員」から分離する。
 
 
(注) 小型船舶の範囲には、20トン未満の船舶に加え、一定基準に該当する20トン以上の大型プレジャーボート(現行法第20条特例許可の対象となっているものを予定)を含めることとしている。
 これにより、いわゆる大型プレジャーボートについては、今後、許可制ではなく、客観的基準に基づいた確認手続きにより、総トン数の限定が無い1級又は2級の小型船舶操縦士1名による操縦が可能となる。
 
2. 資格区分の再編
・1級から5級までの区分を、1級、2級及び特殊の3区分に再編(31ページ参照)。
 
ボート・ヨット用 1級小型船舶操縦士(外洋免許)
2級小型船舶操縦士(沿岸免許)
水上オートバイ用 特殊小型船舶操縦士
 
*水上オートバイを操縦するには、「特殊」の免許が必須(1・2級では操縦不可)
・1級及び2級には総トン数5トン未満の限定区分を、さらに2級には湖川小出力の限定区分を設定。
・2級の湖川小出力限定は、機関出力を15キロワット未満に拡大。
 
3. 小型旅客安全講習(特定操縦免許制度)
・小型旅客船、遊漁船等の小型船舶操縦者になろうとする者は、通常の試験の合格に加え、「小型旅客安全講習」の受講を要件とする特定操縦免許が必要。
*旅客船:
海上運送法第2条第2項の事業船で物のみを運送するもの以外の小型船舶を予定。
遊漁船:
遊漁船業の適正化に関する法律第2条第2項の小型遊漁船を予定。
・講習は、現行海技士用の免許講習のうち救命講習(機関救命講習)を有効活用する。(海技士との合同講習は可とするが、小型に全く不要な内容は省略する予定)
・なお、現行免許の受有者は、改めて当該講習を受講することは不要。(免許証の変更等の手続きも不要)。
 
4. 遵守事項
(1)酒酔い等操縦の禁止
・飲酒や薬物等の影響により、注意力や判断力等が著しく低下しているなど、非正常状態で、小型船舶を操縦することを禁止する。又はこの状態の者に小型船舶を操縦させてはならない。
(2)有資格者による自己操縦
水上オートバイを操縦するとき(全ての水域)及びそれ以外の小型船舶で港則法の港内及び海上交通安全法の航路内を航行(横断含む)するときは、原則、免許受有者以外の操縦を禁止する。
・ただし、次の場合は自己操縦の対象外とする予定。
1)組織運航が前提の事業用小型船舶や帆走中のヨット
2)試験機関の試験員、指定教習所の実技教員が操船指揮する場合
3)地方運輸局長等が小型船舶の航行の安全上支障ないと認める場合
(3)危険操縦の禁止
・遊泳者等の付近において、小型船舶を遊泳者等と衝突の危険のある速力での航行、疾走、急回転又は縫航する操縦については危険操縦として禁止する。
(4)救命胴衣等の着用
・次の場合は、救命胴衣等の着用を義務化。
1)水上オートバイに乗船するとき
2)12歳未満の子供が小型船舶に乗船するとき
3)単独乗船の漁船で、連絡手段を持たず、漁ろう作業に従事するとき
4)小型船舶の暴路甲板に乗船しているとき
・ただし、次の場合は着用義務を除外する予定。
1)救命胴衣等が健康・療養上不適当な場合や適切な着用ができない場合
2)命綱又は安全ベルトを装着するなど適当な措置がされている場合
3)旅客船に乗船している者や船室内にいる場合
・救命胴衣等:救命胴衣(一般船・小型船用)、作業用救命衣、小型用浮力補助具
(5)その他
・発航前に、燃料・オイルの量、気象・水路情報の入手、船体・機関・救命設備等、安全な航行に必要となる点検の実施
・乗船中における、適切な見張りの確保
・事故時において、人命救助に必要な手段を講じることを明確化。
 
5 行政処分・再教育講習
 4項の(1)〜(4)の遵守事項に違反し、一定の基準に達した者は、行政処分(6ヶ月以内の免許停止又は戒告を課すこととなっております。
 ただし、再教育講習を受講したものは、行政処分の免除又は軽減されることとなっています。
(1)違反行為と点数
酒酔い操縦、自己操縦義務違反、危険操縦 3点
船外への転落備えた措置義務違反(救命胴衣非着用) 2点
注1 過去一年以内の違反点数は累積点数として加算される。
注2 同時に二以上の違反行為があった場合は、点数の高い方の点数による。
注3 違反行為により他人を死傷させた場合は、3点を加えた点数とする。
(2)処分及び再教育講習受講通知基準
前歴の「なし」累積点数 5点
前歴の「有り」累積点数 3点
注1 前歴の有無とは、過去3年間にこの法律に違反して処分を受けているか否かをいう。
注2 再教育講習の内容は
小型船舶操縦者が遵守すべき事項
小型船舶の操縦に必要な知識
小型船舶の航行の安全に必要な事項 等
(3)再教育を受けた場合の処分の免除及び軽減基準
処分が一ヶ月以内の業務停止の場合・・・戒告又は業務停止期間の短縮
処分が一ヶ月を超える期間の業務停止の場合・・・業務停止期間の短縮
 
6 遵守事項の取締り
・遵守事項の取締りは、地方運輸局の担当職員(船員労働環境・海技資格課、船舶安全環境課)が法第29条の2の規定の権限を行使しつつ行うこととなる(海上保安官及び警察官もそれぞれの職務範囲内で行い、発見した違反事実を国土交通省側に通報することとしている。)。
・地方運輸局担当職員による取締りは、海上保安官及び警察官等と連携の上、ハイシーズンの利用の多い水域を重点的に行うなど、効率的・効果的に実施することとする。
・取締りに関する運用手続等については、検討中(海上保安庁及び警察庁との調整が必要。)。







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