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水上オートバイの海難について
海難の再発防止のために
 海洋レジャーに最適な海域を有する、当地方における毎年発生するプレジャーボートの海難件数は第一位を占める状況が続いています。
 これを船種別に見るとモーターボートに次いで水上オートバイの海難の発生件数が多いことが目立っています。
 水上オートバイは手軽にスピードとスリルが味わえる為、若者に人気の海洋レジャーとして受入れられているが、事故も増加の傾向にあり、いったん事故を起こした場合、スピードに加え乗船者の体を保護するものが無いため、重い人身事故となる例が多く見られます。
 そこで、神戸海難審判庁が平成8年8月から平成14年6月までに審判・裁決した水上オートバイ関連事故事例について、その原因と留意事項の取りまとめ及び各事例の概要図をいただきましたので、海難の再発防止に資するためにご紹介致します。
 
―最近6ヵ年の事例―
資料提供 海難審判庁(地方海難審判庁 海難分析集
平成14年度 水上オートバイ海難のまとめ―最近6ヵ年の事例―より抜枠)
 
1 海難・事故の態様による分類
 事例をその態様毎に分類すると次のとおりです。
(1)水上オートバイ同士の衝突
・・・2件(事例[8]、[12])
(2)モーターボートと水上オートバイが曳航するウェイクボーダーとの衝突
・・・1件(事例[1])
(3)水上オートバイと水上オートバイが曳航する浮環との衝突
・・・2件(事例[2]、[9])
(4)水上オートバイが曳航する浮環と遊泳者との衝突
・・・1件(事例[4])
(5)水上オートバイと遊泳者との衝突
・・・2件(事例[5]、[11])
(6)水上オートバイと岸壁等との衝突
・・・4件(事例[3]、[6]、[7]、[10])
つまり、
・静止している相手に衝突したもの
・・・7件(事例[3]、[4]、[5]、[6]、[7]、[10]、[11])
・動いている相手に衝突したもの
・・・5件(事例[1]、[2]、[8]、[9]、[12])
となっています。
 ここでわかることをまとめると次のようになります。
 
まとめ
・静止しているものにも注意を払う必要があること
・岸壁等構造物に接近し過ぎないようにすること
 
2 死傷等による分類
死亡者があったもの
・・・4件(事例[1]、[2]、[3]、[7])
負傷者があったもの
・・・9件(事例[4]、[5]、[6]、[7]、[8]、[9]、[10]、[11]、[12])
このうち、
同一事件で死亡者と負傷者があるもの
・・・1件(事例[7])
また、
(1)船長が死傷したもの
・・・2件(事例[6]、[8])
(2)船長と同乗者が死傷したもの
・・・3件(事例[7]、[10]、[12])
(3)同乗者が死傷したもの
・・・4件(事例[1]、[2]、[3]、[9])
(4)遊泳者等が死傷したもの
・・・3件(事例[4]、[5]、[11])
となっています。
 ここでわかることをまとめると次のようになります。
 
まとめ
・スピードの出し過ぎが死傷につながっていること
・船体構造上、身体を防御するものがないこと
・無資格者が操縦していたこと
・同乗者が死傷する場合が多いこと
 
3 原因による分類
(1)見張り不十分が原因となっているもののうち、見張りをすべき対象別では次のとおりとなっています。
・水上オートバイ
・・・2件(事例[8]、[12])
・水上オートバイが曳航しているもの
・・・3件(事例[1]、[2]、[9])
・遊泳者等
・・・3件(事例[4]、[5]、[11])
(2)針路選定不適切
・・・1件(事例[3])
(3)無資格の同乗者が操縦(操縦不適切)
・・・3件(事例[6]、[7]、[10])
(4)船間距離不十分
・・・2件(事例[8]、[12])
ここでわかることをまとめると次のようになります。
 
まとめ
・他の水上オートバイやモーターボートだけでなく、曳航されているものや遊泳者にも注意すること
・無資格者には操縦させないこと
 
4 結論
 以上のことから、次のような点に留意して水上オートバイの安全な運航に当たるよう心がけてください。
 
安全運航のための留意点
・曳航されているものや遊泳者に注意すること
・無資格者には操縦させないこと
・岸壁等をできるだけ離して航走すること
・水上オートバイに関連する海難・事故は、特に死傷を伴うことが多いこと
なお、
 水上オートバイの特性として、高速力(時速100キロメートルで1秒間に約28メートル航走する)のとき、判断して操縦する時間が短いこと、スロットルレバーを放すとすぐに停止する及び低速力では施回が容易でないことが挙げられるので、注意する必要があります。







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