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司会 先生、どうもありがとうございました。せっかくの機会ですので、先生にご質問等がある方は、どうぞお手をお挙げになって、ご意見をおっしゃってください。どうぞ。
質問 今日はどうもありがとうございました。一つ、これは逆の側の立場ですが、ペリーのほうは、この風説書の存在を知っていて、利用するということはあったのでしょうか。
片桐 直接、風説書のどの文章のどこをどうしたかということは、なかなかわかりにくいと思いますが、そうではなく、ペリーは日本に来るに際して日本というものをよく勉強している、猛勉強して来ています。そう言われてみるとあたりまえですが、戦争をするときには相手のことをよく調べて、調べ上げて、十分によく調べるものです。ペリーの場合も、日本関係の本をよく見てきています。筆頭に上がっているのがケンペルの「日本史」、「History of Japan」というもので、それ以後、歴代のオランダ人が書いている日本関係の本をよく調べています。日本とオランダがどういうつき合い方をしているかということもよく調査してやって来ていますから、こういうことは十分知って、やって来ています。株の話でいうなら、「織り込み済み」でやって来ています。
司会 もう一方、いまマイクがまいりますので、少しお待ちください。
質問 面白いお話をありがとうございました。練馬のツヅキと申します。いろいろ面白く感じたことがございますが、質問を一つだけお願いします。いろいろな情報がオランダを通して入ってきた、そしてオランダ語の通詞がたくさん、日本にかなりの数がいて、情報が入ってきたことはわかりますが、それ以外の国の船、異国船が、あのころになると日本近海にしきりに出没して、そういうことは長崎でやっているから長崎へ行けというような指示を出したというようなことがサラリと書いてありますが、あのころ、フランス語や英語、あるいはロシア語のわかる日本人がいたのでしょうか。
片桐 この段階ではもう若干おりました。ただし、堪能ではありません。字引もそろそろつくりかけていました。その準備をしたのは長崎のオランダ通詞です。フランス語の場合でいうと、本木庄左衛門という人を中心にして、プロジェクトを組んで、一生懸命にやっていました。ロシア語の関係は馬場佐十郎という人を中心にして一生懸命にやっていました。
質問 それでは逆に言うと、長崎に行けばある程度は応対ができるけれど、地方に来られたのでは言葉もわからないから困るということですね。
片桐 そういうことですね。だから海岸線を持っている各藩は、異国船が来たときには対応して長崎に極力回すようにという指示がされています。
質問 どうもありがとうございました。
司会 それではお時間もまいりましたので、本日はここで終了したいと思います。どうもありがとうございました。
 
平成15年6月15日(日) 於:フローティングパビリオン“羊蹄丸”
 
講師プロフィール
片桐一男(かたぎり かずお)
昭和9年(1934)、新潟県に生まれる
青山学院大学名誉教授、文学博士。
蘭学史、洋学史、日蘭文化交流史を専門とする。
『阿蘭陀通詞の研究』で角川源義賞受賞。
NHKラジオで「蘭学事始とその時代」を半年放送、長崎新聞に「出島散歩」を1年連載。
駐日オランダ大使の委嘱により、日蘭交流記念事業のひとつ「江戸参府2000」の総監修を務める。
 
著書:『開かれた鎖国−長崎出島の人・物・情報』(講談社現代新書)
『江戸のオランダ人−カピタンの江戸参府』(中公新書)
『出島−異文化交流の舞台』(集英社新書)
『レフィスゾーン 江戸参府日記』(新異国叢書 第III輯)など多数。







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