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平成15年度
社会貢献者の記録
The 2003 FESCO Awards for Social Contribution
社会貢献支援財団
Foundation for Encouragement of Social Contribution
 
まえがき
Foreword
 平成15年度も、皆様のご協力の下、29件の素晴らしい社会貢献者の方々を表彰させて頂くことができました。ご推薦者の方々、事業助成をいただいた日本財団、ご後援を賜った内閣府・総務省・外務省・文部科学省・厚生労働省・国土交通省ほか、ご協力くださった関係各位に厚くお礼申し上げます。
 本年度は「緊急時の功績、多年にわたる功労、特定分野の功績」の三部門283件、「こども読書推進賞」324件の候補者の方々をご推薦いただきました。その選考につきましては、表彰選考委員会により厳正に行われ、第一部門(緊急時の功績)5件・第二部門(多年にわたる功労)13件・第三部門(特定分野の功績)8件、こども読書推進賞3件、計29件の方々の受賞を決定いたしました。平成15年11月、常陸宮同妃両殿下のご臨席の下、表彰式典を挙行し、受賞者の方々を表彰させていただくとともに、日本財団賞をお贈りいたしました。
 受賞者の最年少は17歳、最年長は76歳の方でした。第一部門の受賞者は、自らの危険を顧みず人命の救助に当られた方々で、そのために尊い一命を捧げられた方も含まれております。第二部門は、多年にわたり社会貢献活動に取り組まれ著しい功績を挙げられた方々、第三部門では海に関わる功績を挙げられた方々や積極的に社会に尽くされている若者達などを表彰させていただきました。また、本年度から、「こども読書推進賞」として、こども達の読書活動の推進に成果を挙げておられる学校や個人などの表彰を開始いたしました。
 受賞者の方々は、勇気を持って行動され、時として貴重な犠牲を払い、また多年にわたって困難を乗り越えて活動を続けられるなど、卓越した功績をもってよりよい社会の発展のために尽くされました。わたくしたちの表彰によって、これらの方々の輝かしいご功績がより広く知られ、さらにはそれによって社会全体の善意の活動を豊かにすることができれば、これに優る喜びはありません。
 
社会貢献支援財団
会長 猪熊葉子
Chairperson of Foundation for Encouragement of Social Contribution
Yoko Inokuma
 
常陸宮殿下のお言葉
常陸宮殿下
 
常陸宮妃殿下
 
 本日、ここに、社会貢献支援財団の平成15年度社会貢献者表彰式典に臨み、栄えある表彰を受けられる皆さんにお会いできたことを大変嬉しく思います。
 皆さんは、よりよい社会をつくり明るい日本の未来を開くため、国の内外において人命救助を始め、多年にわたり社会福祉の増進や国際社会への貢献、青少年の指導育成など様々な分野で顕著な功績をあげてこられた方です。その貴い行いは、世の人々の立派なかがみであり、深く敬意を表します。
 なかでも、人命救助や災害防止のため、尊い一命を捧げられた方の勇気ある行いは、未来末永く語り継がれることと思います。ご遺族のお気持ちはいかばかりかとお察しし、心から御冥福をお祈りします。
 本日表彰をうけられた皆さんが、これからも一層活躍されることを期待するとともに、皆さんの立派な行いを手本として、われわれもまた、少しでも世のため人のために尽くしたいものであります。
 
表彰選考委員会委員長挨拶
 
 本日ここに、常陸宮同妃両殿下のご臨席を賜り、平成15年度、社会貢献支援財団による「社会貢献者表彰式」を執り行うことになりましたが、こんなにも多数の方々がお集まりくださいましたことにもまた、心からのお礼を申し上げます。
 ここには、命の危険を省みず、他者を生かすために尽くしてくださった方々と、そのご遺族もおられます。今世界のあちこちで、理由は何であれ、殺戮を目的とする人間の情熱が渦巻く中で、密やかに、無言のうちに、かつ持続して命を守ることに人間の使命を見つけ、その真理を片時も曲げられなかった魂の勇者がおられました。そうした方々に改めて深い尊敬を捧げますと共に、そのご家族が亡くなられた方が残された愛の中で、お元気で生き続けてくださることを願うのみでございます。
 私はカトリックの学校に育ち、『ヨハネによる福音書』の中に「友のために自分の命を捨てること、これ以上に大きな愛はない」とはっきり書かれているのを学びました。戦後の日本では、一部の先生たちによって助長された利己的な社会観が人権だとして認められてきましたが、そのような功利的な社会の中でどれほどこの言葉が大きく輝いているかもしばしば考えたものです。人間は受ける時にもささやかな嬉しさを感じますが、与える時にもっと大きく満たされて報われるのです。
 この社会貢献支援財団が、表彰させて頂きたいと願う方々には、国籍にも、地球上のいずれの地点で活躍なさったかも一切関係ありません。ここで表彰された方々は、たとえ誰一人見ていなくても、世界の一隅で、人間としての尊厳、魂の高貴さのゆえにその義務を全うされた方々ばかりです。そのことに私たちは深い尊敬を捧げます。
 海に囲まれた日本では、陸と同じように海を大切な生命の活躍の場と考え、その安全と任務に力を尽くされた方たちに感謝をしたいと考えて来ました。池本義房さんは鐃鉄という独特の分野において、中嶌弘之さんは大型プロペラという非常に難しい分野の開発において、そして平江達稔さんは平成13年12月南シナ海において日本の巡視船が北朝鮮の工作船から攻撃を受けた際、銃撃の中で極めて冷静にその情況を記録のフィルムに納める、というそれぞれの任務を全うされました。只今、お台場ではこの工作船を一般公開しておりますが、このフィルムが、何より静かに事実を訴えて、人々の認識に大きく役立っております。
 日本のあちこちに、私が心の中で「みごとな日本人」とお呼びしている方たちが、他にもたくさんおられることは誰しもが知っていることです。日本の資産は、ひとえにこうした誠実で、勤勉で、正直で、社会のために時間を忘れて働く方々が国民の大多数を占めていることだと思います。その「証拠」を目の当たりに見せて頂けるということで、この賞は大変ユニークなものだと私は毎年楽しみに出席させて頂いております。
 今日は副賞として賞金もお渡しすることになっております。
 多分多くの方々は、職場のお仲間とも祝賀の美酒の味を楽しまれるとも思うのですが、どうぞあまり堅くならず、ご自分の趣味や楽しさ、奥さまへのプレゼントのためにも気楽にお使いください。そして英気を養い、視野を広げ、更に大きく深い未来への展望を持って職場にお戻りくださることを願っております。
 日本も世界全体も今、むずかしい心の転機に向かっているように思われます。人がするからいいことではない。人が始終口にすることだから正しいわけでもない。むしろ一人一人が、時には命を賭けて個人の美学を全うすることが必要です。その真の人間的な戦いこそ、その国と社会の香りのいい成熟を創り、それが安全にも繁栄にも繋がることもまた真実です。その意味での皆さま方の今後のご活躍を心からお願い申し上げてご挨拶といたします。
2003年11月4日
 







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