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4 現地調査の概要
(目的)
 各地の地域の祭礼や伝統行事、また、それらを活用したイベント等を視察するとともに、地方公共団体における地域伝統芸能等の保存・継承、振興の取組み等について調査を実施し、「文化」を基調した具体的な地域再生手法について調査研究を行うことを目的とする。
 
<実施状況>
名称又は演目 地域 調査日 調査を行った
委員
概要
小鹿野歌舞伎
(第33回歌舞伎・郷土芸能祭)
埼玉県小鹿野町
(小鹿野文化センター)
○平成15年11月16日
(本イベントは11月15日、16日)
法橋委員 昭和46年に町内の歌舞伎各座などを集めて郷土芸能祭を開催、今年で33回目を迎える。県外でも上演し好評を受けた子ども歌舞伎、小鹿野歌舞伎、秩父囃子などの郷土芸能を披露。また、町内の観光・商工業、ボランティア団体などによる観光物産展等も開催。
遠山の霜月まつり
山国生活体験イベント『かみむらの冬』
長野県上村 ○平成15年
12月11日
12日
山本委員 上村の山国生活体験イベント『かみむらの冬』に参加。12月11日に上村の上町正八幡宮での遠山の霜月祭りの見学を行うとともに、郷土史研究家の講演や座談会、ビデオ鑑賞などを行う。
遠山の霜月まつり
「山の寺子屋in遠山郷2003」
長野県南信濃村 ○平成15年
12月23日
24日
小島委員 南信濃村の霜月祭り体験ツアー「山の寺子屋in遠山郷2003」に参加。1日目は遠山郷土館等の見学と大町遠山天満宮での霜月祭りの見学。2日目は現在は廃校となっている旧木沢小学校へ一日体験入学等。
 
小鹿野歌舞伎(第33回歌舞伎・郷土芸能祭)
1 小鹿野町の概要
 
(1)地域の概要
 小鹿野町は、埼玉県の西北部に位置し、秩父盆地のほぼ中央に市街地を形成し、都心から80kmの距離にある。市街地を東西に走る国道299号は、かつて江戸と信州を結ぶ重要な街道で、古くから市場町として繁栄し、江戸との交流も盛んに行われ、独自の文化を数多くつくりだしている。
 
人口:12,043人(3,648世帯)
面積:100.03平方キロメートル
 
(2)小鹿野へのアクセス
 東京から約80キロメートルの距離であり、鉄道利用では、池袋から西武鉄道の特急で秩父まで約80分、西武秩父駅から西武観光バスに乗り継いで約45分。また、上越新幹線・高崎線熊谷駅から秩父鉄道で秩父駅下車、西武観光バスに乗り継いで約40分。
 自動車利用では、関越自動車道花園ICから国道140号を秩父方面へ、秩父から国道299号を小鹿野方面へ。(花園ICから約45キロメートル)
 
2 小鹿野歌舞伎について
(1)概要
 小鹿野歌舞伎の起源は今から約200年前にさかのぼり、江戸で修業を積んだ初代坂東彦五郎が帰郷後近所の若者に歌舞伎を教えたことに始まる。その後小鹿野を本拠地に芝居一座が引き継がれ、明治・大正期に秩父の歌舞伎の最盛期を作った。昭和に入り、映画などの流行から一座芝居も大きく変化したが、文化財保護の気運が高まり、昭和48年に小鹿野歌舞伎保存会が結成された。
 昭和46年より始まった郷土芸能祭を始め、町内の常設舞台や掛け舞台、祭り屋台(山車)で年間8回定期的に上演されている。最近では、子供歌舞伎、若手歌舞伎、女歌舞伎に加えて町民参加型の「入門教室」も活躍し、後継者への受け継ぎも盛んで「町じゅうが役者」といわれている。
 歌舞伎を町の文化使節として派遣する「地域間文化交流事業」も好評を得てこれまでに県内外20数カ所で公演した。歌舞伎を通じた文化交流を積極的に進め、町のイメージアップを図っている。
(2)文化財の指定
 昭和50年には県指定無形文化財、昭和52年に県無形民俗文化財の指定を受けた。また、平成5年度には埼玉県「ふるさと彩の国づくりモデル賞」を受賞し、平成7年度から県補助事業として「歌舞伎のまちづくり」の指定を受け、地域独自の文化を創造するよう町中で様々な活動を展開している。
 
3 第33回歌舞伎・郷土芸能祭
 「歌舞伎・郷土芸能祭」は、小鹿野歌舞伎をはじめとする町内外の様々な伝統芸能の発表、交流の場として定着しており、町の伝統文化振興に大いに寄与しており、今回で第33回目を数える。
 また、伝統芸能の上演に加えて、町内の観光・商工業、ボランティア団体など幅広い団体の参加のもと、会場前での特産品等の販売を行う観光物産展「歌舞伎横丁」や観光物産館「夢鹿蔵」での秩父囃子等の催事を行っていた。
 
(イベントの概要)
(1)日時 平成15年11月15日(土)12:00〜16:10
11月16日(日)9:30〜16:45
 
(2)会場 小鹿野文化センター(座席数約700)
 
(3)参加費 無料
 
(スケジュール)
※ 実際に視察を行ったのは11月16日のみ。
(11月15日)
 
12:15〜12:30
秩父囃子(小鹿野保育所)【館外会場】
 
12:30〜12:35
開会あいさつ・紹介
 
12:35〜12:50
三番叟
 
12:55〜13:20
三田川中学校生徒「白浪五人男稲瀬川勢揃の場」
 
13:25〜13:55
歌舞伎伝承教室発表
 
14:05〜14:30
神楽(松井田神楽保存会)「両人神子」
 
14:40〜15:05
子ども歌舞伎教室発表「白浪五人男稲瀬川勢揃の場」
 
15:15〜15:55
歌舞伎サークル・うぶ「絵本太功記九段目大物浦献上の場」
 
15:55〜16:10
秩父囃子(鹿桜会松井田)【館外会場】
 
(11月16日)
 
9:40〜10:00
秩父囃子(柴崎社中)【館外会場】
 
10:00〜10:15
三番叟
 
10:20〜10:35
秩父囃子(ドコドン2001・秩父囃子会・両神間庭子供囃子会)
 
10:40〜11:00
八木節(三島八木節保存会)「学校開き」
 
11:00〜11:10
主催者あいさつ
 
11:10〜12:10
小鹿野子ども歌舞伎「義経千本桜伏見稲荷鳥居前の場」
 
12:10〜13:10
休憩(秩父囃子・秩父音頭(新原太鼓連・ひまわり保育園太鼓愛好会・三島八木節保存会))【館外会場】
 
13:10〜14:10
小鹿野歌舞伎保存会小鹿野部会「加賀見山旧錦絵竹刀の場・草履打の場」
 
14:20〜14:55
宝登山神楽(宝登山神楽団)「二本太刀の舞」「釣込み」
 
15:05〜15:20
秩父囃子・小鹿野囃子
 
15:30〜16:30
小鹿野歌舞伎保存会「本朝廿四孝四段目謙信館十種香の場」
 
16:30〜16:45
秩父囃子(大塩野囃子会)【館外会場】
 
4 感想等
 
○本イベントは、非常に充実した地芝居、秩父囃子、小鹿野囃子など、それから当地で保存されている太鼓、八木節などの郷土芸能も含めた形で開催されていた。会場も満席の状態であった。歌舞伎400年ということもあり、小鹿野歌舞伎保存会が演じた「本朝廿四孝四段目謙信館十種香の場」については、1年間かけて練習したということで、非常に達者な演技であり感心させられ、楽しい舞台であった。
 
○子ども歌舞伎が、本当に歌舞伎の良さを自分で体感しながら楽しそうに演じていることが非常に印象に残った。後継者育成については、江戸時代の中期からずっと小鹿野町に伝わってきた歌舞伎も、途中に中断があったり、その後、再興されるようなことで大変苦労や努力があったと思うが、これからは、課題と後継者育成について、小鹿野歌舞伎は、事業の中核の一つに据えて、きちんと進めている印象があった。
 
○文部省の新しい教育指導要領の中に出てくる総合学習を活用した形で、郷土芸能を学校教育の中に採り入れているところがあるが、ただ、本当にその総合学習という形だけで郷土芸能を取り扱うだけでよいのかという問題がある。教育の根本で、このような地域の文化を、本来はきちんとカリキュラムに載せて教えるべきではないかと思われる。本当はこのような郷土芸能、地域の文化を教育の根幹に据えて教えていくことも図られてしかるべきではないかと思う。
 
○地域の活性化という観点からは、小鹿野町の場合、小鹿野歌舞伎という文化的なイベントを通じて、地域が活発に動いているという印象は受けた。今回のイベント期間中は、小鹿野町の中心地の宿は満室状態であり、また、全国各地から、地芝居の指導者の方が、たくさん参加しており、情報交換もしきりに行われていたようである。
 また、「歌舞伎横丁」で地域の特産品などが販売され、賑やかに、町じゅうが歌舞伎という一つの地域の伝統芸能を活用して活性化していると感じた。
 
○秩父地域は、東京から約1時間半で行くことができ、日帰り観光地というイメージになるため、どうしても観光を基礎とした産業が成立しにくい部分があるのではないかと思われる。そういった中で、歌舞伎という文化を一つの基調にして、宿泊客が増加したり、新しい交流が生じたり、また、特産品を中心とした産業が起こってきたりといった、秩父地域の活性化に対して文化という要素は抜き差しならない大きなテーマではないかと思われる。
 今後の課題としては、文化と景観の結びつきみたいなものも、地域づくりの中で非常に重要な視点になってくるのではないか。
 
○市町村合併していく中で、歌舞伎などの伝統文化がどうなのか。それから、地名として小鹿野や小鹿野歌舞伎という名がきちんと保存されていくのかどうなのかということも今後の重要な課題である。







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