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東京財団研究報告書2004-6 日本の近未来ビジョンと初等教育改革

 事業名 相互交流による国際ネットワークの形成及び政策課題研究等
 団体名 東京財団政策研究所 注目度注目度5


7. 具体的方策その2「自然の中で生きる知恵を身につけさせること」
 ファースト風土(新市街地)に住んでファーストフードを食べ、まったく里山(集落の周辺の雑木や農地、ため池、草地など、人が維持管理をしている自然)のスロー風土を知らない子供たちに、強制的に自然に触れさせる機会を作る必要がある。
 もっとも、日本人の美的感受性を育んできた美しい里山の風土は、戦後50年かけて荒廃してきており、今度は、現代技術も駆使し半世紀かけて原風景に修復していく国土改造計画が求められている。団塊ジュニア以降の子供たちを、里山復興の主役にするのだという意気込みで、彼らに自然の中で生きる知恵を体得させていくプロジェクトが必要である。
 基本は、前述したように、半年里山、半年都会で育てることだが、当面は、山村留学(1年以上農村に住み、その地域の小学校に通学し、生活体験と自然体験をさせる制度。全国ですでに110以上の町村で設置)の仕組みを拡大していくところから取り組むべきだろう。
 いずれにせよ、朝日新聞の論説委員大野正美氏が指摘するように、「田園の自然をとおして宇宙の営みに触れることが独自の感性や活力、普遍を追求してやまぬ異才を生む」という側面にもっと注力していく必要がある。
 山村留学においては、チームを組ませ、年間をとおして、田植えから、草抜き、稲の収穫までのプロセスを体験させる。また、牛や豚を育てさせたり、卵を産まなくなった鶏を自分の手で殺させ、例えば、捌いた鶏を皆で水炊きで食べさせることを通じて、人間が殺生によって生かされていることを教える。
 さらに、河川の上流から下流に至るまで寝袋持参でカヌーやハイキングの体験をさせ、水と人間の生活の関わりや、水循環から見た地域の一体的な結びつきを理解させる。このような自然体験のプロセスにおいて、俳句の作法を身につけさせることも重要な教育である。
 満天に輝く星や、まったく光のない闇の世界など都会では経験できない多様な自然を、凝縮させた言葉に置き換える訓練ほど環境教育に相応しいものはない。
 一方、都市においては、コンピュータを活用した地域理解の学習を遊び感覚、ゲーム感覚でやらせることを推奨したい。地域の地形を立体的なコンピュータグラフィックスで再現した防災ゲーム(大火や大水と戦う消防隊のシミュレーション)を体験させ、地域住民としての意識を知らず知らずのうちに身につけさせるのである。バーチャルな取り組みの世界でリアルな世界を体得させる方法でもある。
 
8. 具体的方策その3「社会の一員として生きる知恵の体得」
 かって、子供の躾や教育は地域ぐるみで関わりあい、引き受けるものであった。人の子でも悪さをしたり、不作法をすれば、平気で叱り飛ばし、社会で生きていくためのルールや善悪の基準、礼儀作法などを身につけさせた。それがまったくなくなってしまった今日、新しい形で意図的にそれに代わる仕組みを創り出す必要がある。
 例えば、都心の統廃合された小中学校を利用し、介護や老人施設と小学校を一体的に運営するようにする。できるだけ図書館や保育施設、グループホームなども併設し、世の中には多様な人々が存在することを幼いことから当たり前のこととして認識できるようにする。
 そこで、授業の終わった午後の自由な時間帯に、ジュニアとシニアにチームを組ませ、ペアで行動させる。シニアはパートナーの子供に昔の遊びを教えたり、宿題を手伝ったりする。ジュニアは、シニアを手助けし、メールの使い方を教えたりする。
 また、子供たちに車椅子やバリア装備(見えにくい眼鏡や身体の行動が不自由になるための重しを身につける)で街を探検させ、街のバリア・マップを作成させ、シニアにやさしい町作りを提案させる。このプロセスを通じて、老人の不自由さや辛さを追体験させ、シニアを思いやり、手助けすることを習慣化させる。
 小学校の高学年生は、地域内の商店でアルバイトをさせ、身をもって経営学を体得させる。大学に行くまで待たなくても、四則演算ができる子供は現場の経験から、十分、商売について理解できるからである。アルバイト代として子供に渡された地域通貨が母親の買い物を通じて商店街に還流する仕組みが作られれば、商店街の再生にも結びつく。
 さらに、アメリカの自治体経営のシュミレーションゲームであるシム・シティの日本版を作り、子供たちに新世紀の自立した市民に求められる常識である「自分たちの街は、自分たち市民の手によって支え、独立採算によって維持し、発展させていく」という常識を身につけさせる。
 最後に、コミュニティの復活のために、前述したグリーンストラテジーの具体的な展開策を提案する。すなわち、ジュニアとシニアが一緒にチームを組み、芝生の上で、毎週末、コミュニティ対抗のソフトボールの試合をするのである。
 当然、芝生に草が生えたら、近所総出で草抜きをする。このような活動から、単身世帯の老人の社会化、老人医療の軽減、地方防災への関心の高まりなどの効果が生まれ、コミュニティの連帯も生まれてくる。こうして、複合的に社会問題の解決が図られていくことになるのである。







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