日本財団 図書館


(5)科目で取り扱っている内容
 表3-6は、各科目が取り扱っている内容を、「単独」と「一部」別に示したものである。全体的にみると、「心理学的側面」が最も多く、70.4%を占め、次いで「指導法」が58.0%となっていた。これは、障害児教育の内容を「発達・学習」に含めるようにとの法令に基づくものといえる。ただし、「単独」と「一部」を比較してみると、「一部」は、「心理学的側面」、「指導法」の順であるのに対して、「単独」は逆の順になっていた。「一部」の場合は心理学の知識的側面にしか時間が充てられないのに対して、「単独」の場合は、時間数が十分に取ることができるため、心理学的側面の内容を踏まえて、障害児の実際の指導に関わる内容にまで踏み込んだ授業展開が可能となっていることが伺われた。また、いずれの内容についても、「一部」よりも「単独」の方が割合が高く、質的な充実を図るためには「単独」の科目の設定が必要であると思われる。
 
表3-6 科目で取り扱っている内容(複数回答)
内容 単独(N=79) 一部(N=259) 計(N=338)
心理学的側面 61 (77.2) 177 (68.3) 238 (70.4)
指導法 67 (84.8) 129 (49.8) 196 (58.0)
学校教育 48 (60.8) 115 (44.4) 163 (48.2)
歴史・思想・制度 55 (69.6) 62 (23.9) 117 (34.6)
医学的・生理学的側面 39 (49.4) 66 (25.5) 105 (31.1)
教育課程 48 (60.8) 41 (15.8) 89 (26.3)
就学前教育 45 (57.0) 32 (12.4) 77 (22.8)
福祉 36 (45.6) 36 (13.9) 72 (21.3)
労働 26 (32.9) 6 (2.3) 32 (9.5)
生涯教育 (社会教育) 13 (16.5) 17 (6.6) 30 (8.9)
高等教育 8 (10.1) 13 (5.0) 21 (6.2)
その他 2 (2.5) 28 (10.8) 30 (8.9)
 
(6)一部で障害児教育に関する科目を扱っている場合の時間数
 表3-7は、一部で障害児教育に関する内容を扱っている259の科目が、実際にどの程度の割合で、障害児教育関係に時間を充てているのかについて示したものである。10%未満が最も多く38.2%を占めており、20%未満まで含めると64.1%となっていた。科目で取り上げている障害種別や内容の割合において、「単独」と「一部」で大きな違いが見られたが、これは「一部」の科目で障害児教育に充てられる時間数があまりにも少ないことに起因していると推測される。法令上は、一部で障害に関する内容を取り扱えばよいのであるが、今後の学校教育を取り巻く環境を考えれば、障害について取り扱う時間を大幅に増やすか、「単独」への移行を検討する必要があろう。
 
表3-7 障害児教育に関する内容の割合
割合 科目数(%)
10%未満 99 (38.2)
10〜20% 67 (25.9)
20〜30% 36 (13.9)
30〜40% 13 (5.0)
40〜50% 3 (1.2)
50%以上 30 (11.6)
未記入 11 (4.2)
259 (100.0)
 
(7)障害児教育関連科目の見直し状況
 表3-8は、各大学の教職科目における障害児教育関連科目の設定の見直しの有無に関して回答のあった342大学について、「障害児教育の単独科目を設定している」(以下「単独科目有り」)、「一部で障害児教育を扱う科目しか設定していない」(以下「一部で有り」)、「障害児教育を扱う科目は全くない」(以下「全く無し」)という大学別に示したものである。また、表3-9は、その理由についての自由記述をまとめたものである。
 見直しを行っている大学は9.1%と1割に満たなかった。また、「単独科目有り」の大学の方が見直しを行っている割合が高く(19.6%)、「全く無し」の大学の方は「行っていない」とする大学が96.3%と大半を占めていた。障害児教育関連科目を取り扱っている大学は、その質的充実を目指して検討する傾向にあるが、「全くなし」の大学は、この点に対する関心が低く、二極分化している傾向が察知された。
 
表3-8 障害児教育関連科目についての見直し状況
  行っている 行っていない
障害児教育の単独科目有り 11 (19.6) 45 (80.3) 56 (100)
一部で障害児教育を扱う科目有り 15 (10.0) 135 (90.0) 150 (100)
障害児教育に関する科目全く無し 5 (3.7) 131 (96.3) 136 (100)
31 (9.1) 311 (90.9) 342 (100)
 
表3-9 見直しの内容
a)障害児教育の単独の科目有り
[カリキュラムの検討]
・再編・統合に関わり、コア・カリキュラムの検討中。現在は、選択だが、必須化の方向。
・学部全体のコア・カリキュラム構想の作業を進めている。
・大学全体としてカリキュラムの見なおしをはじめている。
・本学では、これまで養護学校教員養成課程以外の学生が副専攻として養護種を取得することができた。(多い年次では、100名近くが二種免を含めると養免を取得して卒業している。)現在、検討中の新カリキュラムでは教職科目も含めて副専攻は二種免までとする方向であるので【1】の回答のように選択科目の位置づけとなっている。
・幼稚園については障害児保育、療育保育を設定しているが、院内保育を設置できないか検討している。小学校については障害児保育のほかに障害児の心理、障害児の病理を設置できないか検討している。中・高に関しては検討していない。
 
[講義等の開講]
・学部改革に伴い、教育学部の発展教科として「特別支援教育」などの講義・演習を開講の予定。
 
[講義の変更・廃止]
・平成14年まで障害児臨床学は、講義に組み込んでいましたが、担当者が転勤のため平成15年度より集中講義に変更した。又、単位数も2単位より1単位に変更した。しばらく様子をみて検討の予定である。
・〔A〕に記載の科目のほか、教養科目との併用科目として「教育論III」を開講しているが、これは教養教育カリキュラムの再編に伴い、廃止が決定している。他の科目名称で同様の科目を実施するかは現在未定。
 
[その他]
・障害児教育関連科目については、卒業単位に含めることにより、養護学校教諭免許取得希望者をはるかに上回る学生が受講している。介護体験等にも役立っている。また、介護体験等後に受講を希望している学生も出てきている。
・介護体験等の前提科目として位置付けることを検討している。
・すでに小幅な見直しを行い、2000年度入学者からは、同和教育関係2科目及び、障害児教育関係2科目あわせて4科目の中から2科目4単位以上を必ず履修するように指導しています。
 
b)一部で障害児教育を扱う科目有り
[カリキュラムの検討]
・平成16年度入学者から適応される学部のカリキュラムの検討の中で特別支援教育論などの独自科目の設定を検討している。
・一年次で、障害教育概論Iを必修として設定し、2・3年次で障害児教育概論II、IIIを選択として設定する。
・障害児教育に関連する単独の科目を設定し、必修とすることを検討中。
・平成16年度からの学部改組(A大学A学部との再編に伴う)において、平成17年度からの特別支援教育体制の実施をみすえ、教職基礎科目「特別支援教育基礎」2単位(1学年対象)の設定を検討中。
・介護等体験に行く学生が履修すべき科目の新設を検討している。介護等体験の事前・事後指導という意味にとどまらず、そこまではより広く障害児教育について学び、あるいはケアすることとコミュニケーションすることの意味について考える科目にしたい。
・2004年度より、大学院教職課程において「教職に関する科目」3科目の開設を決定している。その中に(科目として独立ではないが)障害児教育を取り入れたい。
・教職課程全科目のシラバス見直しを行っていて、その一環として検討中である。
 
[講義内容の検討]
・「学習発達論」で一般的な発達過程の開設の中でも障害児に言及するなどの工夫を行っており、大学からも「学習発達論」の授業の一部を障害児教育に当てるように求められています。
・障害児教育に特化した科目の新設を提案したが、通らなかった。今後も、自分の担当科目の中で、工夫するつもり。重複障害児の指導ビデオを見せることはこれまでも行ってきたが、本学の施設などを使っての実習を計画中。
・今年度からシラバスの授業内容に心身に障害のある幼児、児童、生徒への理解とその学習方法を明記した。養護学校の児童生徒との交流を視野に入れている。
 
[その他]
・「見なおしの作業」とまではいきませんが、学部改組との関連で検討はしております。
・H16年度より新学部に改組予定。
・障害児教育担当の「特殊教授」の配置(併設するB短期大学所属)
・介護等体験の目的意識と意欲を高める必要性を感じており、障害児に限らず広く障害者や高齢者まで含めて独立科目を設定したいと考えている。
・現在、介護等体験を単位とし、事前事後指導の中で、障害児(者)教育についてより充実させることを検討しています。現在につきましても通常教育と分けることのできないものですからその比重も大きくなりつつある。
・12年度に再課程認定を受けたので、現時点では見直しは行っていない。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION