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3. マスコミ・情報の交流
 最近、韓国製ドラマの日本語吹き替えによる放送がNHKで放映され、かなり高い視聴率をとって注目された。同様に、台湾のテレビドラマを日本語に翻訳放送することも日台の相互理解と交流を促進する一助になると考えられる。
 台湾では日本のテレビドラマを吹き替えで、あるいは字幕入りで放送することや、ビデオレンタルをすることが一般的である。こうした面でも一方通行より相互交流であることが望ましい。
 また、マスコミ報道の質の向上、日本に対する誤解を削減し、より正確な理解を広めるためには、日本への特派員に限らず台湾マスコミ人に対して短期、中期の日本研修を実施することが望まれる。これには、日本の大学院や新聞社が、台湾マスコミ人を受け入れる制度を創設することが考えられる。
 より日常的次元では、出版もしくはインターネットによる日本情報の中国語での提供を拡充すべきである。これもまた、「日台文化交流センター」の業務の一つとすることが考えられる。
 また、日台双方では年間往来が150万人を超える状況にありながら、台湾の天気予報を日本では日常的に目にすることができない。NHKの「地球天気予報」でも香港の予報はあっても、台北の予報はない。
 こうしたことは国交の有無とは関係がない。台湾を訪れる日本人旅行者、ビジネスマンの利便性に大きく関わる問題である。日本のテレビ放送でも、台湾の主要都市の天気情報を提供すべきであろう。
 
4. 観光ガイドの養成
 以上の文化、教育、学術やマスコミ、情報の交流などと比較して、より本質的レベルの交流促進というわけではないが、多くの日本人、あるいは台湾人にとってより身近な相互交流の機会は観光旅行である。したがって、観光における相互交流を軽視することはできない。
 観光旅行の環境改善策として、まず、台湾観光を拡大、促進するためには台湾における日本語観光ガイドの強化である。必要とあらば、日本がガイド養成を支援することがあってもよい。また、台湾から日本への観光を促進、改善するためには日本における中国語・台湾語観光ガイドの養成が必要になる。
 2003年から羽田−ソウル間の空のシャトル便が運行されている。羽田−台北間にもシャトル便を運行すべきだろう。そうすれば、日台双方の飛躍的な観光客増が見込まれる。もともと、羽田−台北便は唯一の国際便として、日台の独占路線だったのである。
 台湾からの観光客には、札幌雪祭りやスキーなど、異文化体験を望む傾向が強いが、一歩進めて、伝統芸能の鑑賞や古寺参観など、日本の精神文化にも触れ、日本理解に役立ててほしい。
 
5. 経済交流拡大の基盤を作る
 経済交流は基本的に民間交流であって、すでに日台関係においては非常に密接な関係が構築されている。しかしながら、さらに両国関係を促進するものとしては、二国間もしくは地域協定締結から自由貿易地域の実現を進めることが考えられる。つまり、日本と台湾のあいだのFTA(自由貿易協定)交渉を開始し、さらにはアジア・太平洋自由貿易協定(Asia Pacific Free Trade Agreement)の創設へと進むということである。これにより一層の経済交流を実現し、さらなる経済成長の促進も期待できる。
 また、包括的地域協定が、域内で同レベルではない規約の実施を認めることは、EU(欧州連合)における単一通貨への選択的加盟などで先例があるので、日台のFTA交渉を前提に、一律ではない規定を施行するアジア太平洋自由貿易協定を実現することも可能であろう。
 この場合、相互交流が深まるほど、為替リスクが懸念されることになるので、かつてのEC(欧州共同体)が実施したような、バスケット通貨制度をその一部として取り入れることも考えられる。日本円と台湾元は、連動性が高いので、こうした通貨同盟の場合にも現実性がある。
 これとは別に、経済交流促進の上で障害となるものにコンピュータ文字コードの問題がある。
 日本と台湾は大多数同じ漢字を用いているにもかかわらず、一般に用いられる文字コードシステムが異なるために、ネットワーク上での情報の閲覧、交流の際に、いわゆる文字化けが起こる。そこで日本語と繁体字中国語の言語ソフトをコンピュータにインストールした上で言語変換をしなければならないという現実がある。技術的にはカナ文字の処理さえすれば文字コードの統合は実現可能なので、日台間の情報共有、交流の促進のために、共通言語ソフトを開発、普及することが望ましい。それを日台合同研究の形で推進すれば学術交流としても意義ある活動になる。
 
6. 環境・保健問題への共同対処
 2003年上半期のSARS(重症急性呼吸器症候群)の流行に明らかなように、グローバル化社会は、環境、保健問題においても国境なき社会である。隣接する国、相互交流が密接な国の間ではこの問題はさらに深刻である。台湾をWHO(世界保健機関)の一員に迎え入れ、情報を共有し、共同対処することは世界共通の利害に関わっている。中国の政治的横ヤリこそ糾弾されなければならない。
 また、台風の進路やその他情報の相互交換のために、日台気象連絡体制を構築すべきである。これは直接的には漁業関係や航空、船舶航行関係のために資するものとなるが、個別の必要に応じた情報交換を超えた組織的、制度的な体制が構築されることが双方の利益になると考えられる。
 以上のこととはいささか次元が異なるが、長期的な課題への共同対処という意味で、地球温暖化問題について日台共同の研究会議を開催することも有益であろう。
 
7. 政治・外交・安全保障
《国会議員交流の拡大》
 以上の諸施策を通じて、日台間の相互理解が促進され、情報の密度が高まるとともに日台間の政治・外交・軍事における相互関係のレベルアップもますます必要になる。その場合、これらの分野でも比較的緊急性が高く、障害が少ない分野から手をつけることが必要になる。
 政治関係、外交関係の促進のための方策としては、日本と台湾のあいだで、現職の国会議員秘書を一定期間相互に派遣することや、政治家志望者を国会議員が秘書に受け入れることも考えられる。私設秘書として外国人を採用することは、議員個人の行為であって、国家そのものの行為ではないので、外国からの干渉にはなじまない。
 また、実質的に国際化する社会に日本の政治が対応していくために必要な情報交換や知識取得の手段にもなる。最近の若手国会議員のなかに、留学中にボランティアとして米国の国会議員秘書を務めたり、事務所の手伝いをしたりした人も散見される現状である。これを日台間でも実現、拡大することである。
 政党職員の相互派遣・受け入れも同様に可能であり、有益である。お互いの政治文化を理解し、政治理念、手法の相違をわきまえることは、外交上誤解を生じにくくする効果を持つばかりでなく、相互に政策、政治過程の改善の方策を見出す可能性もある。
 このほかに、両国政治家を含む常設研究会も可能である。安全保障・憲法改正・地方分権・政治改革・少子高齢化などをテーマとして民間主導で学者、専門家を招いた常設の日台共同研究会を設立し、これに両国の政治家を含め、さらに可能であれば官僚が参加するようにすれば、双方にとって必要な情報収集と情報提供の機会にすることができる。これらは、外交関係の緊密化の方策として大きな効果を期待できる。
 
《姉妹都市交流も》
 政治・社会的交流の制度として、姉妹都市締結とそれによる交流活動の促進が考えられる。従来、姉妹都市締結には外務省が関与することが多かったが、地方分権の時代を迎えて、直接的に地方相互の交流が図られるのが時代の趨勢であろう。地方選出の国会議員、地方議員主導で、あるいはまったくの地域住民主導によって、日台間の姉妹都市締結を促進することで、経済交流、文化交流、学術交流、青少年交流等の発展が期待できる。
 日台防衛関係者交流も考慮に値する。陸上自衛隊総合火力演習や観艦式への台湾側招待、逆に、自衛官の台湾軍演習参観、基地訪問、防衛大学校への台湾人留学生の受け入れ、逆に台湾の軍関係学校への日本人留学生派遣なども、東アジアの安全保障のために有益であろう。







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