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新規範発見塾 レクチャー・メモ vol.17

 事業名 先駆的情報の創出・発信事業
 団体名 東京財団 注目度注目度5


◎「新規範発見塾」特別編・ロサンゼルス講演
第85回 マンガ・アニメに表れている日本精神とは
(編集部注)
 東京財団による寄附講座「マンガ・アニメ日本研究講座(現地タイトル「Entertainment Goes "Pop"」)が米国UCLAとCSU Northridgeにおいて、二〇〇三年九月二十七日(現地時間)より十二月十三日まで、一〇講義が行われた。その講座の皮切りとして、九月二十七日、UCLAにてシンポジウム「Entertainment Goes "Pop"」が開催された。本稿はその基調講演要旨である。なお、当日の出席者はアメリカ人が大多数であったため、講演にあたっては通訳が同席し、本稿の英訳が行われた。
*UCLA=University of California at Los Angeles(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)
*CSU Northridge=California State University Northridge(カリフォルニア州立大学ノースリッジ校)
 
 マンガ・アニメに表れている日本精神をお話しします。皆さんがわかり良いようにマンガ・アニメの実例からお話しすることにしましょう。
 
 
(拡大画面:241KB)
関連ホームページ: http://www.uclaextension.edu/anime
  http://www.csun.edu/artdep
 
 まず、子供に対する考え方、見方、いわゆる「子供観」を採り上げてみましょう。
 アメリカでは子供は未完成なものという根本意識があります。完成された社会は理性で成り立っている、というわけですから、子供にはうんと躾を厳しくし、理性をうえつけて社会関係を認識させようとします。ですから、アメリカでは子供っぽいことは否定されます。あどけない、かわいい、といった子供らしい美徳は否定されて、子供っぽいことは動物化して表現されることが多いようです。だからアニメというのです(これは欧米で少女マンガが発生しないことに符合するのかもしれませんね)。
 一方、日本では子供は人間らしさの原点だと捉えられています。大人になると社会に適応するために、原点から離れて不幸な存在になると考えられています。大人になることは、決して完全になることではなく、特殊化、枝分かれしていくことです。
 
 
シンポジウムでの基調講演
 
ロナルド・モースUCLA教授による冒頭挨拶
 
 日本の躾は、社会のために理性を押し付けるのではなく、人間として本来覚えるべき行儀礼儀を本人のために訓練することです。ですから、日本では子供は、そのまま子供らしく表現されます。子供らしさと大人らしさの混合比率を微妙に変えることが、キャラクターづくりの妙になっていきます。アメリカに比べて、日本は圧倒的に多種多様な新キャラクターをどんどん作り出せるのです。五歳、十歳、二十歳と消費者年齢に合わせて自由自在に混合比率を変えていけばいいのです。
 具体的事例を見てみましょう。美術館や教会めぐりをすると、マリア様がキリストを抱いている「母子像」がいたるところにあります。そのキリストは、子供なのに大人の顔をしています。子供は不完全な存在で、聖書には「神は己の姿に似せてアダムをつくり給えり」とあるので、中年の男性が神の姿に近いものと想定されているのです。
 日本はどうでしょうか。日本のどこにでもあるお地蔵様の写真をお見せしましょう。地蔵顔には丸く柔和なにこやかな顔、つまり、子供のような無邪気な顔という意味があります。日本では童子は肯定的に表現されています。すなわち、無為自然、天衣無縫、無邪気、かわいいといった価値観が人間らしさの原点なのです。子供が無力であること、子供っぽいことはむしろ称えられる資質なのです。
 結果として、日本マンガの主人公はいろいろに変化します。どんどん成長もしていきます。ストーリーマンガが次々と生まれ、進化していく土壌がここにあります。アメリカにはキリスト一代記のような特殊なものを除いて、キャラクターが成長するマンガはありません。スーパーマンやスパイダーマンはいつでも不変で常に勝利者、ヒーローです。
 その点、日本のマンガは多種多様のストーリーで構成されています。歴史的には千年前の『遣唐使絵巻物』、四百年前の『絵本太閤記』等はストーリーマンガの原点と言えるでしょう。日本のマンガのすごいところは、世界に先駆けて、非常に多様な成長マンガのジャンルを、普通の少年、少女向けの雑誌でやったことです。だから世界が認め、大いに受け入れているのでしょう。







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