日本財団 図書館


吟詠家・詩舞道家のための
日本漢詩史 第4回
文学博士 榊原静山
奈良朝(その二)
石上乙麻呂 この時代屈指の秀才で中納言兼中務卿にまでなったが、天平勝宝二年(七五〇年)に没している。彼は藤原宇合の妻である久米連若売(くめむらじわかめ)を姦した罪で土佐に流され、二年半配所で過ごしている。彼の詩や歌はこの悲境の間に作ったものが多く、ここで“銜悲藻”という詩集を書いたといわれる。また“懐風藻”には土佐から都の友人に送った次のような誌が掲載されている。
 
飄 寓南荒(ひょうぐうなんこう)贈在京故友
石上乙麻呂
遼夐遊千里 遼夐千里(りょうけいせんり)に遊ぶ
徘徊惜寸志 徘徊(はいかい)して寸志(すんし)を惜しむ
風前蘭送馥 風前(ふうぜん)の蘭馥(らんかおり)を送り
月後桂舒陰 月後(げつご)の桂陰(かつらかげ)を舒ぶ(のぶ)
斜雁凌雲響 斜雁(しゃかん)雲を凌いで(しのいで)響き
軽蝉抱樹吟 軽蝉樹(けいぜんき)を抱いて(いだいて)吟ず
相思地別慟 相思いて(あいおもいて)別慟(べつどう)を知り
徒弄白雲琴 徒(いたずら)に弄す(ろうす)白雲琴(はくうんきん)
(語釈)遼夐・・・遠くはるか。桂舒陰・・・桂の葉が月の光をうけて影が長くのびていること。別慟・・・別れの悲しみ。白雲琴・・・琴の名前。
(通釈)遠くはるかに配所へ流されて来てしまい悲しく徘徊して心を慰めている。風が吹いて蘭の香をかぎ、月の光を受けて桂の木が長く影を引いているのを見、小さな蝉の声を聞く。
 これらの自然のものに接するにつけても、都における友を想って泣けてくる。その心を慰めるべく白雲琴をひいているばかりである―。
 この詩になるともう五言律詩の形態が整い第三句と第四句、第五句と第六句ははっきり対句になり、平仄も正しく、心、陰、吟、琴といった具合に平侵韻(へいしんいん)が含まれている。
 
石上宅嗣
 
淡海三船
 
石上宅嗣(七二九〜七八一)遣唐副使、文部大輔大納言の位にもつき、博学の名も高く、特に自分の家を寺にして、寺内に芸亭院という図書室を設け、我が国の最初の図書館として有名である。
 
淡海三船(七二一〜七八五)大友皇子の曾孫、葛野王の孫で、一時は仏門に入ったが、後に兵部大輔、大学頭文章博士になり延暦四年、六十四歳で没している。
 
孝謙天皇(七一八〜七七〇)聖武天皇と光明皇后との間の、第二皇女として生まれ、大仏開眼供養大法令をはじめ、仏教興隆に力をつくした女帝。
 
讃仏の詩
孝謙天皇
 
慧日照千界 慧日千界(えにちせんかい)を照らす
慈雲覆万世 慈雲(じうん)は万世(ばんせい)を覆う
億縁成化徳 億縁(おくえん)は化徳(かとく)をなす
感心演法声 心に感じ法声を演ず
(語釈)慧日・・・仏典にある言葉で智恵の日光、つまり仏の智恵の光明のこと。億縁・・・生きとし生けるもの。
(通釈)仏陀の智恵の光明はあまねく三千世界を照らし、慈悲の雲はよろず世に生きとし生ける者を覆い、徳をほどこして化導する。久遠神秘の仏の声に心から感激するものである。
 また、有名な
天の原ふりさけみれば春日なる
三笠の山に出でし月かも
の作者阿倍仲麻呂もこの時代の人である。
 
阿倍仲麻呂(七〇一〜七七〇)中務大輔、阿倍丹守の子で、霊亀二年(七一六年)に遣唐留学生として渡唐し、玄宗皇帝につかえ、藤原清河が帰国するとき一緒に船に乗ったが、途中、暴風雨に遭って安南へ漂着し、再び唐へ帰り粛宗代宗に仕え、在唐五十四年、長安で客死している。かの地で故国日本を憶って詠じた詩がある。
 
無題
阿倍仲麻呂
 
慕義名空在 義を慕う名空しく(なむなしく)在り
輸忠孝不全 忠孝の全た(まつた)からざるを輸す(いたす)
報恩無幾日 恩に報ゆる幾ばくの日も無し
帰国定何年 国に帰るは定めて何れの年ぞ
 
(通釈)自分はこの中国に来てしまって忠義も孝行も出来なくなってしまったことは、誠に申訳なく思っている。もうこの先、恩に報いたくても幾ばくも日がなくなってしまった。それよりも日本へは何時帰ることが出来るであろうか―。
 仲麻呂は長安で李白とも親交があり、仲麻呂ら一行の遣唐使帰国船が暴風雨で行方不明になったとの報せを李白が受け、仲麻呂が遭難死したと思い、その死を哀悼して詠じた詩がある。
 
阿倍仲麻呂
 
哭晁卿衡(ちょうけいこう)
李白
 
日本晁卿辞帝都 日本の晁卿(ちょうけい)帝都を辞し
征帆一片遶蓬壺 征帆一片蓬壺(せいほんいっぺんほうこ)を遶る(めぐる)
明月不帰沈碧海 明月帰らず碧海(へきかい)に沈み
白雲愁色満蒼悟 白雲秋色蒼悟(そうご)に満つ
(語釈)晁卿衡・・・阿倍仲麻呂のこと。蓬壺・・・蓬莱山、東方の海上にあるといわれる。明月・・・ここでは仲麻呂を指す。
(通釈)日本の晁卿衡は帝都長安に別れを告げて一片の帆船に乗って蓬莱山を廻って行った。そして今は暴風雨に遭って碧海に沈んでしまってもう帰って来ない。白雲までが悲しい色を浮べて空に満ちている。
 
懐風藻 さきに述べたように『懐風藻』は孝謙天皇の天平勝宝三年(七五一)に出来上がっており、その選者は淡海三船といわれるが、確かでない。しかし、このなかには近江朝の大友皇子の詩を冒頭に、奈良朝までの皇族、貴族、僧侶などの六十四人の詩、百二十篇を時代順に配列しており、日本漢詩の最古の詩集として最も貴重な文献である。
 
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