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―留萌市海のふるさと館第15回特別展展示図録―
ニシン漁の船
2003年7月
北海道留萌市海のふるさと館
 
はじめに
 北海道西海岸は古くからニシン漁で栄えました。
 しかし、昭和30年を最後にニシンはこの浜辺から消え、もう半世紀近くの月日が流れようとしています。
 ニシン漁に使われた船は木造の和船が主役でした。この木造和船はニシン漁の歴史と共にすこしずつ改良されながら変化してきましたが、大幅に船形が変わるようなことはありませんでした。これら和船を作ったのは船大工さんたちであり、この技術もニシン漁の終焉と共に忘れ去られようとしています。往時のニシン漁に使われた船と船大工の道具からこれらの技術を感じ取って頂ければ幸いです。
 
平成15年7月
 
留萌市海のふるさと館
館長 福士 廣志
 
例言
1. 本書は留萌市海のふるさと館第15回特別展「ニシン漁の船」の展示図録である。
 
2. 展示資料目録の測定値はmmで表しており基本的測定箇所は次の通りである。ただし、実情にあわない物は、そのつど計測部位を変更している。
全長×全幅×全高  全長×全幅  全長×径
 
3. 写真図版の番号は展示資料目録の番号と一致する。
 
4. 展示品の撮影は福士廣志、高橋勝也が行った。但し、No.12〜23については北海道開拓記念館 為岡進 氏の撮影による。
 
5. 本書の執筆、編集は福士廣志、高橋勝也が行った。文責は二人にある。
 
6. 今回の特別展にあたり下記の機関及び個人にご協力をいただいた。深く謝意を表する次第である。
 
余市水産博物館、北海道開拓記念館、小平町教育委員会、北海道海事広報協会、日本財団、運上光彦、浅野敏明、山田 健
 
留萌の鰊漁
〜留萌の鰊漁の始まり〜
 ルゝモッペ場所の創始は慶長年間ともいわれるが、場所請負人がルゝモッペ場所を請け負って本格的な場所経営を行うようになったのは寛延3年(1750)のことである。初代村山伝兵衛がルゝモッペ場所の請負人となり漁業を営むようになった。この寛延年間は松前鰊の諸国への販路が拡大してきた時期と符合する。しかし、村山伝兵衛の没落と共に請負人が変わり、天明7年(1787)に六代栖原角兵衛がルゝモッペ場所の請負人になり、代々栖原家の請負場所となった。この当時は主なルゝモッペ場所の産物は、天明年間に記された「蝦夷地案内記録」には鮑串貝、魚油、鮫売、いりこ、鰊、干鱈、鮭、鱒、鯨、熊皮があげられている。ただ、運上金は秋味運上とあり、鰊もあったが鮭が主役であった。
 
大正初期の留萌海岸
 
 ルゝモッペ場所で鰊が主役となるのは、天保11年(1840)のハママシケ(浜益)以北の鰊出稼が許可されてからであろう。鰊出稼が最初に留萌に入るのは、記録に残っているものとしては、礼受(カクダイ)佐賀平之丞で弘化元年(1844)のことである。但し、当時松前に人別のないものは鰊漁業を営むことができなかった。そのため松前の(カクダイ)田中藤左衛門の名儀を借りて漁業に着手した。これから安政元年にいたる10年間の記録が未だ未見であるが、栖原家旧記書類から安政年間以降のルゝモッペ場所の動きを見てみよう。
安政元年(1854)には
一 鯡緋取家族三軒此人別男八十五人
但当場所漁業中罷在候得共秋味に至り
居村に被引取申し候
一 産物 春鯡 三千四百石位 運上屋
同    千八百石位
      出稼三ケ所荷物〆高
とあり、安政2年の4月に宗谷詰の役人に提出した書類によると
一 出稼者
唐津内澤町藤左衛門 外雇三十六人
唐津内町五三郎雇船頭久蔵 外三十三人
泊川村久右衛門 外雇入四十六人
一 昨年寅年産物出高
春漁 九百四十石
同   千七百石
但二八取漁事高
とある。
 つまり、安政元年の鰊取家族3軒は2年の書上にある3家族のことをさしており、その中の唐津内澤町藤左衛門の漁場は、当時松前に人別のある者しか漁場を開くことができなかったために、佐賀家第八代平之丞が藤左衛門の名儀を借りて漁場経営をなしたものと考えられる。
 続いて安政4年になると出稼人が13軒、翌5年16軒、6年48軒、文久元年53軒、と急激に鰊出稼が増加の一途を辿る。また、鰊の漁獲高は安政4年、運上屋分2,058石、出稼分3,402石。安政5年運上屋分2,998石、出稼分7,059石。文久元年運上屋分4,957石(他の生産物を含む)、出稼分10,782石(鰊のみ)で年々出稼の生産力が運上屋直営分を凌ぐようになっていた。
 
汲み船の出航
 
 
図1 西蝦夷地場所絵図(江戸町史資料編第1巻付図−安政6(1859)年)
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レウケの□印の私領中より出稼人の中に(カクダイ)佐賀家の鰊場があるはずである。
 







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