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航海(こうかい)について
 
海の交通規則
 
 港のみえる丘や海辺の山から海をながめると、大小さまざまな船がスイスイと走っているのを見ることができます。しかし、海には浅瀬(あさせ)や暗礁(あんしょう)と呼ばれる危険なところもあって、どこでも走れるわけではありません。船が危険なところをさけて安全に走るのは、海にも陸上の道路に似た(にた)航路(こうろ)(船の通る道)があるからです。航路は道路のように目には見えませんが、船が安全に走れるようにとその記録が残され道しるべがつくられました。それが海図(かいず)と航路標識(こうろひょうしき)です。
海図
 海図とは、ひとことでいうと、「海の地図」です。みなさんも、本やマンガなどで一度は目にしたことがあるかもしれません。海図には、水深(すいしん)・潮汐(ちょうせき)や海流・灯台(とうだい)などの標識(ひょうしき)や経緯度線(けいいどせん)・海底の危険物・底質(ていしつ)(海底の性質)など、船が安全に航海するのに重要なことがいろいろと記されています。
航路標識
 航路標識には、目に見える光や色、形を利用した灯台や、音を使った霧信号所(きりしんごうじょ)、電波を使ったロランなど、ほかにもいろいろなものがあります。昔は、灯台や霧信号がほとんどで、航路標識といえば灯台というくらいで今でも人々に親しまれています。しかし、近年は電波や通信技術がとても進歩しているので、それらの航路標識が多くなりました。
交通ルール
 客船をはじめエンジンで動く船は、近くを航行する船と衝突(しょうとつ)する可能性があると分かると、相手船を右側に見る船が、避けるようにと義務(ぎむ)づけられています。
 
 
船のスピード
 
 船の速さを表す単位はいろいろありますが、一般的には「ノット(knot)」を使います。1ノットは1時間に1海里(1,852m)進む速さをいい、1ノットは時速2kmより少し遅いくらいのスピードになります。
 ちなみに「ふじ丸」の最高速力は21ノットで、通常は18ノットで走っています。
 
おまけ
「ノット」の語源(ごげん)
「ノット」は、ロープワークにもでてくる言葉で、「結び目」を意味する英語です。昔は、船の速力を測る(はかる)ときに、一定の間隔(かんかく)で麻(あさ)ひもで結び付けられた測定具(そくていぐ)を利用していました。この結び目という意味の「ノット」が、今でも残っているわけです。
 
水平線までの距離(きょり)
 
 船の上から沖をながめると、はるか彼方(かなた)に水平線が見えます。砂浜や岸壁(がんぺき)などから見える水平線も気持ちがいいですが、船から見ることのできる水平線は360度。めったに見ることのできない光景ですね。
 では、泳いではとうていたどり着けそうにない、海の果て(はて)のように思われる、この水平線までの距離はどのくらいあるのでしょうか。
 少し難しいですが、水平線までの距離は、2.09×(√H+√h)という数式で出すことができます。Hは、見る側(わたしたち)の水平線上の高さで、hは見られる側(遠くに見える水平線)の高さです。たとえば、水面から10mの高さにあるデッキから水平線を見たときの距離は、2.09×√10=約6.6海里、約12.24kmとなります。また、身長が160cmくらいの人が、波打ち際(なみうちぎわ)から見る水平線までの距離は4.3kmほどです。この距離は、みなさんにとって想像していたよりも遠かったですか、それとも近かったですか。
 
 
航海術(こうかいじゅつ)と星座(せいざ) 〜船の位置はどうやって知るの?〜
 
 船を出発地から目的地まで能率(のうりつ)よく、確実に到達させる技術を航法(こうほう)といいます。方向が分かると、基本的にその方向に船を進めれば目的地に到着できるので、航法の基本は針路(しんろ)(船の進む方位)といえます。
 人が海に出始めたころは、太陽や星の位置で東西南北を知り、針路を決めていました。とくに、たよりだったのが北極星(ほっきょくせい)です。というのも、北極星の高度(こうど)(地平線からの高さ(角度))はその場所の緯度(いど)と同じになるので、北極星を探すことができれば、正確な方位と自分のいる場所の緯度を知ることができたのです。昔の船乗りたちは、これらの針路と航海時間や速度から船のいる位置を推測(すいそく)していたようです。
 
 
 その後、11世紀には「羅針盤(らしんばん)」が、15世紀には北極星の高度を測る器械(きかい)、18世紀には経度(けいど)を知ることのできるクロノメーター(携帯用精密時計(けいたいようせいみつどけい))が発明されると、船の位置はほぼ正確に測ることができるようになりました。現在は、GPSと呼ばれる人工衛星(じんこうえいせい)が利用されていて、カーナビゲーションと同じ原理で経度と緯度を計算し、すぐに位置を導く(みちびく)ことができるのです。
 
星座について
 
 星座は、今から5000年前(紀元前(きげんぜん)3000年ごろ)にメソポタミア地方(現在のイラン・イラク)でつくられたと考えられています。当時の人々は、星座の見える方向や位置から、方位や時刻、季節などを知って、牧畜(ぼくちく)・農業・漁(ぎょ)業などを行っていました。
 その後、これらの星座がギリシャやローマに伝わると、神々(かみがみ)や英雄(えいゆう)たちが活躍(かつやく)する神話(しんわ)(ギリシャ神話・ローマ神話)が多く誕生(たんじょう)しました。15〜16世紀の「大航海時代(だいこうかいじだい)」には、ヨーロッパの航海者によって南半球の星座が知られるようになりました。夜空に輝く(かがやく)星は、海を航海するときの道しるべでもあったので、人々は星を見て目的地に船を走らせながら、その星々をつなぎ合わせて自分なりの星座を作りあげていたのかもしれません。
 20世紀に入ると、望遠鏡(ぼうえんきょう)や写真技術の進歩によって、国際的に標準(ひょうじゅん)となる星座が決められました。現在は、88もの星座がありますが、これらは1928年に国際天文連盟(こくさいてんもんれんめい)(現在の国際天文学連合(こくさいてんもんがくれんごう))によって採用(さいよう)されたものです。
 
3月のおわりころに小笠原周辺で見ることのできる星座
※星座の向きは実際のものと異なります。







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