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(2)本研究の手法
 論文調査及び名古屋港実験の結果から、本研究の手法を図8の通り決定した。平成14年度に決定した手法との違いは、水深データの処理におけるロバスト推定法による不良データ除去及びターゲット設置位置の特定である。
 地形歪みの補正方法については、平成14年度の報告書に示す通り、図9に示す方法により実施する。海底からの最初の音波が受信される時間から求まる最短斜距離位置(図中PpH)は、傾斜海底面に垂直となる位置であり、地形歪みは、この位置を送受波器の直下位置として仮定した仮想海底面上に斜距離補正を行う時に生じる。
 
図9. 地形歪み補正の概念図
 
地形歪みによる移動変位
 
 補正はまず、各ピングにおける送受波器位置をGPSアンテナ位置から算出し、ヘディング及びピッチ軸を考慮した地形断面データを作成する。このとき、水深データ処理と同様に、送受波器位置におけるヒーブ補正を施す。次に、斜距離補正時に使用した最短斜距離を仮想海底面とし、この面と各音響画像データ位置における水深差を求める。斜距離が仮想海底面までの距離と等しければ(1)式、仮想海底面よりも実海底面が高い場合は(2)式、逆に低い場合は(3)式を使用し、移動量を算出、実海底面上にデータを並べる処理を実施する。
 (1)〜(3)式からも明らかのように、地形歪みの移動量は、仮想海底面と実海底面の水深差に比例して大きくなり、また探査幅の外側よりも送受波器直下近傍の方が大きくなる。名古屋港実験では、片側500個の音響画像データを収集したため、それぞれのデータの地形歪みによる移動量を算出し、仮想海底面から実海底面への並べ替えを行う地形歪み除去プログラムを開発した。
 
2.1.2 水深データ処理方法の検討及びプログラム開発
 地形歪み除去に必要不可欠な水深データについて、データの補間方法の検討及びプログラム開発を行い、地形歪み除去画像の作成及び評価を実施する。
 
(1)水深データ処理方法の検討
 名古屋港実験で収集したターゲットを含む水深データの処理方法を検討した。水深データ処理においては、メッシュサイズを指定する必要があるが、図10示すようにセンタービームと外側ビームでは照射覆域に大きな違いがある。
 
図10. 斜距離の違いによる照射覆域の大きさ(水深10m)
 
 各ビームの水深データは、ビーム中心軸のメッシュに格納される。ターゲットの形状を明瞭に捉えるため、メッシュサイズをセンタービームの照射覆域の一辺の長さとすると、特に入射補角が40度を越える外側ビームの各ビーム間で抜けが生じることになる。またターゲットを残した状態で補間処理を実施すると、図11に示すように、入射補角が40度を越える外側ビームでターゲットを捉えた場合は、適切な補間ができない。
 
図11. ターゲットを残したままでの補間例
(左:最適曲面近似法による補間、右:補間前)
LINE-2(HYPACK収録)
 Data file = 008_1226.HSX
 収録レンジ=25 m
 
 したがって本研究では、使用する水深データを評価した上で、スパイク状のデータ及びターゲットの水深データを除去した後に、水深データの補間処理を実施し、最後にターゲットの水深データを加える方法を採用した。本研究の水深データ処理のフローチャートを図12に示す。
 効率的なスパイク状のデータを除去する方法として、平成13年度「K-GPSを用いた水路測量の効率化の研究」においては、ロバスト推定法による自動除去技術を開発している。ロバスト推定法は、海底面を3次元空間における2次曲面方程式にモデル化し、推定したモデルから外れた水深データを定量的に分別して除去する方法である。
 本研究では、ロバスト推定法によるモデル面と水深データとの残差を度数分布として表した上で、信頼性のあるデータのみを使用する。その後、水深データの補間とターゲット位置の特定を実施する方法を採用した。
 
図12. 水深データ処理のフローチャート







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