第2章 観測資料の収集・整理
第1年次は、日本海全体、あるいは日本海の中で、ある程度広域的な範囲を対象として行われた海洋観測・研究プロジェクト・行政及び研究機関、大学等によって行われた観測に関する情報を収集した。
引き続いて今年度は、国及び地方自治体によって行われた日本海沿岸域の海洋観測や環境調査に関する情報及びデータを重点的に収集・整理するとともに、日本海全域における観測資料についても追加収集した。
なお、「観測情報」「観測データ」などに関する言葉の混乱を避けるため、本報告書では以下のように定義して用いることとする。
・観測情報:観測に関するあらゆる情報を含む一般的な用語として用いる。
実データは含まない。
・インベントリー情報:観測情報のうち、観測期間、船舶、観測機関など、数値、記号、
名称などで表され、データベースの検索キーとして整理可能な情報。
観測情報のうち、コメント的な記述などは含まない。
・属性情報:本業務ではインベントリー情報と同義で用いる。
・観測データ:測定された実データ。通常、ヘッダーとしてインベントリー情報の一部が
付与されている。
2.1.1 水産試験研究機関による定線観測資料
日本海沿岸域における海洋観測は、地方自治体の水産試験研究機関による観測が大半を占めている。
各道府県の水産試験場では、1963年から漁海況予報事業として定期観測(図2.1に示す沿岸定線・沖合定線観測)を行っており、1993年頃までの観測データが日本海洋データセンター(以下、JODC; Japan Oceanographic Data Center)に送付されている。これらのデータは、日本水路協会海洋情報研究センター(以下、MIRC; Marine Information Research Center)において品質管理を行っている。
観測状況に関する情報は、日本海で観測を行っている機関の報告をまとめた「日本海海洋調査技術連絡会議事録」にも記載されているが、その内容は表2.1に例示するように観測機関及び観測期間程度である。そのため、これらの定線観測に関する情報の整理に関しては、既にJODCで保管している観測データから抽出・整理し、同議事録の記載と照合するという手順の方が効率的である。
JODCの標準データフォーマットは、付表2に示すFETI(Format of Exchange and Translation for Integration)と呼ばれる形式であり、そのヘッダー情報から観測日時・観測期間・観測位置・国コード、観測機関といったインベントリー情報を抽出することができる。
そこで、水産試験研究機関による定線観測(プロジェクトコードとして「POD」が付されている)のインベントリー情報を抽出した結果、6421クルーズの情報(船名不明は除く)が抽出された。
なお、ここで対象とした観測範囲は2.3節に後述する範囲(図2.11)である。また、クルーズの区切りは観測データからはわからないので、1隻の船について観測日時が5日以上離れていれば別のクルーズと見なして集計した。
観測機関別のクルーズ数一覧は表2.2に示すとおりであり、38機関のデータが収録されていた。定線観測は原則として毎月もしくは2ヶ月毎に行われているので、クルーズ数は多い所では1機関について300回以上に上る。
収録されているデータは大半が1993年までのものであり、1994年〜1995年のデータも一部(28クルーズ)含まれていた。
そこで、1994〜2003年の観測情報については、第49〜58回「日本海海洋調査技術連絡会議事録」に記載されている情報を収集・整理した。この結果、1274クルーズの情報が得られた。
なお、水産試験研究機関における近年の観測点分布(2003年4月現在)を図2.2に示す(資料提供:水産総合研究センター中央水産研究所)。
図2.1 都道府県水産試験場の定線概要図
(拡大画面:44KB)
|
|
表2.1 「日本海海洋調査技術連絡会議事録」に記載された観測概要例(1970年の例)
出典:第25回日本海海洋調査技術連絡会議事録(1970)
|
表2.2 JODCの保管データから抽出した水産試験研究機関による観測数
(1963〜1995年)
機関コード |
観測機関 |
クルーズ数 |
031 01 |
北海道区水産研究所 |
268 |
031 02 |
東北区水産研究所 |
81 |
031 03 |
中央区水産研究所 |
2 |
031 05 |
西海区水産研究所 |
60 |
031 06 |
日本海区水産研究所 |
186 |
031 09 |
東海区水産研究所(現中央水産研究所) |
16 |
031 12 |
東北区水産研究所八戸支所 |
150 |
110 25 |
兵庫県立香住高等学校 |
18 |
110 29 |
山口県立水産高等学校 |
3 |
201 00 |
北海道立中央水産試験場 |
77 |
201 01 |
北海道立網走水産試験場 |
18 |
201 02 |
北海道立釧路水産試験場 |
4 |
201 03 |
北海道立函館水産試験場 |
164 |
201 04 |
北海道立稚内水産試験場 |
92 |
202 00 |
青森県立水産試験場(現青森県水産総合研究センター) |
562 |
202 01 |
青森県立水産増殖センター(現青森県水産総合研究センター像養殖研究所) |
168 |
202 02 |
青森県立水産修練所 |
6 |
203 00 |
岩手県水産試験場(現岩手県水産技術センター) |
336 |
204 00 |
宮城県水産試験場(現宮城県水産研究開発センター) |
2 |
205 00 |
秋田県水産試験場(現秋田県水産振興センター) |
374 |
206 00 |
山形県水産試験場 |
295 |
207 00 |
福島県水産試験場 |
1 |
208 00 |
茨城県水産試験場 |
2 |
215 00 |
新潟県水産試験場(現新潟県水産海洋研究所) |
339 |
216 00 |
富山県水産試験場 |
372 |
216 06 |
富山県総合教育センター |
1 |
217 00 |
石川県水産試験場(現石川県水産総合センター) |
291 |
218 00 |
福井県水産試験場 |
286 |
226 01 |
京都府立海洋センター |
353 |
228 10 |
兵庫県但馬水産事務所試験研究室 (現兵庫県立農林水産技術 総合センター但馬水産技術センター) |
303 |
231 00 |
鳥取県水産試験場 |
279 |
231 10 |
鳥取県水産試験場境分場 |
9 |
232 00 |
島根県水産試験場 |
342 |
235 01 |
山口県外海水産試験場(現山口県水産研究センター) |
200 |
240 00 |
福岡県福岡水産試験場(現福岡県水産海洋技術センター) |
290 |
241 00 |
佐賀県水産試験場(現佐賀県玄海水産振興センター) |
161 |
242 00 |
長崎県水産試験場(現長崎県総合水産試験場) |
281 |
243 00 |
熊本県水産試験場(現熊本県水産研究センター) |
29 |
計 |
6421 |
|
図2.2 水産試験研究機関による近年の定線観測点(2003年4月現在)
|