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報告
第8回 九州運輸コロキアム
Kyushu Transport Colloquium
 
新北九州空港の活用方策について
 
(株)日本総合研究所 研究事業本部 上席主任研究員
岡田 孝 氏
 
 
日時 平成15年7月17日(木)
場所 ステーションホテル小倉(北九州小倉北区)
主催 (財)九州運輸振興センター
 
[1]はじめに
 
 日本総合研究所の岡田でございます。
 昨年度、私どもで新北九州空港の航空貨物での活用の方向性をどう考えたらいいのかという調査研究をさせていただきました。本日はその研究の成果と、それに加えまして、これからの空港活用ということで、旅客便の路線形成等を含めてどう考えたらいいのかということについて、簡単ですが、ご報告したいと考えております。
 
[2]新北九州空港の航空貨物での活用の方向性
 
■新北九州空港が受け持つ貨物機能の方向性
 この新北九州空港の優位性ですが、
 (1)我が国の航空需要地域「九州」に立地し、北部九州都市圏を背後圏に持つ需要ポテンシャル
 (2)地勢的に東アジアに近い立地条件、近隣国(韓国等)との交流基盤
 (3)恵まれた立地環境と空港施設(24時間運用可能な海上立地、中距離国際線をカバーする滑走路長)
 (4)大規模な国際港湾機能・充実した国内輸送インフラとの連携が可能(様々な輸送モードが結節、特区等の物流推進政策も充実)
といった点が挙げられます。
 こうした状況の中で、貨物の方向性をどう考えていったらよいのか、九州の航空貨物に関して国内線の6割、国際線の9割を占めている福岡空港に近接する空港として、何を考えていったらいいのかということをお話しいたします。
 まず、ひとつは福岡空港のベリー1)の能力を超える部分を上手に取り込んだらどうかということです。これは、地域において最適な空港選択ができるということと、都市の需要の発展拡大がセットになって、需要の取り込みにつながるのだろうと思います。
 さらに、定期便だけでなくチャーターを含めて、フレーター2)を積極的に受け入れていく、または創造していくということが重要だと思います。
 もうひとつですが、これからはリージョナル航空の時代ということがいわれています。大型化でスケールメリットを追求する場合もありますが、それだけではなく、多頻度少量時代の輸送体系が構築されている現在において、そういったものを上手に受け入れていくことが重要ではなかろうかということでございます。
 ここで航空貨物というのは、どういうところに利用者の一般的な判断基準があるのかということについて、簡単に触れさせていただきます。
 まず、荷主が複数の事業者からの競争でフォワーダー3)を選定する場合に何を考えているかということですが、選定の前提というのは、複数の事業者、複数の航空会社が立地し、競争原理が働くかどうかということです。
 その選定の条件ということでは、やはり価格面の対応、輸送品質の最適化で、実際には年間契約を前提にフォワーダー間で入札、あとFOB4)が多い状態です。一般的には、こういったところに判断基準を置く。逆にいうと、こういうところをどうやって強化するかということになるわけでございます。
 
図1 航空貨物に係る利用者の一般的な判断基準
(主にフォワーダーが利用する航空会社及び空港を選定する場合)
○航空会社の選定条件
・仕向地毎にある複数便の混載メニュー→ 混載貨物として対応容易性
・特定航空会社との仕入関係→ 輸入・輸出スペースの一括仕入の状況
・直行便の存在、定時性(欠航リスク等と代替性)
→リードタイムの短縮、積み替えによるリスク低減の可能性
・大都市圏空港の複数社、多頻度なベリー輸送の存在
→価格競争による低運賃化、蔵置等の時間短縮・倉庫費用の低減の可能性
 
○空港選定に係る条件
・国内多方面からの集荷・配送の容易性
→貨物の大ロット化による低廉化、効率化の可能性
・横持ち輸送(国内輸送)に係る負担程度の低さ
・利便性の高い大規模物流拠点の存在→ 輸送商品の付加価値化の可能性
・CIQや薫蒸施設等の充実→ 総合力としての輸送商品メニュー構築が可能
(多様な荷主ニーズヘの対応、多様な品目の取り扱いが可能)
・逐次貨物、時期貨物、緊急貨物の利用の容易性
 
 次に、フォワーダーが航空会社や空港を選定する時に、どういったところがポイントになるかということですが(図1)、まず、航空会社にどのくらい複数便があって、混載便メニューが組めるか、つまり対応容易性があるかということです。
 それから、フォワーダーは特定の航空会社との仕入関係をもっていることが多いのですが、これは全体で一括してスペースを買っているということです。そして、よく言われることですが、直行便、定時性。これは欠航リスクがないということが前提で、結果的にはリードタイムの短縮、積み替えリスクの低減につながるということになります。
 それから、大都市圏が強い理由ですが、大都市圏には複数で多頻度のベリーが存在しており、また、価格競争も働くということです。
 空港選定の条件ですが、まず、集配圏がどれぐらい広いかということです。それが結果的には大ロット化による効率化にもつながります。それから、横持ち輸送の負担といったものをどのくらい軽くするかということになります。それと、やはり利便性の高い大規模な物流拠点が存在するかどうか、そしてCIQや燻蒸施設なりが充実しているか、ということです。それから、多様な貨物の取り扱いがどのくらい可能かということ、こういったところが判断基準になっているということです。
 
 
図2 荷主企業・物流事業者からみた新北九州空港の優位性
注:各種ヒアリング結果等よりとりまとめたもの。現時点での荷主企業及び物流事業者の認識による。
 
 これ(図2)は一昨年度私共の方で、いろいろヒアリングをさせていただいた結果を簡単に取りまとめたものです。これは現時点での評価で、まだ実際には路線が飛んでいませんので明確には言いにくいわけですが、やはり24時間運用であるとか、CIQの対応であるとか、こういう所は非常に期待できそうだと荷主は感じているということです。
 それでは、貨物利用ということで、福岡空港とどのように分担していけばいいのかということについて考えてみました。
 やはり、福岡空港というのはベリーの路線がしっかり張られているわけですから、当然それが中心になるでしょう。混雑空港ですから、昼間にフレーターは飛べないわけですし、運用時間も15時間ということで、深夜、早朝も無理です。そういった点からはフレーターの設定は結構難しい。
 まあ、そうは言ってもここにはフォワーダー等が非常に多く立地しているわけで、多様な品目を取り扱う柔軟性という点から言うと、福岡空港の優位性というのは当然あるわけです。そういった形で多品目で多方向といったロットの取り扱いというのが、福岡空港の大きな方向性でしょう。
 一方、新北九州空港に関しては、どこかポイントを狙っていくということが重要です。方向性としては、旅客の需要がついてこないと便は設定できず、また、設定できたとしても、B737クラスだとたいした重量を腹に積むことは出来ないわけですから、都市貨物で考えていく場合には、フレーターを早い時期に導入できるような形にもっていくべきでしょう。
 それと、やはり東アジアにどう張るのか。ここに対して多頻度な運航がどのぐらい可能なのかというところですが、それをめざすべきでしょう。
 それから、深夜早朝という時間帯の活用、エリアの特性を活用するということになります。少量・緊急輸送への対応とか、エクスプレスに対応するということも重要ではないかということでございます。
 
■新北九州空港活用の条件
 引き続きまして、今度は新北九州空港活用の条件ということで、もう少し広い視点で見てみたいと思います。
 
(1)競争力優位性の確保
 この競争力と優位性の確保ですが、まずひとつは利用環境の整備ということが重要だと思います。運用時間の拡大、フルタイムでCIQが対応できるかどうか。あと、よく言われることですが、利用コストの低減化ですね。これは貨物なら上屋の使用料、旅客なら事務所等の使用料、また、グランドハンドリングの低減化といったものが重要になってくるでしょう。
 それからあとは、これは既に地方空港等でよくやられていますが、横持ち輸送に対する補填や助成、こういった事業に係るインセンティブをどのように与えるかということが重要です。それから、特殊貨物の取り扱い、これは動物・植物ともに、「ここなら取り扱える」と言うこと、これが重要ではないかと思われます。
 先ほど、深夜早朝の話が出てきましたが、現在、運用制限がない空港で、将来のネットワークが構築されるとなると、新千歳、羽田、中部、関空、那覇となるわけですが、ここに新北九州空港が加わると、国内に24時間運用が可能なネットワークができあがるのではないか、それにより夜間の運航によるエクスプレス対応だとか、深夜早朝のビジネス旅客の需要開拓とか、そういった形での需要形成に繋がるわけです。これもよく言われていることですが、改めて深夜・早朝の旅客需要の開拓が重要です。ここでは、あえて24時間とは言っていませんが、これまでの供用時間の両側2〜3時間の運用時間拡大が、これからの流れになろうかなと考えているところです。
 福岡空港の国際線の運航時間をみると、旅客の需要が中心になっているので、貨物の需要とリンクしているわけではありません。現状で最も必要なのは午前便と夜の便で、貨物側からいうと、もう少し午前便があった方がいいという状況です。
 実際に機械の輸出を行う時の条件としては、前日の夜に集荷された荷物を翌日の午前中の便で必ず輸送できること、それから毎日飛んでいるということ、それから、これは混載という形になりますが、コンテナを搭載できるということ。そういうことからB767以上が望ましいわけでございます。
 こうした条件を現在福岡空港で満たしているのはソウルの2便、台北の2便とシンガポールの1便の計5便だけです。デイリー運航は6便ですが、なかなかロットがまとまらないということもあり、成田、関空のようにはデイリーでアジアに持っていくことができない状態です。この辺が貨物を考えていくうえでポイントかなと思います。
 24時間運用についてすこしお話をさせていただきますと、深夜早朝に動く貨物のニーズをどうやって取り込むかということでございます。これは先ほど申し上げましたように、西日本の拠点としての役割があるのではないか、それから、そういう夜間のネットワークを確立していくということがポイントになるのではないか、それが24時間運用の意義のまず最初の部分でございます。
 それから2番目ですが、九州と需要地をフルタイムで結ぶ意義があります。これはビジネス面でタイムラグが解消されるという効果があります。要するに、本店機能をもっておくことかできるということですね。
 ただ、そうは言っても24時間まるまるというのは、先ほどご説明しましたように、地方空港で最初から成立するのは難しいかもしれません。そうした時に段階的に運用時間を拡大していくことが考えられるのではないか。当初は19時間くらいからのスタートかなと考えます。これは福岡空港が7時〜22時までですから、その前後2時間ずつを拡大するというのが、ひとつの方向性です。
 あと羽田空港に関して言いますと、旅客の枠で、今、若干ですが空いているのが23時台以降、貨物ですと24時以降です。ということは、ちょうどそこに滑り込める時間帯の設定を考えていくと、やはり2時間延長ぐらいが重要なポイントでしょう。24時間を目指し、段階的に考えていくというのが現実的な選択ではないかなということでございます。
 中・長期的には、深夜のネットワークは日本だけではなく東アジアに拡がっていくということになるわけです。そうすることによって、かなりフルタイムでフレーター等が運航できる環境条件が整ってくるのではないかと考えます。







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