日本財団 図書館


3)交通行動に伴うクルマ利用状況と影響
(1)クルマ利用回数の変化
 児童がクルマを利用する回数は、H14事後よりH15追跡のほうが減少している。しかし、家族は、さほど変化が見られない(表II-1-10)。
 
表II-1-10 1人あたり月平均クルマ利用回数
  児童 家族
H14事前 22.55回/人・月 27.13回/人・月
H14事後 15.15回/人・月 28.55回/人・月
H15追跡 12.18回/人・月 27.62回/人・月
 
(2)クルマのCO2排出量の変化
 児童および家族の交通手段の利用回数から見たクルマ利用によるCO2排出量の変化については、児童および家族ともにH14事後よりH15追跡のほうが増加している。しかし、H14事前と比べてH15追跡では若干CO2排出量は減少していると思われる(図II-1-11)。
 
図II-1-11 クルマ利用によるCO2排出量の推移
 
4)持続性の評価
 昨年、「交通・環境学習プログラム」を取り組んだ児童(現6年生)とその家族を対象にアンケート調査を行い、「交通・環境」に対する1年後の意識がどの程度維持・継続できているかどうかという視点で概括的に評価を行う。
 
(1)クルマ利用に関する態度
・ある程度は、「かしこいクルマの使い方」に対する意識が持続していると思われる。
・クルマに対する児童の意識は、学習を行う前に比べてクルマを減らすことが良いと思う気持ちが高くなっている。
・さらに、クルマを必要とする意識が減少していることもわかった。
・家族では、クルマに対する意識は、子どもたちが学習する前に比べ、さほど変化が見られなかった。
 
(2)実際の交通行動に伴うクルマ利用状況と影響
・ある程度は、「かしこいクルマの使い方」に対する意識が持続していると思われる。
・クルマの利用回数については児童では利用する回数が減少していることがわかったが、家族ではさほど変化が見られなかった。
・クルマ利用によるCO2排出量については、児童および家族ともに学習を行う前と比べてほとんど変化が見られなかった。
 
1. 4 平成14年度の取り組み内容をもとにした普及活動
 交通エコロジー・モビリティ財団は、14年度の実施内容とその結果、14年度に作成した副読本やワークシート等を取りまとめ、普及用ツールを作成し、交通・環境教育の普及活動を行った。
 
(1)旺文社デジタルインスティチュート発行メールマガジン、【エデュぷらネット】による普及活動
 旺文社デジタルインスティチュートが、直接学校教育にかかわる話題を中心として、最新の教育ニュースや、授業に役立つ教材の紹介、研究会のお知らせなどを毎週木曜日に発行しているメールマガジン(6/26発行分、No.169)に下記のように掲載された。(6/26分の発行部数:1882部)
 
(2)東京都小中学校環境教育研究会に対する普及活動
 東京都小中学校環境教育研究会は、小学校・中学校での環境教育のあり方を研究している、東京都の公立小中学校に勤務する教職員によって組織・運営されている研究会である。
 その研究会の10月の定例会において、本プロジェクトの趣旨や内容、14年度の実践結果の説明を行った。
 
(3)(社)土木学会 土木計画学研究委員会「土木計画のための態度・行動変容ワークショップ」との連携
 土木計画のための態度・行動変容ワークショップ(代表:東京工業大学 藤井聡助教授)は交通計画や防災、景観、まちづくりなどの様々な土木計画上の問題について、「否定的な態度や行動が肯定的な態度や行動に自発的変容を期待する研究」の発展と実務的展開を目的として平成15年に立ち上げられた。
 交通エコロジー・モビリティ財団はそのワークショップに参画するとともに、今後ワークショップと連携をとりながら、今後普及活動を推進することとした。
 
【エデュぷらネット】No.169より抜粋
 
【もらえる・使える・得だね教材】
--▼▼▼---------------------------------
二酸化炭素の総量の約35%は自家用車?
〜 交通環境教育のプログラム 〜
-----------------------------------------
 家庭から排出される二酸化炭素の総量の約35%は自家用車が原因だということをご存知ですか?
 
 車での移動が当たり前の今日、全世界的に温室効果ガスによる地球温暖化問題が深刻化しています。
 
 そこで、交通環境教育に関する和泉市立緑ヶ丘小学校の実践とここで使われている交通環境教育のプログラムをご紹介します。
 
【プログラムの目的】
 
 日常的な交通行動における自動車利用を減らすため、
・一度の自動車利用で済ます
・近くの場合は徒歩や自転車で行く
・時々は公共交通機関を利用する
 といった方法を考え、自分たちの考えた活動を実際に実践して達成することにより、公共問題に主体的・自主的に取り組む姿勢を育む。
 
【プログラムの特徴】
 現在は学識経験者やコンサルタントが協力して実施しており、最終的にはどこの学校でも取り組めるような教材やプログラムの改良を目指している。
 
【参考URL】
■ 交通エコロジー・モビリティ財団ホームページ
■ 大阪府土木部交通道路室ホームページ
 
1. 4 今後の課題
(1)今後の課題
 本年度の事業では、昨年度の成果や課題を踏まえて「交通・環境学習プログラム」の教材や進め方などの検討を行い、実際の授業で実施することによって評価を行った。
 評価の結果、本事業で開発した「交通・環境学習プログラム」は充分活用できることがわかった。また、昨年度のプログラム実施の効果の継続性も評価し、一年経過後もある程度は「かしこいクルマの使い方」に対する意識が持続していることがわかった。
 一方で、いくつかの問題点も指摘されたため、今後は次のような課題に取り組む必要があると考えられる。
 
(1)多様な取り組みの蓄積
・本事業で開発した教材の授業への導入に際しては、関連する教科学習との整合性確保、総合的な学習の時間におけるねらいと計画的実施の調整など、学校における教科学習の全体計画や年間計画の中で位置づける必要がある。とくに、導入部については、子どもたちが興味を持って取り組めるような配慮が必要である。
・総合的な学習の時間への導入に際しては、子どもの自主性を尊重することを基本とすれば、あらかじめガイドライン的にカリキュラムや教材を準備するのはそぐわないという意見もある。一方で、子どもたちの自主性を尊重するあまりに、授業の計画性や目標に対して問題が発生する場合がある。したがって、目標やねらいを明確にした上で子どもたちとのコミュニケーションを通してプログラムを進める工夫をするなどの配慮が必要である。
・家庭や地域といっしょに学んだり、支援を頂いたりする際には、充分なコミュニケーションが必要である。コミュニケーションの接点が子どもたちだけでは負担が大きくなる場合があるし、充分な支援をいただけない場合も発生する。説明会の開催やプログラム通信の発行など、充分なコミュニケーションを図る工夫が必要である。
・事業のねらいはおおむね達成されることがわかったので、更に実践校を拡大して、理科、社会科などの教科学習での取り組みや、いくつかのテーマに基づいた総合的な学習への導入など、多様な取り組みを行い、本プログラムを活用していくための実施に係るノウハウなどの蓄積を行う必要がある。
(2)学習教材の拡充
・これまでに実施した授業では、「課題発見フェーズ」から「実践フェーズ」に至構成の中でいくつかの教材を開発して導入することを試みたが、「課題発見フェーズ」で動機が活性化されたとしても「実践フェーズ」で開発した教材に全ての子どもたちが興味を示すわけではないこと、本事業で開発した教材だけでは学習現場からの学習計画に基づく要請に充分応えられるわけではないことなどから、それぞれのフェーズで、さらなる教材の開発と提供が望まれる。
・したがって、小学校高学年を対象とした「交通・環境学習」という範囲で、本事業で開発した教材以外の様々な教材の開発・拡充を図る必要がある。
・また、今回開発した学習プログラムは、CO2などの空気、自身の移動手段といった学習対象であるために、小学校高学年、なかでも5年生、6年生に限定される。各学年の学習課程を充分に考慮した学年に応じた教材や学習内容のプログラムの検討も必要であろう。
(3)広く利用していただくためのしくみの構築
・広く利用していただくためには、各行政団体、教育委員会および学校に知っていただくための努力を行わなければならない。このために、府担当部局、市町村担当部局、および教育委員会が連携して、小学校の現場に対して利用していただけるしくみを構築し、教材提供や授業実施のための支援を行う必要がある。
・たとえば、知っていただくためのパンフレットの作成、パイロットプロジェクト成果のアナウンス資料の作成などが必要である。ただし、パンフレットや教材及び事例集などを作成して配布するだけでは、利用を促進することはできない。知って頂いて利用を促進するための場として、市町村担当者への説明会、小学校校長会などを活用した案内とともに、公開授業、教育実践報告会、および教育研修会などの教育現場での事例報告などを積極的に実施する必要があると考えられる。
 
(2)平成16年度の取り組みについて
 本年度までの取り組みの結果、開発した「交通・環境学習プログラム」は、小学校高学年の学習に活用できそうであるため、課題として挙げられた事項を勘案し、「総合的な学習の時間」を活用して、次のような取り組みを行うことが考えられる。
(1)教科学習(理科、社会科など)に連携した取り組み
・教科学習でできない内容を「総合的な学習の時間」を活用し、補完することを考え、小学校高学年での活用を念頭に、「理科」もしくは「社会科」などの教科学習と連携して実践を行い、検証する。
・ここでは、「総合的な学習の時間」を活用した「交通・環境学習」の実践を行うことにより、事例を蓄積する。
(2)子どもたちが自主的に考えたテーマで活用できる学習教材の拡充
・当面は、既に提供されている「出前講座」や「見学会」などを含めて、「総合的な学習の時間」で幅広く取り組むことを目標として、学習現場から要請される子どもたちが興味を持って取り組める教材の拡充を行う。
・また、小学校高学年(4年、5年、6年)の各学年における教科学習の目標を勘案し、学年に応じた教材や学習内容のプログラムを検討する。
(3)学習を支援するしくみの検討と試行
・府担当部局、市町村担当者への説明会や小学校校長会などでの事例報告を実施する。
・(1)および(2)の取り組みに際して、授業を実施する現場での取り組み支援、普及に向けた支援などのしくみの検討を行い、試行を開始する。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION