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6. 試験経過
 
6.1 第1船の試験経過(M/T “IKOMASAN”)
 
 試験経過の概要は以下のとおりである。
 試験開始に先立ち、対象船の姉妹船(M/T “IBUKISAN”)を訪船し、計測準備工事用調査を実施。機器設置場所、設置要領、等を決定した。(2001年7月4日 @川崎沖)
 (a)本船計測データフォーマット、本船への依頼内容、等の検討調整。(2001年7月6日 @MOL)
 (b)本船計測準備用機材準備(詳細仕様決定、所掌分担調整、機材購入、機材加工、搬送)。
 (c)本船での計測準備工事施工。(2001年7月17、18日 @宇部沖)
 (d)計測準備完了。(2001年7月18日)
 (e)2001年度中に第四次航までの試験を終え、引き続き第五次航以降試験継続の予定であったが、第五次航中にセンサ故障が発覚。
 (f)本報告に一部含まれているが、第四次航の2001年12月以降のデータ、及び第五次航のデータは無効とした。
 (g)本試験は、第九次航まで行われた。
 (h)第九次航にて、本船での試験開始から1年を経過したため、試験期間満了とし、計測機器の撤去を実施。(2002年8月11日 @水島港)
 
 第1船での試験を通じて経験した不具合としては、NOxモニタリング機器に関する下記2件である。
(a)センサの故障
(b)記録計メモリの喪失
 これらは何れも取扱い上の問題と考えられ、実用に際しては適切な取扱い、適切な記録計の選定により、対策を講じる事が可能である。
 
 試験結果を図6.1に示した。
 
図6.1 M/T“IKOMASAN” NOx連続計測結果
NOx vs. Engine Load (IKOMASAN Voyage No.1〜9)
 
 
 試験経過の概要は以下のとおりである。
 計測準備は下記要領にて行われた。
 (i)本船を訪船し、計測準備工事用調査を実施。機器設置場所、設置要領等を決定。(5月28日 @六甲アイランド)
 (j)本船計測データフォーマット、本船への依頼内容等の検討調整。(6月26日 @川崎NYKSM)
 (k)本船計測準備用機材準備(詳細仕様決定、所掌分担調整、機材購入、機材加工、搬送)。
 (l)本船での設置工事施工、計測準備完了。(7月23日 @六甲アイランド)
 
 本船の航路は、日本⇔ヨーロッパの往復であり、約50日周期で1航海(1往復)が行われる。本船は、計測準備完了後、第1次航2001年7月〜9月(Rotterdamにて給油)から、第9次航2002年10月〜2002年12月(Singaporeにて給油)まで試験が実施された。
 
 連続モニタリング試験を開始後すぐに発生したすすによるサンプリング管の詰りによる計測不良も、サンプリング管形状の改良、サンプリング部の保温による結露防止対策、エジェクターエアの流量・圧力最適化によって解決され、以後3航海分(第7〜9次航)、安定したデータが採取できたため、モニタリング計測を終了することとなった。2002年12月10日、9次航を終え、日本に戻った本船を訪船し、神戸六甲アイランドにおいて分析計の撤去作業を行い、約1年半に及ぶ本船でのNOxモニタリング計測を完了した。この間、Weekly Data 50回、燃料20サンプルを採取した。
 試験結果を図6.2に示した。
 
図6.2 M/V“NYK ANTARES” NOx連続計測結果
NOx vs. Engine Load (NYK ANTARES)
 
 
 試験経過の概要は以下のとおりである。
 まず、計測準備は下記要領にて行われた。
 (a)対象船の姉妹船を訪船し、計測準備工事用調査を実施した。機器設置場所、設置要領の決定、準備時の所掌の確認を行った。(2001年9月21日)
 (b)本船での計測準備工事実施。(2002年1月16日)
 (c)海上運転試験にて計器の作動確認を兼ねて計測を実施。(2002年1月24日〜26日)
 その後、本船は、計測準備完了後、下記の日程で運航された。
海上運転試験 2002年1月(丸亀にて給油。A重油及びC重油にて運転実施。)
第1次航 2002年2月〜4月 から 第9次航 2003年11月〜2004年1月
 排ガスデータ(NOx濃度及びO2濃度)は自動的に計測され、記録計に記録される。記録されたデータは、日本寄港時に計器メーカが訪船し記録計メモリから採取した。計測機器の校正は1回/2週の周期で自動的に行うように、また計測器の自動パージは全航海を通して1回/1日の周期で定期的に行うように機器を設定した。
 
 第9次航迄以下に示す不具合事項が発生し、データがある期間取れていない結果となった。
*就航前 スパンガスの漏れ
*NOx指示値の誤設定
*スパンガスのリーク
*センサ受感部の破損
 
 試験結果を図6.3に示した。
 
図6.3 M/V “MH” NOx連続計測結果
NOx排出率 第1次航〜第8次航(第8次航は推定値の為、参考データ)
 
 
 ジルコニアNOxセンサの高い信頼性に排ガス採取法にエゼクタエア方式を用い、第1、2船を通じて連続計測を行なってきた。そこで幾つかの不具合とその対策を第3船のMH号に順次講じ、約2年にわたり連続データを回収してきた。以下に主な不具合とその対策、今後の排ガス採取法の見直しも含めた課題について報告する。
1)NOx指示値が高く、通常数ppm程度で安定している停泊中でも50ppm程度の指示値になる現象が発生した。原因は、電磁弁内部スプリングに錆びが発生。錆びがシール部に付着し、リークが発生したものであった。
2)停泊中にもかかわらず、50ppm程度の指示値を示す現象が発生した。原因は、発信器−受信器の配管にガスがたまり、測定時はある程度指示が低下するが、ゼロ点に戻るのに時間を要することが原因であることが判明した。
3)パージシーケンスが動作しているにもかかわらず、パージAIRが流れていない不具合発生した、原因調査の結果、発信器内部AIR入口の継ぎ手に白色物質が析出し、配管に詰まりが発生したことが原因であることが判明した。この白色析出物は、X線分析で調査した結果、硫黄が析出。排ガスが拡散し、継手部で温度低下が起こり硫黄が析出したと推測する
4)NOx値が5000ppm、O2値がゼロになる現象が発生した、センサヒータの断線と一部配線パターンのクラックが原因であることが判明した。
 
 第1船、第2船で発生した不具合事項に対し、技術的に改良し万全の体制で第3船MHの実船試験に臨んだにもかかわらず、いくつかの不具合が発生してきたことを考慮すると、エアエジェクタ方式は長期連続計測としての耐久性に不安がある。そこで現在検討しているのが、IMO船上NOx計測評価のガイドラインDE46/WP.3 Annex 1で述べられている中で、“ガスサンプリングはダクト径の1O-90%の範囲で・・・”と規定されたことにより本来の特徴である直挿式の可能性についてである。
 そこで、直挿式での試験を実施した。直挿式ジルコニアNOxセンサの実用検証試験として、まずCLD法との相関試験を実施した。今回はセンサ取り付けアダプタを排気管径の1O%〜90%の位置に挿入できるように改良して試験に臨んだ。
 陸上での試験用単筒エンジンでの評価結果ではあるが、ジルコニアセンサの特徴である直挿式と化学発光法との良い相関結果が得られた。今後はエアエゼクタ方式に変わるこの直挿方式を実船試験を通じて実証し、より簡易で信頼性の高い計測器を提供していきたいと考えている
 
 
 3年間の使用燃料油の窒素分分析結果は、ほぼ0.3〜0.4%に集中しており、この結果は、最近NKが調査した世界各地のバンカー油中窒素分(図6.4)に一致している。
 
図6.4 世界各地の燃料油中の窒素分







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