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表3.7.3 試料(穀類)のかさ密度と真密度および水分量
試料名 かさ密度(g/cm3 真密度(g/cm3
*試料水分を含む
水分量(%)
*105℃条件
締め固めをしない場合 Procter/Fagerbergによる締め固め

(新潟産)
0.836 0.903 1.59 13.7

(秋田産)
0.812 0.894 1.60 14.0
大麦
(オーストラリア産)
0.724 0.787 1.59 10.3
大麦
(国内産)
0.698 0.740 1.54 12.1
大豆
(分別)
0.735 0.781 1.37 10.5
大豆
(非分別)
0.737 0.777 1.36 10.8
とうもろこし
(米国産)
0.851 0.886 1.53 12.6
 
表3.7.4 試料(穀類)の浸水率(Permeability)
試料名 締め固めをしない場合の
かさ密度による浸水率
Procter/Fagerbergによる締め固めをした場合のかさ密度による浸水率

(新潟産)
0.47 0.43

(秋田産)
0.49 0.44
大麦
(オーストラリア産)
0.55 0.51
大麦
(国内産)
0.55 0.52
大豆
(分別)
0.46 0.43
大豆
(非分別)
0.46 0.43
とうもろこし
(米国産)
0.44 0.42
 
3.7.5 まとめ
 試験結果から、穀類の浸水率は締め固めしない場合で平均値0.49±0.04、Procter/Fagerbergによる締め固めをした場合で平均値0.45±0.04である。穀類の種別による差および締め固めの有無による差も小さいことから、4種類7サンプルの試験結果にて穀類を代表する浸水率を決定することに問題はないと考える。
 この結果から穀類の提案浸水率としては最大値(締め固めをしない場合の国内産大麦)の0.55を切り上げ、0.6を提案するのが妥当である。
 
 
 我が国は、本委員会における調査研究の成果に基づき、これまでのIMOにおける議論において種々の提案を行ってきたが、その結果、ばら積貨物船の安全性の更なる向上を目指し、これまで検討された安全対策をとりまとめたSOLAS条約第XII章の改正案を策定することが合意されている。改正案は、2004年2月25日から3月5日に開催される第47回設計設備小委員会(DE47)において検討され、2004年5月に開催される第78回海上安全委員会(MSC78)において承認、同年12月に開催される予定の第79回海上安全委員会(MSC79)において採択される見通しである。このため、我が国は、これまでの調査研究成果及びIMOにおける議論を踏まえた上で、第XII章の改正案を策定し、DE47に提出しているので、その概要を紹介する。
 
 これまでに合意されている諸対策のうち、現存ばら積貨物船に対する隔倉積の禁止、新造ばら積貨物船に対する二重船側構造の強制化及び二重船側に関する定義及び二重船側ばら積貨物船に対する貨物倉浸水を考慮した強度要件を取り入れるものとして、表4.2のような章立てで第XII章の改正案を策定することとした。個々の規定については4.3以降に述べる。
 
表4.2 SOLAS条約第XII章改正案の骨子
Reg.1 定義 現行Reg.1。ばら積貨物船の定義の見直し、二重船側構造に関する定義、その他必要事項を追加している。
Reg.2 適用
Reg.2.1 適用
Reg.2.2 現存船への適用
Reg.2.3 修理、改造及び艤装工事

現行Reg.2。規則全般の適用。
隔倉積の制限を含む現存船へ適用される要件を規定。
他の規則にならって追加。
Reg.3 二重船側構造  
Reg.4 損傷時復原性要件 現行Reg.4に相当。
Reg.5 構造強度要件 現行Reg.5に相当。
Reg.6 要件の適合に関する情報 現行Reg.8
Reg.7 ばら積貨物密度の宣言 現行Reg.10
Reg.8 積付け計算機 現行Reg.11
Reg.9 水位検知装置 現行Reg.12
Reg.10 排水設備 現行Reg.13に本要件の適用に関する統一解釈であるMSC/Circ.1069を含めたもの。
 
 ばら積貨物船に定義については、MSC77で合意事項に従って次のとおりとしている。
 
 二重船殻化については、後述する貨物倉浸水時強度要件と同様に、長さ150m以上のばら積貨物船(新しい定義によるもの。)であってばら積貨物密度が1.0ton/m3以上の貨物を積載するものを適用対象とし、MSC77で合意された”Double Side Skin Construction”の定義の大部分を二重船殻化に関する要件として規定した。
 
 現行要件においては、一般に脆弱と考えられる単船側構造が腐食衰耗の結果として崩壊し貨物倉浸水に至るというシナリオが想定されていたが、二重船殻化が強制されることを前提とする場合、従来と同じような考え方で整理することは困難である。適切な浸水シナリオを設定し得ない場合、強度要件として過剰な設計荷重を設定せざるを得なくなることが懸念される。このため、3.5で紹介した研究成果に基づき、浸水シナリオとして船側からの衝突による浸水を想定することとし、改正案をまとめることとした。また、これらの要件の適用については、そもそもばら積貨物船の安全性に関する議論が高比重貨物を積載する比較的に大型のばら積貨物船を想定して行われてきたこと、小型船については現段階における残存性要件の適用は困難であり更に慎重な議論が必要であること、その一方で強度的な面においては比較的に余裕があること等を考慮し、現行要件と同様に、長さ150m以上のばら積貨物船(新しい定義によるもの。)であってばら積貨物密度が1.0ton/m3以上の貨物を積載するものとしている。
 
4.5.1 残存性要件
 残存性要件の判定基準に関しては、現行要件と同様に総会決議A.514(13)で改正された総会決議A.320(IX)によることとしているが、船側からの衝突による貨物倉及び/又は船側区画の浸水を想定にするにあたり、次のような前提条件を設定している。
a. 浸水区画を想定する上での損傷範囲は、長さ方向:船側区画(バラストタンク)1つ分、幅方向:船側から船幅の1/5又は11.5mのいずれか小さい方の距離の範囲、深さ方向:無制限としている。
b. 浸水区画の浸水率については、現行条約/決議で浸水時の縦強度要件として参照されているIACS統一規則S17に基づき、貨物部と空倉部を分けて考えることができるものとするとともに、鉄鉱石、石炭、セメント等の貨物部分については0.3、鉄鋼製品のような貨物に対しては0、空倉部分については0.95を、それぞれ浸水率として与えている。あわせて、3.7で紹介した研究成果に基づき、穀類貨物に対する浸水率を0.6として与え、その他貨物が特定できない場合についてもこの値を最小値としている。
 
4.5.2 強度要件
 強度要件については、残存性要件と同様に、浸水シナリオとして船側からの衝突による浸水という従来にはない特殊な状況を想定することとしている。この場合、衝突が発生する状況はある程度海域や海象条件といったものが限定されると考えられるため、設計条件として船舶が一生のうちに遭遇し得る最大波高といった極めて厳しい海象を想定することが適切とは考えられない。このため、3.6で紹介した研究成果に基づき、縦強度要件適用における波浪縦曲げモーメントを、通常の設計条件として非損傷時に適用されるものの70%とすることを提案している。
 
 MSC77での合意事項に従い、現行SOLAS条約第XII章の要件及びIACS統一規則S12(Rev.2.1)に適合していない長さ150m以上の単船側構造ばら積貨物船(ただし、従来の定義によるもの)について、載貨重量の90%以上を積載した状態において貨物倉を空倉とすることを禁止する旨を、現存船に遡及適用される要件として規定している。
 
 ばら積貨物密度の宣言については、穀類以外の貨物をばら積みする船舶すべてに適用されるSOLAS条約第VI章第2規則に関する内容であるため、新しい定義によるばら積貨物船すべてに対して適用されるものとした。積付計算機、水位検知警報装置及び排水設備については、新しい定義によるばら積貨物船であって、150m以上のものに適用することとしている。
 
 
 本研究の成果は、IMOにおけるばら積貨物船の安全性の審議に対するわが国意見としてまとめられ、第72回から第77回の海上安全委員会(MSC72-77)に対して文書で提出され、これを基本に上記会合に対するわが国対策が作成されてきた。
 また、ばら積貨物船の安全性に関する審議は現在も継続中で、最終的には、2004年12月に開催予定の第79回海上安全委員会(MSC79)においてSOLAS条約第XII章の改正が採択される見込みとなっているが、ここまでのIMOにおける検討において、日本の意見を反映させるために一定の役割を果たしてきたと考えるとともに、今後MSC78及びMSC79への対応においても本研究の成果が反映されるものと期待する。
 最後に、国土交通省、日本財団、日本造船研究協会ならびに委員各位のご尽力に深く感謝申し上げる。







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