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添付3 RR-S401 平成15年度報告書 資料2
固定式煙感知火災探知警報装置の船内効力試験の実施要領
 
1 一般
1.1 適用
 本実施要領は、機関区域に設置される固定式火災探知警報装置の船内効力試験に適用する。
 
1.2 試験の時期
 試験の実施時期は、海上試運転における常用出力運転時とする。
 
2 試験の内容
 
2.1 模擬火災
 次のいずれかにより模擬火災を発生させる。
(1)液体燃料による試験火災
 油(A重油またはC重油)を、鋼板製で直径200mm、深さ200mmの容器に入れて着火する。ただし、油は試験中燃焼し続ける量があればよい。C重油を使用する場合は、着火を容易にするためA重油を任意の割合で混入してよい。また、船舶の動揺による油の溢出を防止するため及び火炎の高さを制限するために、油を十分浸したウェスを使用してもよい。
(2)液体燃料以外の方法による試験火災
 ISO9705に定める排気装置のフードの下で模擬火災を発生させ、発熱量及び発煙量を測定し、これらの値が前(1)と同等と認める場合、液体燃料以外の方法で模擬火災を発生させることができる。
 
2.2 模擬火災発生場所
 次の(1)から(3)に掲げる場所において模擬火災を発生させる。(4)及び(5)に掲げる場所については、探知器の位置、通風状態等を考慮して特に必要と認める場合を除き、省略することができる。
(1)主機ディーゼル機関の排気管高温部近傍
(2)主発電機ディーゼル機関の排気管高温部近傍
(3)ボイラ噴燃装置近傍
(4)燃料油処理装置近傍
(5)焼却炉噴燃装置近傍
 
2.3 探知時間
 視認により煙又は火炎が成長したと認められたときから3分以内に探知することを確認する。
 
3 その他
 
3.1 不合格の場合の措置
 所定時間以内に探知できなかった場合には、効力試験中に煙の流れを追跡し、以下のいずれかの方法により探知可能な場所を確認して、探知器の増設・移設を行うこと。この場合、増設・移設した探知器については個別の作動試験を実施するが、再試験は行わない。ただし、探知器の増設・移設場所の確定が困難な場合には、探知器を増設・移設した後、海上運転において再試験を行う。
(1)移動可能なポータブル式探知器を用いる
(2)煙の流れ/滞留を視認する
 
3.2 効力試験の省略
 前2.2にかかわらず、火災探知の効力に影響を及ぼす要素が同一の船舶において、既に機関室内の火災探知警報装置の有効性が確認されている場合は、当該火災探知装置の効力試験を省略して差し支えない。火災探知の効力に影響を及ぼす要素とは次を言う。
(1)機関室の大きさ、形状、船体構造(煙の流れが影響するガーダ、隔壁、フレーム等)
(2)探知器の配置、種類
(3)通風ダクトの配置
(4)機器の種類、型式、配置(主機、発電機、ボイラ、通風機、油系統、高温部系統等)
 
解説
 
1 一般
 
1.1 適用
 本実施要領は、機関区域に設置される固定式煙探知器の船内効力試験に適用する。現在、SOLAS条約で正式に認知されている火災探知器の種類は、煙感知式と熱感知式の2種類である。2.2に示す模擬火災発生場所の近傍においては、一般に光電式またはイオン化式の煙探知器が設置されているので、これらの効力試験に適用する。
 炎感知式の火災探知器については、SOLAS条約で正式に認知されていないので適用外とするが、オプションとして適用するにしても模擬火災の発生方法等を別途検討する必要がある。
 
1.2 試験の時期
 試験の実施時期は、海上試運転における常用出力運転時を原則とするが、航海中における実際の通風状態と同等と認める条件下において試験を行える場合にあってはこの限りではない。
 具体的には、主機T/Cから十分離れた場所においては、停泊時等に通風状態を再現して試験を行っても差し支えない。
 
2 試験の内容
 
2.1 模擬火災
 模擬火災の発生方法について、ISOでは試験室で行えるような試験火災(Test Fire)の方法を6種類規定しており、この中に発煙性の液体火災に対応する試験火災TF5(表2.1.1)がある。これが船舶の油火災に適用できる唯一の国際標準であるが、燃焼試験の結果、図2.1.1のようにヘプタン+トルエンの燃焼は、A重油またはC重油の燃焼よりも火炎が高く1.6m程度となることが明らかとなったため1)、安全性を考慮し、船舶専用の試験火災を規定することとした。
 
表2.1.1 ISO試験火災TF5の内容
燃料 ノルマル・ヘプタンにトルエンを3%(体積%)混合させる。
火皿の大きさ 鉄板製(厚さ2mm)で、大きさ330x330x50mmの火皿を用いる。
燃料の量 ノルマル・ヘプタン+トルエンの混合物を約600g秤量し火皿に入れる。
着火方法 電気的スパークかまたは遠隔自動点火装置で着火させる。
 
図2.1.1 0.1m2オイルパンによる燃焼試験の状況1)
 
A重油(火炎の高さ:1.2m)
 
C重油(火炎の高さ:0.5m)
 
ヘプタン+トルエン(火炎の高さ:1.6m)
 
(1)液体燃料による試験火災
 船舶では重油または潤滑油の油火災の頻度が高いため、重油(A重油またはC重油)をベースとする試験火災を規定した。A重油とC重油の違いについては、燃焼試験の結果、発熱量、発煙量等に大きな違いが見られなかったことから1)、これらの混合比率は任意とした。容器の寸法に関しては、火炎の高さを制限するため直径を200mmとし、船舶の動揺による油の溢出を防止するため深さを200mmとした。また、火炎の高さを制限する目的でフレームスクリーンを使用してもよい。いずれにしても、容器設置位置における天井高さ等、周囲の状況に応じて安全を確認することが重要である。
 安全性をさらに考慮し、重油を十分浸したウェスを用いる方法も認めることとした。この場合、ウェスを上記の容器に入れて燃焼させると重油単独の燃焼と比較して、発煙量が減少すると考えられるので、上記よりも大きな容器を使用して差し支えないが、火炎の高さは0.8m程度以下とすべきである。ウェスの種類や重ね方等の詳細については特に規定しないが、重油を使用しているので燃焼で生じる煙の性質は重油単独の場合に近く、また、火炎の高さを0.8m程度に制限した燃焼規模であれば、重油単独の場合に近い油の量が燃焼するものと考えられる。
 
(2)液体燃料以外の方法による試験火災
 船舶における模擬火災は、本来は実際の状況を想定した前(1)の方法で実施すべきところであるが、一方、重油を用いた火災試験では燃焼で生じるススで試験場所周辺を汚したり、あるいは火炎で上部の電線や配管の塗装等の焼損を起こしかねないので、その意味では好ましいことではない。また、液体燃料を用いる方法では、船の動揺を考慮して試験容器の深さを定めてはいるものの、安全性の観点から容器の設置位置は平らな床面あるいはグレーチング上に限定され、任意の位置に治具を用いて容器を固定することは実質的に困難と考えられる。
 そこで、液体燃料以外の試験火災として、代替措置を認める場合の条件を提示することにした。国際標準であるISO9705に定める装置(図2.1.2参照)の下で模擬火災を発生させ、発熱量及び発煙量等を測定して前(1)の試験火災との同等性が検証された場合、その試験火災を代替と認めることとした。
 例えば、ラクトース40gと塩素酸カリウム40gを混合して前(1)の容器に入れ着火させる方法は、同等の方法と認められる。これらの薬剤は発煙剤の主原料であり、この方法が有効であることは実船においても確認されている2)。薬剤の量に関しては、小型船ではやや多め、大型船では少なめとも考えられるので、実際の火災試験においては機関室の大きさを考慮し、30〜80g程度の範囲で増減しても差し支えない。ただし、ラクトースと塩素酸カリウムとの混合比率は1:1とし、むらなく混合させることとする。
 
図2.1.2 ISO9705に定める排気装置及びサンプリングプローブの位置







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