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最近の造船産業構造の変化に対応した造船技術の共同研究と開発の仕組み及びそのあり方

 事業名 造船技術研究開発課題の調査
 団体名 日本造船研究協会 注目度注目度5


第1部:21世紀における海事運輸チェーン
分野1-造船:競争力と生産性の向上
序論
 船舶と海事施設は、海上輸送とこれへの支援サービス産業にとり、その業務に不可欠な道具である。EUの外国貿易の90%およびEU域内間の交易の約30%が海上、すなわち船舶によるものである。また同時に船舶の製造は、他の産業用海事構造物および関連した部品と同様に、それ自身で重要な産業であり、多数の異なる学問分野における最良かつ最新の科学技術の資産を必要とするものでもある。造船産業におけるシステムエンジニアリングのノウハウは欧州共同体にとり戦略的にも重要なものである。
 輸送のチェーンのライフサイクルには多くの局面があり、これらの局面総てにおいて持続した熱心な研究は、新しい海事産業の種を産む働きをする。また、この研究は船舶の建造、海運産業により提供されるサービス産業においても、その生産性およびコスト削減に寄与するであろう。欧州の海事分野を、欧州の一般的な運輸政策に対して効果的に貢献するようにするには、このような研究が必要である。また世界的規模の競争力を海事産業に持たせるためにも、絶対に必要なステップである。
 船舶と海事施設の建造および海上輸送のサービスにおいては、それらの競争力、生産性と効率性の向上は、相互に大きく関連しており、それ故に同時に取り組まれなければならない。
 高度に複雑な海事システムの設計と建造は、船舶、浮体工場あるいは海底固定式構造物であれ、多くの専門分野にわたる最善かつ可能な取り組みが必要である。
 設計、調達および建造の段階において、全ての関係者が早めにまた協調して活動することが必要であり、これにより、更に高い目標に対する取り組みが出来ることになる。したがって海事システムのライフサイクルのすべての局面での、より競争力のある製品とより高い生産性に繋がることになる。
 船主の経験を早い時期において統合することができれば、より焦点の絞られた設計を行なうことが出来、結果として船舶の建造および運航において役立つことになる。関与者の早くからの参加および彼らとの協働作業は、高度の革新的そして競争力のある解決策をもたらす。
 設計過程においては、実際の稼動経験を総合化することにより、すべての設計ツールを最適化しなければならない。そして個々の要素ツールの信頼性に注目するだけでなく、設計システムとしての信頼性を増加させることが必要である。
 
 このような理由から、設計と生産においては、次の項目に焦点を当てる必要がある:
●単純化(配置と作業)
●強靭性と信頼性
●保守の容易さ
●低人員の要求
 これらは安全および環境にやさしい船舶運航をも背景にしていることを銘記しなければならない。
 したがって焦点を絞ったR&Dで実施される主なことは次にまとめられる:
●設計ツール
●設計方法
●生産工程
●生産技術
 生産効率の向上には3つの主な要素、すなわち、技術、組織および人的要素の統合が必要とされることに注意されなければならない。特に、本質的なコスト削減(30%)あるいは生産性向上(40%)を達成するために、技術的、組織的および労働力等の側面での生産工程シミュレーションが実行されなければならない。このため、異なるシステム間の対応するITのツールとの相互接続性についても、また開発させられねばならない。
 
1.1 設計
1.1.1 設計の道具
 設計工程の開発では、顧客の運用要件を満足し、時間とコストに対し生産を容易にし、また関連する安全−環境基準を満たす、そのような製品を設計することを目的にする。このことは、顧客の運用要件の仕様を設計工程の中に統合するために、その仕様が相互に結合された一連の設計作業に組み込まれるように設計の言葉に翻訳されなければならないことを意味する。一連の設計作業へインプットされなければならないものとして、運用仕様の外に、主な供給者との関係、および様々な製造者からのサービスと、船舶の“生涯を通じた”支援サービスからのインプット、等がある。
 設計工程の開発に含まれるこれらの機能は、船舶の意図された使用のみならず、全生涯にわたり船舶に影響し、あるいは船舶により影響される、すべての局面に対して最適化されなければならない。
 設計者は、重畳する局面間の複雑な相互作用の影響を研究するため、ツールの改善および革新的な道具を作り出すことを必要とする。これは設計作業の際に実質的な利益となり、それにより、設計の時間節約また付加的効率を高めることができるのである。
 
 この分野においては基礎的研究が必要である、それらは次のものを含む:
●設計に関係する物理的性質の改善されたモデリングツール
●製品情報に対するITの仕様およびフィードバックの経験
●実験を置き換えることのできる数値モデルの入手(数値実験室)
 これに加え、市場での納期を短縮すると言う挑戦を満足する必要があるので、これらの全てのツールは開発時間の実質的短縮に貢献しなければならない。
 
初期設計段階でのツール
 総ての重要な境界条件を処理しつつ、一般配置の定義に重点を置く、高度に効率的かつ迅速な設計を補助するツールが開発されなければならない。そのようなツールはモジュール化され、かつ開かれたものでなければならない。例えば、ツールは、カタログ的処理(即ちパラメトリック部分)に対してオープンであるべきである。
 そのようなツールの例は次のようなものである:
●船体形状設計(ラインズシステム、パラメトリックシステム、3Dモデリングシステム)
●性能推定ツール(即ち、操縦性、耐航性、構造応答、推進器設計、損傷時安全性)。流体力学に対する第一原理および全船荷重(即ち波浪荷重)と詳細荷重(スラミング/スロッシュング、または、舵力、またプロペラ起振力)含む有限要素解析による荷重決定
●構造設計のツール(重量および重心の計算を含む)。全体強度、振動と騒音ならびに疲労、局部振動問題の詳細解析等を網羅する有限要素法による設計が含まれなければならない。
●モデリング配置のツール(船システム、構成要素、装置)、これには下請け供給者とのリンクを持つこと。
●組み立て計画のツール(ブロック、組み立て手順)
●建造と修繕のためのコスト推定のツール
 最近のインターフェイス技術および生産モデリングツールを使って、現存のツールは統合化されなければならない。
 ツールの開発はエンジニアリング工程および設計作業の組織とリンクされる必要がある。この意味で、次の課題を扱う必要がある。
●設計工程のリエンジニアリング
●造船所の“Bereitschaft”(準備的エンジニアリング作業)的取り組みを導入する必要がある。この取り組みにより、戦略的かつ戦術的エンジニアリングに沿って、多くの資源を振り向けることができるようにするものである。このために、使用するツールには、各造船独自のものに合わせた項目および独自の推測モデルが含まれなければならない。
●模範となる管理者としての資格を技術者に与える。
 人工知能システム(AI-System)の開発に注意が向けられるべきである。これは、船のシステム、部品、装置、また適用される規則と基準に関する、総ての適切な情報を設計者に与えるものであり、また設計者の経験を取り入れることが出来るシステムである。このシステムの中に保存される知識データの更新は、外部からの直接のデータ移動を通じ、それぞれプロバイダー(当局、下請け供給者、その他)により更新がなされなければならない。
 
流体力学的基礎設計のツールの改善
●定常ポテンシャル流れ現象(造波抵抗、プロペラ)
●定常粘性流体流れ現象(船尾伴流、プロペラ−船体相互干渉)
●過渡現象(耐航性、操縦性、動的復元性)
●自動メッシュ細密化技術による格子生成と乱流モデリング(RANSE Solvers)、船型最適化の数値計算ツールの総合的使用および時間領域における実船の挙動のシミュレーション。
R&Dの努力は、これら問題に特に傾注されるべきである。
上記に関しては、次の事項が考慮される必要がある:
●CAD/CAEおよび応力解析のような他の段階での船舶設計において使用されているものと、CFDソフトとの連携をとること。
●CFDソフトの妥当性を、船の設計と運航を直接関連させるような状況の下での特別に考案された実験に対して、確認すること。
●船体設計および船体建造部門へのCFDソフトの直接応用(アクセス性)の向上。
●革新的計算手法(即ち、RANSE解析法および過渡現象解析コード等)の較正/妥当性の確認を行なうため、実験データを組織的に獲得すること(模型スケールあるいは実船スケール)
 
推進器設計ツールの改善
●現存の模型および実船データに関するデータベースの開発。これらには伴流、プロペラ性能、キャビテーション、騒音および浸食データを含むものとする。
●プロペラキャビテーション(特に翼端渦キャビテーション)、誘起振動、騒音および侵食に関する実験技術(模型と実船)と理論的推定手法の改善。
●伴流およびプロペラ/船体干渉の推定に関するCFDコードの改善/開発。模型と実船スケルに対して特別に実施される実験データによる、コードの妥当性確認が含まれる。
●在来型および先進型推進器のための、知識ベース技法による効率的かつ迅速な設計ツールの開発
●プロペラ/船体干渉、効率および操縦性に主な重点を置いた先進的推進器の流体力学についての理論的/実験的知識の向上。
 
構造挙動に対する予測ツールの改善
 有限要素解析法による船体のような複雑なシステムに対する強度の評価は、非常に正確であり、そして信頼性があるが、数人−月の努力とかなりの熟練が必要とされる。このことは、設計段階を短縮する必要性に関連して、信頼性がありかつ迅速な評価手法とツールが必要であることを意味する。このツールは、船体構造の強度容量を評価できるだけでなく、波、また、プロペラによる誘起される船体構造の動的挙動(振動と変形)および砕氷荷重に関する構造の耐荷重能力をも評価できるものでなくてはならない。
 
1.1.2 設計手法
標準化と新材料の適用
 この分野における研究は次の事項についての低減化を目指す:
●船舶の製造および調達コスト
●保守と修繕コスト(リサイクリングおよびスクラッピングについては1.4.2章で扱う)
●運航コストに影響する船舶の重量低減および部品の品質の改善
●船殻および艤装品における要素の標準化
 船殻および艤装品の要素は標準化される必要がある。また、装置と機能のインターフェイスおよび相互接続を確立する必要がある。これにより、設計段階でのコストと時間を削減し、改良を容易にし、かつ扱い易い運航を可能とする。これらの標準要素はCADシステム(設計カタログ)のデータベースにおいて定義され統合されなければならない。
 これらの要素のパラメータ構成は、技術的要求(強度、船級要求)に従い半自動的に数値が確定される間は、変更してはならない。
 パラメータ化に関しては、船舶の推進機関と貨物取り扱いシステムに対する標準、および一様な設計基準の枠組み、および装置の個々の品目の数およびパラメトリック容量の、適切な選択に基づくべきである。
 
新材料の使用
 新材料の研究では、次の事項に関する性能向上に焦点が当てられるであろう。構造と部品および海上環境の制約を計算に入れて予測される運航条件、船体工作技術、侵食と耐火性および騒音と振動特性の改善、等。
 新世代高張力鋼および特殊合金鋼の使用が、ファイバー部材と同様に、特に注目されるであろう。
 新材料の適用に関する法令の要件は、構造要素、艤装品、機器おおよび機械部品に関して考慮されまた用意される必要がある。
 
安全に関する設計
 全ての安全要素は設計段階で適切に解析されなければならない。これらは次のような事項についてである:
●船舶の構造損傷の頑健性
●船舶の損傷時復元性
●救命の機器
●防火と防護
 
耐損傷設計
 設計の改善により船体損傷に対する頑健性が増加することは、構造安全および船舶の機能および生存期間に影響する構造不具合の生起の可能性、等にとり、有効な結果を持つであろう。
●非損傷時および損傷状態における船体構造の能力を評価する手法が必要である。これにより初期設計の段階で、船舶の損傷許容性を増加するための潜在力について、その経済的影響とともに考究できる。
損傷時復元性
 特に損傷時復原現象について理解するため、およびRoRo船と旅客フェリーの場合におけるような第一原理に基づく規則を開発するために、既存のものと変わりうる新しい設計解決法が必要である。新解決法では、非損傷時および損傷時復元性規則の要件と順守することを示す合理的かつ標準化された扱いの開発が必要とされる。
 これを実現するために、次のことが必要である:
●浸水の力学に対して本質的であるパラメータを研究すること。
●浸水シナリオの模擬およびそのシナリオにおいて船の生存可能性の評価のためツールとして使用可能である数学的モデルを開発すること。
●損傷時復元性の判定における確率論的な技法を応用すること。
 事故の際になされるべき合理的な判定の際に欠けているものの一つにリスク要素がある。損傷時復元性に対するコンピュータ管理システムを開発することで、設計段階において、リスク要素は減少させ得るものである。コンピュータ管理システムは、組み込みセンサーにより状況をモニターしていかなる水漏れも感知し、船の短期的な挙動の将来予測を行い、そして損傷に対応する対応策を作り出すようなことができるものである。いくつかの商業的製品はすでに存在している。しかしながら、さらに概念の一般化および標準化の両方についての開発が必要である
 
防火と保護
 火災は、生命、環境と財産およびその他に関する、海上輸送における主たる危険性の一つであり、設計段階で特別な留意が必要である。この関連において、次の側面が考慮されなければならず、機能的取り組みの中で適切に開発されなければならない:
●複合材の使用
●新規火災消火システムの効果の評価
●火災と煙の広がりのシミュレーション予測のツールの開発および設計段階での異なる防火代替策の評価(この項目は、危険評価のための開発と性能モデルの最も一般的な扱いの下、1.2.2に関連して見られる)
 
旅客船およびRo-Roフェリーに対する救命設備
 これまで、海難事故は救命機器が、特に荒天条件において、必ずしもその目的を果たしていないことを示してきた。防火の局面に既に見るように、この場合においても、機能的取り組みの中で新しい開発がなされることが必要である。それ故:
●次のことを保証する救命システムが開発されなければならない:
○非常に短期間で全ての人員が乗船すること
○船の全ての条件(損傷時)において救命装置の安全な発進
○救命胴着の容易な着衣
●船が航行不可能あるいは停電になった場合に、乗客が早急かつ安全に乗り場に到達できるために、設計時には一般配置が判明していなければならない
●数学的モデルが開発されなければならない。そして特に客船およびRoRoフェリー船については、脱出シナリオの予測、脱出時間および異なる事故想定条件における成功可能性が、試されてなければならない。モデルは安全性評価および脱出路と救命装置の設計研究において使用されなければならない。事故シナリオは危険を引き起こす次の要因に基づくべきである。
○火災
○爆発
○衝突
○座礁
○沈没
 
設計の展開のための正規安全評価(Formal Safety Assessment)
 機能的取り組み制度への規則設定の動きを見るに、正規危険評価に対する方法論を開発することが本質的である。これは規則と標準に関する重要な決定は、包含される危険の組織的評価に基づくということ、またコストと利益に関する情報を考慮に入れるものであることを保証するものである。
 この件に関して、多大な配慮が米国および日本によりなされている。次第に形作られてきている新しい安全制度の発展にEU海事産業が活発に参加することが出来るよう、EUレベルの取り組みが行なわれることが重要である。
 この点に関して、段階的開発取り組みのために次の4つの主な事項が高い優先性がある:
●船の設計のために特別に考慮された危険評価方法の開発
●危険評価ツールの開発と応用
●船のシステム不具合の等級分けの開発
●特定の船の種類あるいは危険に対するプロトタイプ応用によるデモンストレーション
 
危険評価法の開発
 危険評価法を海事産業に無理なく早急に導入できるようにすることを目的とする。これには次の事項を含む:
●船舶の安全性と生存性および利用可能性を評価するため、標準の手法として幅広く認められ、また適用されるような方法論とツールの開発。
●設計および建造段階で採用されるべき危険管理方法の開発。
 
危険評価ツール
 他の産業分野において使用されるため一般的に開発された、現存しておりまた発展しつつある、正規型手法とツールは、船舶安全問題を扱うため特別に修正される必要がある。建造からスクラッピングまでの生涯期間における船舶の実績航海モデルと合理的危険管理戦略(検査を含む)の開発は、この開発事項の一部であり、次の事項を含む:
●火災と爆発、座礁、その他、のような主たる危険要因に関する設計段階での船舶の正規安全評価に対する実績モデル。
●船舶への応用に特化された確率的手法に基づく構造信頼性評価の手法。
●船舶の全ての機能につき適切なレベルの利用可能性を保証し、また保守戦略の合理的計画を許容するため、採用されるべき冗長度基準。
●定量的危険評価ツールに基づく危険防止および管理技術。
●特に航海局面に関係して人間、運航および組織の信頼性に関する危険分析方法とツール。
 
船舶のシステムと機器故障の分類化
 危険評価を実行するために故障データが絶対的に必要であるという認識がある。これは必ずしもそうではない。しかしより多くのデータが利用できればそれに越したことは無い。この状況を改善するため、船舶運航者と機器製造者および船級協会の両者の助けを受け、データが収集されなければならない。
 
プロトタイプ応用例による実証
●国際的な導入を目途として、船舶設計へ危険分析の原理を応用するという、共通したEUの取り組みを発展させるため、特に指定した船種および危険要因についての納得されるプロトタイプの応用例を提供することが必要である







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更新日: 2019年8月10日

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