日本財団 図書館


ごあいさつ
 「教育・研究図書有効活用プロジェクト」は、日本の大学、企業・研究機関などの図書館や出版社などのご協力により図書を提供していただき、これらの図書を希望する中国をはじめ、アジア近隣諸国の大学や研究機関に寄贈し、学生、教職員及び研究者による活用を通じて、国際間の学術交流の促進と友好親善の増進に貢献するものであります。
 当面は、中国の大学を対象として実施しております。
 こうした趣旨について、大学や企業、出版社その他多くの方々のご理解をいただき、1999年のプロジェクト開始以来これまでに1,111,000冊(平成15年度405,000冊余)の図書の提供を受けることができました。
 これらの貴重な図書については、特色ある大学図書館の形成を支援するという基本方針に基づき、分野及び内容等を整理・選択し、中国の寄贈対象大学と調整のうえ寄贈しており、平成15年3月までに約940,000冊余の図書を送付いたしました。
 今年度は、寄贈対象大学に中国の4大学を新たに追加し、17大学に対して年間合計で416,000冊余の図書を寄贈いたしました。
 ここに、平成15年度事業の実施状況等をとりまとめ、報告書を作成いたしましたので、皆様のご批評を仰ぎ、このプロジェクトの発展に活かすことができれば幸甚に存じます。
 日本科学協会は、所期の目的達成のため大いに努力する所存でありますので、これからも引き続きご支援賜わりますようお願い申し上げます。
 最後に、本プロジェクトの推進に全面的ご支援を賜わっております日本財団をはじめ、図書を提供していただいた方々並びにプロジェクトの推進にご協力いただいております関係各位に対しまして、深甚なる謝意を表するものであります。
 
平成16年4月
財団法人 日本科学協会
理事長 濱田隆士
 
平成15年度「教育・研究図書有効活用プロジェクト」事業報告書
はじめに
 本事業の目的は日本の出版社や企業、大学・研究機関及び一般の方々から提供された図書を中国などのアジア近隣諸国の大学・研究機関等に寄贈し、教育・学術研究への活用を通じ、相互理解の促進と友好親善の増進に貢献することである。
 今年度は、1999年開始以来の4年間の成果を踏まえて、日中両国関係者の協力を得て、日本国内で405,000冊(累計1,111,000冊)の図書を収集し、中国の17大学に対して416,947冊(累計942,857冊)の図書を寄贈した。
 本プロジェクトの図書収集から寄贈、更に、その後のフォロー・アップについて次のとおり報告する。
 
1. 図書収集
1)図書の収集活動
 図書収集は下記の方法により、日本国内の出版社や企業、大学・研究機関及び一般の方々に図書の提供を呼びかけた。
 
(1)出版社への依頼
 新刊図書を収集するため、主に関東地区の出版社に対して本協会理事長、日本財団会長の連名で図書提供への協力依頼状を送付した。8月に171社宛、2月に192社宛で2度の図書提供依頼を行ったが、結果的には年度内に計22(前年度19)社から約30,600(前年度21,500)冊の図書提供を受けた。前年度実績と比較すると同種類のものが多かった。しかし、提供社数、提供冊数は増加した。
(2)専門図書館協議会の会員への協力依頼
 関東・関西地区の専門図書館協議会事務局を通じ、会員(関東地区・400機関、関西地区・100機関)に対しFAXによる図書提供の協力依頼を8月と2月に実施した。両回で合せて28(前年度30)機関からの反響を得、提供冊数は35,000(前年度24,000)冊であった。前年度実績と比較すると、提供機関は減少したが、提供冊数は増加した。
(3)公立図書館等への協力依頼
 本協会が実施する科学研究助成に係る募集ポスター等資料の関係機関への配布に際し、全国の都道府県立、市・区立図書館445館(前年度434館)に対して文書による図書提供依頼を行なった。これにより約179,000冊(前年度20,000冊)の図書を収集した。収集冊数が大幅に増加したのは一箇所の図書館が閉鎖による約150,000冊の提供があったためである。
(4)報道機関の協力
 2000年、2001年は毎日新聞の全国版に掲載された本プロジェクトの紹介記事による大きな反響があり(図書提供 延べ208件、38,600冊)、収集実績の向上に大きく貢献したが、この記事関連で本年度まで引続き提供されるケースはあり、新規に提供されるケースもあった。引続き提供してくれる個人には毎年提供してくれる熱心な提供者も複数いる。今年度の個人の提供件数は延べ82件(前年度延べ114件)と大幅に減少したものの、その多くは前述の毎日新聞関係、2002年の東京新聞記事(日本財団経由)など報道機関等を通じた図書提供の呼びかけに対する反響であり、マス・メディアの影響力は大きい。
(5)業務委託先の協力
 本プロジェクトは図書の整備から輸出までの一連の業務に関してトランクルーム業者(3社)と契約を締結し業務委託を実施しているが、この3社は本プロジェクトの趣旨等を取引先に紹介し図書の提供を依頼するなど委託業務外の協力活動を積極的に行なった。この活動によりプロジェクトの認知範囲が広まり、図書収集実績も向上し広報、収集の両面で大きな貢献をした。委託業者経由による図書の収集実績は、延べ17機関から提供された37,000冊(累積311,800冊)である。
(6)既提供者への継続的な図書提供の協力依頼
 継続的な提供を電話又はEメールにより依頼した。
(7)関係者を通じての協力依頼
 
2)図書収集実績
 前記1)による収集活動を行った結果、次のとおり協力が得られ、405,000冊の図書を収集した。
 
提供者ごとの収集冊数
提供者区分 冊数(A) (A)の全体に占める割合 提供者数(B) (B)の全体に占める割合
企業図書館 21500 5% 32 19%
大学図書館 29600 7% 13 8%
出版社 30600 8% 21 13%
公共機関 288000 71% 23 14%
公益法人 26100 7% 28 17%
個人 9200 2% 48 29%
合計 405,000 100% 165 100%
注)提供者数は重複しない。
 
※・提供者一覧表(別添1
・図書収集実績(405,000冊)(別添2
・トランクルーム業者経由による収集実績 延べ17件 37,000冊
・収集図書全体の中で、新刊図書或いは新刊図書と同様な図書は36,000冊である。(出版社提供分を含まない)
 
3)収集図書の分野
 収集した405,000冊の図書の分野を大別すると下記の表のとおりである。人文系が360,000冊で89%、理工系が23,000冊で6%、医学系が22,000冊で5%であり、人文系の分野が圧倒的に多かった。
 
  冊数(A) (A)の全体に占める割合 提供者数(B) (B)の全体に占める割合
人文系 360,000 89% 264 86%
理工系 23,000 6% 24 8%
医学系 22,000 5% 18 6%
合計 405,000 100% 306 100%
注)提供者数は延べ人数である。
 
4)活用率の向上
 収集図書の活用度
の向上及び質の確保を図るため、できる限り図書提供者に下記のような協力を求めて収集した。
 
(1)提供図書の冊数が大量の場合、事前に提供者の了解を得、現場において寄贈図書を選定のうえ収集した。
(2)図書提供リストのある場合は、事前に入手しそれに基づき選定のうえ、収集した。
(3)主として個人提供者に対しては、寄贈対象図書の基準(内容、発行年、外観等)を説明のうえ、それに沿った図書の提供を依頼して収集した。
(4)基本的に図書の提供は提供者の“善意”に因るものであり、寄贈される図書は「内容の充実した綺麗な図書を」という配慮を以って寄贈されたものであるが、それらを本会の「業務マニュアル」に基づきさらに精選することにより、活用率は概ね95%を確保している。
 
2. 寄贈対象大学の追加
 プロジェクトが一定期間継続されると、収集図書における重複(同一図書、同種図書等)傾向は顕著となり、受入大学確保の困難、収集図書の活用率の低下を考慮すると、このことは無視できない現象となってきた。そのまま寄贈対象大学を既定の13大学に限った場合、収集図書の有効活用は期待し難く、プロジェクトの健全なる発展を図るため寄贈対象大学の追加を実施した。
 追加大学の選定にあたっては、現寄贈対象大学の推薦、既存資料の調査による下記の5大学を追加候補として現地調査した。
 推薦大学は、哈爾浜医科大学→牡丹江医学院、黒龍江大学→黒龍江東方学院、中国医科大学→大連医科大学、大連外国語学院→遼寧師範大学、東北師範大学(既存資料の調査による)
 上記の5大学については現地調査を行った。その結果、牡丹江医学院、黒龍江東方学院、大連医科大学、遼寧師範大学は日本語教育には力を入れているものの、設立後、日が浅いことと地理的に不利な条件から日本関係の図書は殆んどないに等しい状況であった。こうした現状と大学側の図書寄贈に望む熱意を考慮し、これらの4大学を新たに寄贈対象大学に追加し、日本科学協会と黒龍江東方学院、牡丹江医学院、大連医科大学、遼寧師範大学の4大学との間で図書寄贈に関する覚書を締結した。
 東北師範大学については、日本関係図書は既に10万冊があり、図書調達体制なども充実していること等を考慮し、追加大学に選定することはできなかった。
 追加大学に対する寄贈方針は、既定の10大学への寄贈を核に、重複した図書(既に寄贈済み等)を単発的に寄贈するというもので、本年度の4大学に対する寄贈実績は24,625冊である。







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