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(28)マイクロ波散乱計による海洋観測
―その2 海面状態とマイクロ波散乱の関係―
林昌奎、小林豪毅、山西一臣(東京大学)
 
 海洋リモートセンシングの基本となる海面におけるマイクロ波散乱現象を理解するために、実験水槽において系統的な計測を行った。本研究は海面状態を表すパラメータとマイクロ波散乱との関係を解明することを目的とする。そのため、マイクロ波の主要な散乱体である風波の高周波数成分について、吹送流の影響を含めて詳細な検討を行った。風によって形成される海面においては、マイクロ波散乱のパラメータである散乱係数、平均ドップラー周波数、ドップラーバンド幅は、それぞれ水面状態のパラメータである摩擦速度、平均波速、軌道速度に関係していることがわかった。
 
ドップラースペクトル
 
 
ドップラーバンド幅の変化
 
大澤弘敬、宮崎剛(JAM STEC)、
緒方輝久(IHIMU)、
竹内孝之、岡山修三(富士電機システムズ)
 
 海洋には自然エネルギーの複合化によるエネルギーの平滑化が可能な条件が揃っていると考えられる。そこで沖合浮体式波力装置「マイティーホエール」を用いた波力発電と太陽光発電との複合発電システムの実海域実験を行い、自然エネルギーのハイブリッド化による、エネルギー平滑化の可能性について検討を行った。検討の結果、波力発電と太陽光発電は相互に補完し得るものであり、波力発電と太陽光発電のハイブリッドシステムは自然エネルギーによる発電量の平滑化を行う上で効果的なシステムとなり得るという結論を得た。
 
波力発電出力電力と太陽光発電出力電力の時系列による比較
 
金湖富士夫(海上技術安全研究所)
 
 海難データに不確実さが存在し、それらに基づくリスク評価に関係者間で違いが存在する場合に、不確実さを合理的に評価し合意形成に役立つ手法を提案した。1つは、ある安全対策が実際にリスク抑制に効果があるかどうかの統計的検定方法であり、他の1つは原因不明事故がある場合の原因推定方法である。後者ではベイズ理論を応用し、複数考えられる原因による事故数を合理的に推定する手法を開発し、同手法により原因不明事故が多発しているバルクキャリアの構造損傷の主原因として考えられる4種類の原因による事故数を推定した。
 
ハンディ型バルクキャリアのハッチカバー
関連事故数推定値の確率密度関数
 
福地信義、篠田岳思(九州大学)、施雨湘(武漢大学)、
田中耕平(ABS)、胡長洪(九州大学)
 
 造船内業工場における溶接・切断作業時に発生する金属ヒュームは労働衛生上問題となることが多い。大容積の内業工場の換気装置は大規模となるために、高効率の換気システムが求められる。このため、船殻工場の3次元模型を用いて、漏煙試験用発煙を金属ヒュームと見做したヒューム流動可視化実験を行い、さらに二層ゾーンモデルによるヒューム拡散状態を解析し、工場天井の形態と換気ファンの配置が換気効率に与える影響を調べた。また、自動切断機の稼動時間を模した発煙を仮定して、ヒューム拡散の状態解析を行い、換気口位置、換気ファンの設置数などとヒュームの滞留状態や熱量の関係を明らかにした。
 
換気ファン数とヒューム層厚の時間変化の関係
 
岸光男(大阪府大)、梁永淳(ソウル大学)、
渡辺敦彦(三菱自工)、Tri Achmadi(スラバヤ工大)
 
 造船市場において過度の価格競争を抑制するための方策として、造船発注の選択権である新造船オプションを集中市場で取引する制度を提案した。市場でオプションにプレミアムが付加されれば、船価の下支えにつながる。実験経済学の方法論を導入し、市場取引を模擬したゲームを加害的廉売のシナリオのもとで被験者集団にプレイさせ、提案制度の有効性を調べた。その結果、新造船オプション市場制度について、価格の下支え、買手側の流動性リスクの軽減、取引当事者間の信頼醸成、の効果を確認した。
 
市場ゲーム実験結果
 
鷹尾潤、福地信義、胡長洪(九州大学)
 
 機関室火災における火災感知・消火活動・避難などの火災安全設計のために、灯油および軽油を用いた燃料支配型プール燃焼時の煙生成と煙濃度・減光係数に関する計測実験を行った。これにより、油燃焼と発煙特性の関係を調べ、煙感知や避難・消火時の視程などに係わるデータを得た。また、方形空間モデルにおいて発煙剤による煙拡散模擬実験を行い、油燃焼煙と発煙剤の関係および煙拡散状態と濃度分布を調べた。さらに煙拡散・濃度に関する数値解析を行って実験と比較し、微細粒子による固気混相流である煙の流れを気相流としての扱いが可能であることを示した。
 
煙の重量濃度と減光係数の関係







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