日本財団 図書館


論文概要
論文集193号掲載論文概要
 
(1)バルジによる漁船の船型改良について
川島敏彦(水工研)、芳村康男(北大)
鈴木四郎(水工研)、大本耕司(北大)
 
 漁船の復原性能改善のためバルジを取付ける場合があり、北大漁業練習船「うしお丸」に対し、船体延長、バルジ装着を主とする改造が行われた。著者らは本基本計画において推進性能に関する検討を行った。この過程でバルジによる造波抵抗軽減の現象を示し、そのメカニズムを明らかにした。ついで造波抵抗を評価関数とするバルジの最適形状を求めた。数値計算、模型実験、実船実験より本検討の妥当性を示した。
 
バルジの造波抵抗に及ぼす作用
 
坪郷尚(大阪府立大学)
 
 本研究では、浮体構造の剛性分布を取り扱えるFEM用1次元流力弾性要素を開発し、これを用いたいくつかの波浪応答解析例を示した。本要素を用いる場合、高周波域においても要素分割を増やせば安定した結果が得られることがわかった。VL300とVL15を例に波浪応答を調べたところ以下のような結果が得られた:同じスケールで比べた場合、相対的に剛な浮体の方が応答値は小さいといえる。波浪応答の極大値は存在するが、共鳴現象はおきない。浮体中央部での曲率の大きさには上限があり、概ね


で、極大値の大きさはほぼ一定となっている。
 
 
正信聡太郎、加藤俊司、前田克弥、難波康広(海技研)
 
 カーテンウォール式付加構造物に適切な幅のスリットを設けた波エネルギー吸収装置を開発し、本装置がメガフロートの弾性応答の低減効果を維持しつつ定常波漂流力の増大を抑制できることを実験的に確認した。さらに、岸壁及び海底起伏のある浅水域に設置された波エネルギー吸収装置付きメガフロートの規則波中弾性応答解析を行って浮体の上下加速度応答を推定した。実海域実証実験を実施して、上下加速度を計測して推定結果と比較することによって、本応答推定法が有効であることが確認された。
 
上下変位の低減効果
 
(4)ドルフィン係留された超大型浮体式海洋構造物の地震時挙動(第2報)
―実地震波形の場合およびドルフィン・フェンダー間に間隙が存在する場合について―
渡辺 喜保(海上技術安全研究所)
 
 ドルフィン係留された超大型浮体に対し、地震波形として実地震波形を使用し、浮体の面内変形を考慮し、地震波の周期および速度を変化させた時刻歴応答解析を行い、浮体の変位、フェンダー反力及びドルフィン反力と地震波周期の関係等を求めた結果、前第1報において正弦波形を使用して得た結論が正しいことが確認された。更に、フェンダー・ドルフィン間に存在する間隙が超大型浮体構造物の地震応答におよぼす影響を調べた結果、浮体のsway,yawおよび2節弾性振動モードでの共振が発生しなくなり、フェンダー反力が大幅に低下すること等を示した。
 
フェンダー反力と実地震波周期の関係(間隙が0mと0.4mの場合)
 
(5)数値重み関数法による構造解析手法の開発
―2次元弾性および平板構造解析の定式化―
角 洋一、A.T.M.M.Anowarul Bashar、川村恭己(横国大)
 
 重み関数法は1970年代にき裂の応力拡大係数解析への適用を目的として研究された手法である。本研究では、構造形状と幾何学的境界条件のみに依存する固有のベクトル場としての重み関数が、一般の構造応答、即ち評価点の変位や応力の計算にも適用可能なことを示す。重み関数と荷重ベクトルの内積は評価点における応答を与えるので、特定の応答評価点に対して多数の荷重系を扱う必要のある場合、本手法の有効性が高い。本論文では、2次元弾性、板曲げ及び3次元板骨構造問題の重み関数手法を力対系に対する変位場をもとに定式化し、汎用構造解析コードと組み合わせたシステム化を行う。さらに、数値計算では重み関数算定精度の検証を行い、本手法の有効性を示す。
 
力対変位場による重み関数の算定
 
(6)船体構造部材の疲労強度評価のための嵐モデルについて
(第1報 想定波浪頻度表に適合した嵐モデル)
河辺 寛、岡 修二、岡 正義(海上技術安全研究所)
 
 従来は就航海域の波浪出現頻度表と嵐モデルとはそれぞれ前者は波浪荷重の長期分布を計算するためのもの、後者は疲労亀裂進展計算のベンチマーク波浪として別々の強度評価の海象モデルに使い分けられていた。しかし、船舶の就航中に作用する波浪荷重は、その就航海域の海象の統計特性に起因するものであり、波浪荷重の長期分布を計算するための想定海象の波浪出現頻度表と嵐モデルの海象を全て合計した全海象とは一対一の関係になければならない。本研究は船舶の就航海域の長期海象発現頻度表に対応するように嵐モデルをシミュレートする方法を提案するものである。
 
遭遇短期海象のシミュレーション結果







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION