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II 海上安全信仰の断面
 
8 トロブ・亀ヶ首遺跡出土品
 玄海灘に浮かぶ沖ノ島に代表されるように、孤島や岬など海の要衝に、祭祀遺跡が残されている。そこでは祭祀が行われるとともに、航海の無事を祈願してさまざまな祭器が埋納されてきた。倉橋島の東に突き出た岬にあるトロブ遺跡も、その一つと考えられている。ここからは、須恵器が発見されている。近くの亀ケ首からは、明治時代に海軍の施設を作る際、4枚の和同開珎が枝銭の状態で出土した。これも祭祀のひとつとして埋納されたものという説がある。
 
トロブ遺跡出土の土器類
 
亀ヶ首出土の和同開珎
 
9 木札(文久3年・1863 嘉永7年・1854)
 江戸時代の帆船の航海は、まさに天候次第であった。時に起こる暴風雨など自然の猛威の前には当時の造船技術・航海技術は無力にも等しかった。そこで船では平常から、神仏への祈願を怠らず、加護を受けるために船内に船玉の他に神棚・仏壇を設け、複数の神仏を祭った。
 下は、倉橋島の中腹にある真言宗白華寺の加護を願う木札である。白華寺の本尊の十一面観音像は、鎌倉時代のもので、県指定重要文化財に指定されている。
 
 
10 長谷河内社船模型
 長谷地区の西側山中の中腹に有る河内神社に奉納されたもので、拝殿の右側に吊り下げられている。奉納年代は不明であるが、水押の形、細長い船形から商船でなく、関船を模したものと考えられる。
 
11 奉納船模型
 鹿老渡の伊勢社に奉納されていた模型船である。鹿老渡は、瀬戸内海航路が沿岸航路の地乗りから沖合いを直線で進む沖乗りに移り、周防上関と蒲刈三ノ瀬の間の潮待港として栄えた。朝鮮通信使も荒天を避けて入港、上陸したことがある。伊勢社はその鹿老渡の南側の小高い崖の上にあり、海上信仰に関する奉納物が多い。この船模型は、大柿の廻船問屋角屋が奉納したと伝えられる。船は奴船(ドフネ)と呼ばれ、本船と陸を通っていた船である。
 







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