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II-3 油および杉樹皮製油吸着材の微生物分解処理実験
 
 本調査研究が最終的に目指すものは、生分解性油吸着材の微生物分解処理技術およびシステムの確立である。その場合の実用モデルとして考えられる例は、油濁発生現場から運搬されてきた使用後の油吸着材を、「閉鎖された空間」において必要量の微生物、栄養源、および活動に適した環境を与えて、速やかに分解処理を行い、安全基準範囲内に達した残留物を環境(例えば土壌)に戻す、というものである。
 この「閉鎖された空間」に、バーク堆肥製造工場における微生物活動ヤードをそのまま適用することがモデルとして考えられる。このモデルの可能性を検証するべく、II-1に概要を述べる昨年度実施の小規模フィールド実験(堆肥全量で約10m3、攪拌無し、知覚試験のみ)をもとに、今年度は実用レベルに至る中途段階のいわば「中規模フィールド(同36m3、攪拌有り、油分濃度測定有り)」にて実験を行った。昨年度に比べ、より実用に近い段階のものである。
 
1 実験の方法
(1)概要
 バーク堆肥(約1年発酵段階のもの)中に吸油後の油吸着材を埋め込み、円錐形パイル状に被覆した後、定期的に攪拌(切り返し)を行い、油分濃度の変化を調査した。
 用いた油はC重油180kgで、製品版の「杉の油取り」マット(45cm x 45cm)に、1枚あたり1kgを吸着させたものを合計180枚用いた。バーク堆肥はホイールローダのバケットで容積を計量した約36m3ほどを用いた。嵩比重が約0.5であることから約18tであると推定される。パイルの形状はやや膨らんだ円錐状で、上面φ2m、底面φ5m、高さ3.5m程度となった。当初の油分濃度は1%と推定される。
 攪拌はパワーショベルなどの重機を用い、バーク堆肥パイルの上側からすくい取ったものを隣接するサイトに順次移動させる方法で行った。頻度は約2週間に1回であり、この際に油分測定のためのサンプリングも同時に行った。
 
(2)吸着マット投入の方法
 以下の手順に従って、吸着マットをバーク堆肥パイルに埋め込んだ。
(1)大型容器(ドラム缶)を計量する
(2)大型容器に吸着マットを入れる
(3)大型容器に計量したC重油を注ぎ、吸着マットに吸着させる
(写真−II.3.1)
(4)吸油後の吸着マットを大型容器から取り出し各パイル断面に規定枚数並べる
(写真−II.3.2)
(5)大型容器の減量分を計量する
(6)パイル断面に吸着マットを並べ終わるとバーク堆肥で規定の間隔(高さ)だけ被覆し、順次上のパイル断面に移り、同様の作業を行う(図−II.3.1)
(7)結果的に規定枚数で規定油量がほぼ全て吸着されるように途中で微調整する
 
写真−II.3.1 
C重油を吸着マットに吸わせる様子
 
 
図−II.3.1 
バーク堆肥断面への吸着マット設置の概念図
 
 それぞれの断面に、外輪縁を50cmあけ、中央部に重ならないようにマットを置く。枚数は、上の断面から順に、14, 17, 21, 25, 29, 34, 40枚(合計180枚)とする。
 
 
写真−II.3.2 
パイル断面に並べた吸着マットを被覆する様子







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