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III-6 各防除シミュレーションのまとめ
 今年度のシミュレーション計算は、次の3つの事項についてそれぞれ計算条件を設定して実施した。
 
1 計算事項
(1)拡散・漂流・風化シミュレーション
(2)スキマーによる油回収防除シミュレーション
(3)分散剤による分散防除シミュレーション
 上記の事項に対する主な計算条件は、次のとおりである。
2 計算条件
(1)風速
 風速0m/s, 5m/s, 10m/s
(2)海流・潮流データ
 吹送流のみとした
(3)波浪データ
 風条件で発生する波浪
(4)流出油の種類
 マリブライト原油、カフジ原油、C重油
(5)流出油量
 100kl, 500kl, 1,000kl
(6)流出の形態
 瞬間流出
(7)スキマーの種類等
 フォイレックス TDS-250(堰式) 1台
(8)掃海速度(V)、掃海幅(B)、油層厚さ(t)、薬液タンク量(Q)
 V=1knot、b=12m幅、t=0.1mm以上、Q=400l
(9)分散剤の空中散布
回転翼航空機 1機
散布幅 11m
散布速度 20knots
対油散布率 2%
散布量 油層厚 0.2mm 27l/min
1.0mm 136l/min
2.0mm 272l/min
 
3 計算結果
 計算結果の一例として、マリブライト原油、流出油量100kl、風速0m/sの計算条件による各防除シミュレーション(ケース1、ケース37及びケース55)の計算結果を図III-6.1abc、表III-6.1及び図III-6.2abに示す。
(1)無対策に対する各防除の拡散幅
 拡散幅の幅は狭いほど、海上の油量が少ないことを意味する。図III-6.2bに示す図によると、油流出の72時間後では分散剤防除では無対策の87.5%、スキマー防除では68.2%幅が狭くなっている。
 前述したように分散剤防除は初日の6時間、スキマー防除は3日間の計29.5時間と防除作業時間が異なることから直接の比較はできないが、いずれの防除方法とも無対策より拡散幅が減少している。
(2)無対策に対する各防除の拡散面積
 事故発生から72時間経過後の拡散面積(図III-6.2b)の比を見ると、分散剤防除で76.4%、スキマー防除では46.6%に減少している。
 (1)項で述べた防除作業時間の問題があるが、各防除とも効果の高いことが分かった。
(3)無対策に対する各防除の油量(海上)
 分散剤防除は、初日の6時間しか防除作業は実施していないが、海上の油量(72時間後)が69.0%に減少している。防除作業は事故発生から9時間後に終了しており、その後漂流を続けながら流出油に水が入り込み体積が増加していることを考えると、分散剤の初期対応による分散効果が高いことが分かった。
 また、スキマー防除は、合計29.5時間の油回収で72時間後の海上油量が41.7%に減少しており、無対策の海上油量126.6m3と比較して有効な防除手法であることが分かった。
 
 以上の防除作業は、各防除資機材がそれぞれ1台による計算結果である。
 この計算結果から次年度の課題点を抽出すると次のとおりである。
 なお、シミュレーション計算は、流出事故発生から約60時間で海上の流出油を全量措置することを想定した計算案である。
 
a 流出油量−拡散面積等−防除資機材の使用台数の関係を明確にする。
 すなわち、流出油事故発生から経過時間毎に拡散面積、油層厚さ、流出油の物性等の変化を把握しつつ、最善の防除措置を実施する。
b 油防除の使用資機材の運用に関するデータを実海域に合わせて検討する。
 例えば今年度におけるスキマーの油回収ステップ、あるいは分散剤散布のステップ等を確立する必要がある。
c 次年度は、複数の油防除資機材による防除作業の運用、操作方法を調査する。
d 異なる油防除資機材の同時運用に関する調査を、流出油量ベースにシミュレーション計算を行い、実海域での運用に関する基礎資料を得るものとする。
 
図III-6.1a 各防除シミュレーションによる流出油の拡散状況
ケース1(無対策:マリブライト、100kl流出、風0m/s)              W: 拡散(km)
ケース37(スキマーによる回収防除:マリブライト、100kl流出、風0m/s)  A: 拡散面積(km2
ケース55(分散剤による分散防除:マリブライト、100kl流出、風0m/s)   Q: 油量(kl)
 
図III-6.1b 各防除シミュレーションによる流出油の拡散状況
ケース1(無対策:マリブライト、100kl流出、風0m/s)             W: 拡散幅(km)
ケース37(スキマーによる回収防除:マリブライト、100kl流出、風0m/s) A: 拡散面積(km2
ケース55(分散剤による分散防除:マリブライト、100kl流出、風0m/s)  Q: 油量(kl)
 
図III-6.1c 各防除シミュレーションによる
流出油の拡散状況
ケース1(無対策:マリブライト、100kl流出、風0m/s)  W: 拡散幅(km)
ケース37(スキマーによる回収防除:マリブライト、100kl流出、風0m/s)  A: 拡散面積(km2
ケース55(分散剤による分散防除:マリブライト、100kl流出、風0m/s)  Q: 油量(kl)







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