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3. フィジー
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3-1. 概況
 フィジーはオーストラリアのシドニーの北東約3,000km、及びハワイの南西5,000kmに位置している。同国は300以上の島々から成り立っており、その人口と経済活動のほとんど全てが、ヴィチレブ島とバヌアレブ島の2つの島に集中している。総人口は約80万で、20万人以上が首都のスバに住んでいる。人口の約46%はインディアンの家系で、残りは大半がフィジー民族である。また、オーストラリアやニュージーランド、及び他の国々から移り住んだ人々で構成された大規模な地域社会がある。
 
 約100年に渡って英国の植民地であったが、1970年に独立した。しかし、1987年には、インド系(19世紀に英国が労働者として移民させた)が政府を支配していることに不満が高まり、二度の軍事クーデターが起こり、民主化路線は中断された。1990年には、土着のメラネシアンを優遇する憲法が制定されたが、これによりインド系住民の多くが流出。経済的には打撃となった。その後、人種差別的と批判のある90年憲法の見直しが検討され、97年7月に憲法修正案が可決、承認された。99年5月の総選挙では、労働党を中心とする野党連合「国民の連合」が大勝し、労働党のチョードリー党首が初のインド系の首相に就任したが、2000年5月、フィジー系フィジー人の政治的優位の強化を主張するフィジー系実業家・スペイトが率いる武装グループが議会を占拠し、首相ら閣僚30名を拘束する事件が発生。軍が行政権を掌握し、憲法を廃止、7月、イロイロ、セニロリ暫定正副大統領が就任。同月、ガラセを首相とする暫定文民政権が発足。11月、ラウトカ高裁が憲法は有効であり暫定政権を違法とする判決を下し、2001年3月、控訴裁も右判決を支持した。同月、イロイロ、セニロリ暫定正副大統領が憲法に基づきGCC(伝統的社会指導者大会議)の任命を受けて改めて就任。ガラセを首相とする選挙管理内閣が発足。2001年8月25日一9月1日に総選挙が実施され、9月10日、ガラセが首相に就任し、政権は一応安定した。しかし、同政権には、「下院において10%以上の議席を占める政党は全て内閣に招請される」旨の憲法の規定にも拘らず労働党議員が1名も含まれていないため、労働党はガラセ政権の合憲性に疑義ありとして提訴した。違憲判決が二審にわたりなされ、最終審である最高裁は、2003年7月に、ガラセ首相に労働党を含めた内閣を作るよう命令を出した。8月現在、ガラセ首相と労働党は組閣の構成について協議している。
 
 経済面では、アジアの経済不振、長期に及んだ未曾有の干ばつで打撃を受けた上に、2000年のクーデターはさらに大きな打撃となり、特に観光産業、衣料産業は深刻な被害を受け、99年のGDP成長率は8%以上を記録したのに対し、00年はマイナス2.8%と大きく落ち込んだ。しかし、01年の総選挙後、政情が安定化するに従い徐々に国際社会よりの信頼が回復し、経済活動も落ち着きを取り戻しはじめ、同年の経済成長率は4.3%、02年は4.4%の成長を記録した。特に、観光産業の回復は著しく(00年29万人が02年は約40万人)、03年は、南太平洋スポーツ大会の開催もあり、さらなる観光客が見込まれ、観光産業がフィジーの経済発展の牽引役となると見られている。また、政情の安定化に伴い、ホテル等の多くの大型建築プロジェクトも着工しており、建築業界も好調である。
 
 また、フィジーの大きな排他的経済水域(EEZ)では、マグロや他の深海魚が豊かである。同国の水産業は、主に日本市場へのマグロの輸出が大きく貢献し、輸出において第4位を占めている。40隻以上の延縄マグロ漁船がフィジーの領海で活動し、国有の太平洋漁業会社(PAFCO)はマグロの缶詰めとマグロの加工品を輸出している。
 
 しかし、長年にわたりフィジー経済を支えてきた砂糖産業は、工場の放漫経営、輸送手段及び機械の老巧化等の問題に加え、フィジー系土地所有者とインド系農民との間の農地リース問題が政治問題化する等、解決すべき問題が山積みとなっており、多額の累積赤字を抱え、出口の見えない深刻な状況に陥っており、ガラセ首相自らが政治生命を賭け砂糖産業再生に乗り出しており、今後の成り行きが注目されている。
 
一般事情
1. 面積 1万8,333km2(四国とほぼ同じ大きさ)
2. 人口 85.4万人(00年フィジー政府統計局)
3. 首都 スバ(16.5万人、96年調査)
4. 人種 フィジー系(51.0%)、インド系(44%)、その他(5.0%)(98年調査)
5. 言語 英語(公用語)の他フィジー語、ヒンディー語を使用。
6. 宗教 フィジー系はほぼ100%キリスト教、インド系はヒンズー教、回教。全人口に占める割合はキリスト教52.9%、ヒンズー教38.2%、回教7.8%(86年調査)
政治体制・内政
1. 政体 共和国
2. 元首 ラトゥ・ジョセファ・イロイロ(Ratu Josefa Iloilo)大統領(2001年3月就任)
3. 議会 2院制上院:32議席、任期5年(解散あり)。また、下院解散時には上院も解散。
下院:71議席、任期5年(解散あり)
4. 政府 (1)首相
ライセニア・ガラセ(Laisenia Qarase)(2001年9月就任、兼フィジー系問題担当大臣2002年9月より、文化・遺産大臣、国民和解・統一大臣を兼務)
(2)外相カリオパテ・タボラ(Kaliopate Tavola)(2001年9月就任)
経済
1. 主要産業 観光、砂糖、衣料が三大産業
2. GDP 1,979.8百万米ドル(02年フィジー準備銀行)(予想値)
3. 一人当たりGDP 2,072.5米ドル(02年フィジー準備銀行)
4. GDP実質成長率 4.4%(02年フィジー準備銀行)(予想値)
5. 物価上昇率 1.6%(02年フィジー準備銀行)(予想値)
6. 貿易総額 (1)輸出 530百万米ドル(01年フィジー準備銀行)
(2)輸入 783百万米ドル(01年フィジー準備銀行)
7. 主要貿易品目
(01年暫定値)
(1)輸出 衣類、砂糖、金、魚類、木材チップ
(2)輸入 機械・輸送機器、工業製品、食料品、雑貨品、鉱物燃料、化学品
8. 貿易相手国
(02年)
(1)輸出 1.豪、2.NZ、3.英、4.日本、5.米
(2)輸入 1.豪、2.NZ、3.シンガポール、4.日本、5.米
9. 通貨 フィジー・ドル(F$)
10. 為替レート フィジー・ドル=0.4360米ドル(02年1月)
二国間関係
1. 政治関係 (1)1970年10月10日フィジー独立と同時に同国を承認
(2)1979年1月我が方大使館スバに開設
(3)1981年1月在京フィジー大使館開設
(4)1987年12月11日新政府承認(黙示)
(5)1990年7月在大阪名誉領事任命(1998年9月まで)
(6)2000年9月5日新政府承認(黙示)
2. 経済関係 (1)対日貿易(02年財務省)
(イ)貿易額
 輸出 4,015百万円
 輸入 5,756百万円
(ロ)主要品目(%)
 輸出 木材(62)、魚介類(24)、粗糖(12)
 輸入 自動車(58)、機械類(14)
(2)我が国からの直接投資
132件 284億円(97年度までの累計)
3. 在留邦人数 280名(02年10現在)
(援助関係者、観光業関係者等)
 
3-2. 政府の海上輸送に関する方針
 フィジーで海上輸送を管轄している省庁は、運輸省と民間航空局である。運輸省の中には、海上輸送に関連する政策の実施及び船舶の登録と規定への遵守を管理する、フィジー海事安全局(FIMSA)がある。FIMSAのディレクターはフィジー船舶登録係も兼任している。同国政府はシンガポールとの合弁で、「便宜置籍国船舶登録」について検討している。
 
 運輸省内には、フィジー周辺の波止場、港と水深の深い錨地を管理するフィジー海事・港湾公社がある。フィジー国内における船の所有権と運航に関する政府規制は海運条例(1988)に定められている。この条例は外国籍船に乗務するフィジー人乗組員の安全、乗組員資格、及び雇用と船舶検査規則に関する13の主要項目から構成されている。FIMSAは海運条例を管理している。
 
 現在、運輸省の主な優先課題は、フィジーにおける道路施設の改善と保守である。しかし、海上輸送と島間の船舶輸送が経済の発展に必要であると考えられるため、運輸省はアジア開発銀行の資金提供を受け、波止場改良プロジェクトに着手した。完成は2004年12月の予定である。同プロジェクトはインフラ整備と管理体制の改善により船のターンアラウンドタイムを短縮化し、スバとラウトカの港の競争力を高めようとするものである。
 
 また、運輸省ではFIMSA内に海事・港湾公社を設置することによってその業務を合理化する可能性を検討している。
 
 フィジー造船公社(Fiji Ship Building Corporation: SFL)はスバを基盤とする100%国有の国家機関である。ここではフィジーにおける政府及び民間所有の船舶の広範囲にわたる整備点検を管轄している。またSFLには造船課がある。
 
3-3. 政府による援助と産業促進
 フィジーの海上輸送産業はかなり発達しており、島の間を運行する船の大部分は民間部門によって管理されている。
 
 フィジー政府は島間の船舶輸送が経済にもたらす効果の重要性を認識しているものの、この業界を支援するためのプログラムはこれまでごく限られていた。重要なスバとラウトカの港を改善することは優先項目と考えられているが、同産業への特別支援や離島の港湾設備/波止場改善のための短期計画は立てられていない。
 
 フィジー海事・港湾公社は国内の全ての港を管理しており、独立採算制をとっている。現在のところ政府から追加補助を受ける必要はなく、施設もよく整備されている。
 
 民間の海運業者が基準以上のサービスを提供しているため、フィジー政府は海運業に積極的に介入していない。大部分の航路で必要以上の輸送能力があり、このため適度な競争が生まれ輸送費用が抑えられている。
 
3-4. 海上輸送産業
 フィジーでは、他の太平洋の島国よりも多くの国際船便や国内船便が利用でき、接続も便利である。
 
 大部分の島では、人の移動、物資や薬、他の必需品の輸送は船舶に依存している。貨物輸送の約3分の1と旅客輸送の約89%が首都のスバと離れた小島との間のものである。これらの小さな島々には代替の輸送手段は存在しない。
 
 フィジーにおける沿岸及び島間の船舶輸送の大部分が民間企業によって運営されている。民間企業が所有する船は、太平洋諸国で運航する他の船舶よりも大型で高度な設備を持つものが多く、300〜950GRTのRoRo船またはコンテナ船がある。40〜350GRTの民間船舶や海事部が所有する10隻の船は、貨物をより小さな港や島に運搬している。また大半の船が貨物と乗客の両方を乗せている。
 
 フィジーの船籍には600隻以上の船が登録されているが、その半分が10GRT未満の船である。船籍は現在コンピューター化されている最中であり、各船舶に関する情報は近い将来、ウェブサイトに掲示される予定である。
 
 フィジー島からスバまでの貨物の約70%はコプラ(50kgのバッグ入り)であり、その内50%以上がバヌアラブ島とタベウニ島からのもので、残り50%がラウ・グループからのものである。島々から運び込まれる一般貨物は、家畜や空の燃料用ドラム缶、カバカバ(南太平洋原生のハーブ)、民芸品(タパ・クロス、木彫り、編んだ籠等)、及び保存食等である。
 
 スバから島々へ輸送される貨物の内訳は一般貨物が主であり、その多くは島内の店に送られる製品、加工食品(缶詰、米、小麦粉、砂糖、塩、料理用油等)、燃料、建築材料(コンクリートブロック、屋根ふき材としての鉄、建材)、機械等である。道路のある大きな島には自動車も輸送されている。
 
 政府は、引船や陸上船そして4隻の貨物/客船を含む16隻の船を所有、運行している。引船は別として、貨物/客船は需要と供給に応じて使用されている。定期便は存在しない。
 
 フィジーには20社の海運業者/代理店が存在する。その大部分は域内の海で運行する外国船を対象として、通関、貨物の混載、積み替え、雑貨置き場の供給、荷役、地元乗組員の供給を含め、国際貨物便のロジスティクスに必要な業務を全て取り扱っている。その中でも主要な民間海運企業は以下の3社である。
 
(1)コンソート・シッピング・ライン(Consort Shipping Line Ltd)
 本社はスバから離れて立地し、「MV Spirit of Fiji Islands」という船を所有している。同社はバヌアラブ島とタベウニ島の両方で陸上輸送サービスを営み、海から陸への輸送サービスを一貫して提供している。「MV Spirit of Fiji Islands」は、毎週2回、スバからコロ、サブサブ、及びタベウニ島まで運行している。この船にはパレットに載せたバラ積み貨物や一般貨物を積んだトラックを運び込むことができ、650人の乗客と20フィートコンテナ30個を輸送する能力を有している。
(2)パターソン・ブラザーズ・シッピング(Patterson Brothers Shipping)
 乗客、貨物、及び自動車を載せることのできる3隻の船を所有し、スバ、ラウトカ及びラバサの3つの港からナトビ、ブレサラ、バウ、レレウビア、そしてナボウワルまで毎日運行している。
(3)ビーリコウマーRO/ROシッピング(Beachcomber RO/RO Shipping)
 1週間に3回、「MV Adi Savusavu」をスバからタブニ及びサブサブまで運行している。この船には700人の乗客と28台の自動車、そして20フィートコンテナ16個あるいは25tのコンテナ混載貨物を載せることができる。
 
 もう1つの国内の海運業者、カダブ・シッピング社(Kadavu Shipping Ltd)は「Bulou-Ni-Ceva」を毎日スバから本島の反対側にあるカダブまで運行している。この船は、250人の乗客と20t貨物の輸送が可能である。
 
 フィジーの海運業は太平洋諸国の中でも独特であり、観光のための船を数多く所有している。長さ65mの宿泊施設を有した大型船から長さ15mの双胴型モーターボートまで、様々な登録済み観光用船舶やクルーズ船が55隻ある。
 
 フィジー最大のクルーズ/ダイビング取扱企業は、キャプテンクック・クルーズ社(Captain Cook Cruises)とブルーラグーン・クルーズ社(Blue Lagoon Cruises)の2社である。両社ともヴィチレブ本島の北部に所在。これらの企業が所有する船舶の概要は以下の通り。
 
船名 仕様 施設 航行
ブルーラグーン・クルーズ
MV Mystique Princess 56m
4デッキ
空調付きデラックススイート36室、バー、レストラン、会議施設 3泊4日のヤサワ島へのクルーズ
MV Nanuya Princess 49m 空調付き船室25室、レストラン、バー、会議施設 6泊7日のママヌカとヤサワ島へのクルーズ
MV Lycanda Princess 39m 空調付き船室21室、レストラン、バー、会議施設 2泊3日のヤサワ島へのクルーズ
MV Yasawa Princess 54m 空調付き船室33室、レストラン、バー、会議施設 3泊4日のママヌカとヤサワ島へのクルーズ
キャプテンクック・クルーズ
MV Dro Ki Cakau 65m
850GRT
空調付き船室60室、レストラン、バー、プール、会議施設 6泊7日のセイクレッド島、ティブア島、ワヤ島、及び南北ヤサワ島へのクルーズ
SS Spirit of the Pacific 100GRT、2本マスト帆船 寮形式の段ベッド26個 2泊3日の冒険クルーズ
Ramarama 30m、100GRT、2本マスト帆船 調理室、レストラン ティブア島への1日クルーズ
MV Lady Geraldine 24m180GRT 空調付きレストラン ディナークルーズ
MV City of Nadi 38m 空調付きのダイニングルーム ディナークルーズ
 
 次に大きな周遊船取扱企業は、最大50人の乗客を運ぶことのできる30mの双胴型アルミ船2隻を運行するサウス・シークルーズ社(South Sea Cruises)である。これらの船は本島北部のデナルから出発して、ダイビングスポットあるいは近くの島まで1日観光を催行している。
 
 他の多くの企業が、最大40人の乗客を運ぶことのできる15〜18mのアルミ船を1隻から2隻運行している。これらの船は個人が所有しチャーターベースで運行したり、あるいは島のリゾートが所有し、ダイビングスポットやラウトカ港から乗客を往復輸送するために使用されている。







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