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先進融資、保証スキームの開発
 新造船もしくは大改造契約の成功のためには造船所はプロジェクトの融資について活発に参加せねばならない。船主は彼らの選択した通貨で、(即ち彼らの収入通貨、米ドルがこの場合主流であるが、)契約額の80%までのローンを要求している。
 特に造船所の年次生産価格が、自社価格を超える場合問題となる。部分建造船は資産としては考慮されない。
 大量の購入機器で、造船所の自己活動による付加価値は、全契約合計額の一部より小さくなってしまう。プロジェクトを通じて全負債を想定しなければならない。ほとんどの船主は船舶建造中の頭金行使のために銀行保証を要求しており、全プロジェクト融資の所要金額はさらに増加する。
 多くの商業銀行は造船業への関与と重要であるが不安定な産業への保証を下げようとしている。減少した興味は、専門性の欠如を引き起こし、このプロセスを徐々に加速する。
 これらの全ての要因は、建造中(引渡し前融資)と船主への引渡し後(引渡し後融資)の両方で、船舶金融の手当の難しさの増大を引き起こす。しかし問題は、船舶のタイプによって状況が異なり、EU造船所の競争力の重大な障害を形成する。
 欧州造船所の融資ニーズで3つの問題が重要である。引渡し後融資スケジュールと商業銀行のローンをベースにした標準抵当との間のギャップを埋める保証、運転資本とその造船所の主任銀行による頭金返還保証をカバーするプロジェクトの引渡し前融資の保証、そして通貨リスクのヘッジング手段である。
 これらの問題への対応の中で、幾つかの重要な原則が適用されなければならない。全ての手段は自立可能であることと透明性を確保することである。適用される金利は課されるリスクを反映せねばならない。手段の運用は、効果的で、決定は明確かつ筋の通ったものでなくてはならない。あらゆる提案される行動は、厳しくEUルールに従わなくてはならない。WTOとOECD規則もまた完全に尊重されねばならない。
 ほとんどの造船国で、国家機関が船舶融資の支援を提供しているが、多くの多種多様である。米国海事庁は25年にわたり契約額の87.5%までの引渡し後ローンを保証しており、韓国KEXIM銀行は、引渡し前、と後のローンと保証で契約額の90%レベルまでの完全融資パッケージを提供している。幾つかのEU加盟国は、特別融資を行っている。
 ほとんどの加盟国は、輸出信用機関(ECA)が造船プロジェクトに融資することを可能にすることによって保証を行っている。しかし、ECAは政治的経済的リスクが提示される国への輸出発注のためのローンを提供するように設計されていて、欧州造船所に発注する船主の大半にはそのようなカントリーリスクは存在しない。これらのケースの場合、輸出信用保証は、船主の実際の融資要件と商業銀行からの可能なローンをベースにした抵当との間のギャップをカバーするのに、融資不可能か、適切な答えが返ってこないの両方である。それ故、共通市場とOECD原則のルールに匹敵する欧州組織体により運用されるEUワイドの保証基金の創設の可能性を探求することが好ましい。金利は船主の質、保有形態、船舶の就業形態、傭船の形態と期間、ローンのリスクレベルに影響するその他の要因が反映されるべきである。料率に応じた料金はOECD規則に従った保証スキームを確保しなくてはならない。この目的を達成するために、利率カテゴリーの数を制限するシステムが適用できる。料率に応じて料金はOECDルールに従った保証スキームを確保せねばならない。EUメンバー国で実施されるべき保証スキームの共通(又はおよそ)標準は、早期に述べられた重要原則に従って、代替的解決方法が提供できる。しかしそのような融資手段の調整はとても難しい問題である。あらゆるケースで実施ツールは、早くて効果的な決定過程を確保し、実務的要件を反映せねばならない。
 引渡し前融資に関して、同種のアプローチが継続されている。実際のコスト価格と船主による頭金との間の違いをカバーする保証は、頭金のための未払い銀行保証の価額が増加し、極めて重要である。再度言うと、欧州ワイドの保証規律は好ましく、たとえ完全適用が難しくとも、代替としてEUメンバー国の共通(又はおよそ共通)標準が好ましい。
 通貨リスクの管理に関して、EU内の状況は様々である。ドイツ、ベルギー、スペインのような国はこれについて規約の提案はない。他の国、即ちフランス、英国、オランダは専用の融資へと向かっている。公正で同等の条件を確保するため、また非EU競争者に対抗するため、入札によるリスクをカバーし外貨での契約に対する保険は極めて重要である。銀行はそのような融通を合理的コストで提供しないことから、適正な再保険によりカバーされる輸出信用保険会社が選択される。交換レートは主要通貨管理者の利率政策で大きく影響されることから、通貨リスクの再保険の重要な役割は欧州企業で担われなければならない。
 
先進金融保証スキーム
問題点
・造船プロジェクトは資本集約的だが造船所は全ての所要財政要素を用意するのに適正ではない。
・多くの商業銀行は船舶金融から手を引き始めている。
・非EU競争者は先進的国家支援金融手段を持っている。
・輸出金融原則は造船プロジェクトに完全に適用できない。
 
勧告
・引渡し前、後融資のためのEUワイドの保証基金設置可能性の探求。共通市場とOECDのルールに沿って、完全実施が難しいとしてもEU加盟国の調和した標準を代替として検討可能。あらゆるそのような手段は容易に適用できなくてはならない。
・適正な再保険でカバーされる輸出信用保険会社は通貨リスクのヘッジ手段を提示せねばならない。
 
より安全でより環境にやさしい船の促進
 過去10年以上にわたりEUはかなりの数の法令を動員して海事安全と海洋環境の保護の分野の対応を増加してきた。EU造船・修繕産業は常にこの規則の採択を支持してきており、特に欧州海事安全庁(EMSA)の創設とPSC制度の強化についてはそうである。
 産業界の認識として、現代の船舶は、信頼の置ける造船所で、最も厳しい天候に対抗するように安全に設計、建造され、適正な保守を受けていれば近年の環境生態的災害は防げたはずと考える。残念ながら海運と造船産業に関係する国は低運賃と新造船価の顕著な削減で特徴付けられている。これらの傾向は新船の品質と既存船隊の保守に大きく影響する。近年の船舶喪失は顕著な構造欠陥と運用ミスと解かっている。船舶設計に構造と運用コストを低減するための明らかな傾向がある。それは荒天時の船舶と貨物の健全性を危うくするこれらの変化がどの範囲にあるのかを分析する必要がある。
 これらの状況において、EUと世界レベルでの海事安全要件の強化が、より安全な船を確保し、船員の喪失を最小化し、海洋環境を守るために要求されている。
 この背景に対して、海運安全と海運と造船産業の正常な競争環境を回復されるため、4つ具体的な行動指針が提案された。
 最初の行動指針は、強制政策としてEU水域からサブスタンダード船を禁止するための共同体の努力を継続することである。欧州委員会の提案は、なかんずく、PSC制度を強化し、シングルハルタンカーのフェーズアウトを加速し、老朽タンカーのCAS要件を開発・強制することで、この観点からこれらは決定的な効果があるはずである。産業界は、提案された新EU規則を全面的に支持しEMSAの役割は重要と考える。
 第2行動指針は運航者が受け持つべき責任の増大である。産業界の意見として、明確な規則をベースに、無責任な運航者は制裁に従わなければならず、貿易から排除されるべきである。市場原理として、この行動は、良くて安全な船へ投資しようとする傾向を刺激し、適切な市場報酬を通じた品質の高い海運を奨励する結果がもたらされるべきである。
 第3の行動は、より透明で、統一され、効果的で独立した船舶の技術的検査システムの促進である。特に船級の実施する作業の状況は評価されるべき必要があり、システムの効果を向上するあらゆる手段が採用されねばならない。商売上の圧力からの船級の独立は、船舶検査の健全なシステムにとって必要な条件である。この観点で、既存の禁煙の改正を含めた船級の共同体規則の厳しい強制が確保される必要がある。
 第4の行動は、世界レベルで造船所の品質評価スキームを促進することである。そのようなシステムは、良好な産業慣行に合致し最小品質要件に合致する船舶を引き渡す造船所の識別とランク付けをできるようにしなくてはならない。それは高い安全性と環境基準を奨励し、船主、運航者、検査員に、その造船所出来の船が急速にサブスタンダード船になるか、もしくは高い保守・修繕コストにさらされるかという造船所の識別を示す有用な指針を提供する。
 船級により設定された建造と保守の安全基準は、最低競争を起こすような商業的道具としてこれらの組織で使われてはならない。この観点でEU規則の適正な実施状況を良くモニターしつつ、IMOの可能な役割を考えねばならない。
 これらの行動は共同体レベルだけでなく、権能のある国際会議の枠組みでも策定されるべきである。産業界はEUがIMOでより活発な役割を演じようとすることを歓迎し、EUが新規則を発効した後、IMOで速やかに実施されることを期待する。欧州委員会は産業界による技術支援の申し入れ、特にEMSAに対するもの、を歓迎する。目的を達するため合同専門家委員会が設置され、以下のタスクが主にゆだねられる。
 海上輸送、特に海上安全に関するEU規則の存在と留保の産業的インパクトを評価すること。海上安全を向上させる可能な更なる提案を分析すること。IMOの中におけるEUへの支援を行うこと。
 最初の努力はこの文書で、リーダーシップ2015の中で実施された。
 
 最後に海運と造船産業が一緒になって、欧州の輸送安全の全体的向上と、短距離海上輸送(SSS)を通じた環境への負の影響を軽減するという重要な役割を演じることができたことに言及する価値があろう。SSSと欧州造船業はお互いに新市場機会の提供が可能である。SSSとその複合輸送は一般的に新規で特別に採用した船舶と、欧州主要造船所による先進的で柔軟な船舶設計を必要とする。比較的小型のこれらの船は国内造船所にとって有利である。欧州を横断する持続可能な表面移動システムのためにこの機会を完全に開発開拓するために、EU政策立案者が、欧州海岸線の特定の証券を考慮し、適切な枠組みを提供することが必要である。
 
より安全でより環境にやさしい船舶の促進
問題点
・低運賃と新造船価格の低下は海上安全と海洋環境保護に有害な影響がある。
・ごろつき運航者は罰を受けることなく、未だに市場に参加できる。
・設計、建造、改造の品質を検査するシステムを向上する必要がある。
・短距離海運(SSS)の全潜在力は未だに使われていない。
 
勧告
・既存と将来のEU規則は厳しく実施されるべきでこれを国際レベルに移出すべき。
・船舶の技術的検査のより透明性のある統一された効果的で独立したシステムが促進されねばならない。
・新造船と修繕をカバーする世界レベルの造船所の品質評価スキームが開発されるべきである。
・欧州内の修繕能力の維持と強化は高レベル輸送安全と環境保護を確保するためには重要である。
・欧州委員会とEMSAに技術的に支援を提供する専門家委員会が設置されるべき。
・SSSの大きな潜在力は適切な政策的経済的枠組み条件を通じて探求される必要がある。
 
艦船ニーズヘの欧州のアプローチ
 欧州艦船建造事業者は欧州防衛戦略における本質的なハードウエアーを供給している。武器産業の他の分野で、欧州の生産者が費用効果の観点で、そのような強力な世界のリーダーシップを保持しているところはない。米国艦船造船所と比較して、欧州造船所は、費用対効果的に2.5から3倍の効率で船体を製造している。技術的先進製品については、欧州艦船造船所は、在来型潜水艦や高速警戒船のような分野で無類のリーダーである。この優位は、艦船と商船の高度な競争力との間の強力な融合のための幾つかの手立てによるものである。
 しかしながら、他の防衛分野と比較すると、欧州艦船建造事業者は国内企業により支配されている。連携の増加や統合もないまま、欧州の主要事業者は、EU防衛手段の選択肢を減らすような、グローバル化の中で取り残されるリスクを犯している。強力な統合された欧州事業者の創出は、欧州の競争力とまた国際的な艦船輸出メーカーの中での現行の支配的位置を支援することとなる。3つの重要分野はすぐに注目するに値する。即ち、造船所間及び造船所舶用メーカー間における輸出市場と産業統合へ向かう事業協力。
 広い範囲の協力が、各国海軍による運用要件の要求により未だに阻害されている。コンポーネントとサブシステムの標準化は、広い意味で向上をもたらし、全艦船保有コストの顕著な低減に繋がる。調達周期もまた相違しており、斑のある労働負荷から造船所は抜け出せない。経費削減と再発生しない経費の分担を目的として打ち出された共通計画の最初の経験は、結論を促すことは出来たが本質的改善には問題が残った。
 加盟国とその海軍は、欧州委員会コミュニケの「欧州防衛―産業と市場問題2003年3月」にそって、共通運用の最小用件と調達サイクルの調整に合意する必要がある。これらの最小要件は、「ピータースバーグ タスク」と「ヘルシンキ ヘッドライン ゴール」を基本とすべきである。共通要件に向けた最初の努力は、フリーゲート艦規模以下の小型水上艦に焦点を当てるべきであり、その後この大きさを越えるべきである。コンポーネントとサブシステムの標準化はボランタリーとシステマティックなアプローチを基本とすべきである。標準化は品質保証とライフサイクルサポートヘの共通アプローチをカバーする一定の範囲とすべきである。船級は、商船建造で得られた知識において、標準化に重要な役割を担っている。これら努力の究極の目標は、保有コストを顕著に低減しうるシステムと艦船艦隊の共同運用でなくてはならない。協力は、プールされたR&D資源と単一欧州防衛設備市場を用いて、限定された大型プロジェクトにおいて行われねばならない。
 輸出市場は極めて狭く特定分野に限られている。これらの市場では開発経費の回収が重要である。加盟国内では、統一輸出規則は存在しない。異なる伝統と地勢的問題が原因となって、競争を歪め、産業協力の障害となっている。EU域内貿易への共通市場規則の全面適用の欠如は、同じ様な負の影響を持つこととなる。
 それ故、輸出規則(とそれらの適用と解釈)は加盟国間で調和されることが必要である。
 欧州艦船造船所は、高度な注文生産と強制された特定の海軍の用件による、ほとんどが限定された国内市場に従事している。多くの加盟国艦船造船所は国有もしくは国家管理であり、それらは商業的枠組みによる規則では規律されていない。EU産業の長所短所を詳細に分析する必要がある。それには相殺の問題も含まれねばならない。すなわち艦船建造発注に関する補償契約措置である。欧州製造者間に顕著な構造の違いが存在する。それは、大規模国有企業が中規模民間造船所と同一市場で競争しており、民間造船所は、統合への努力を成功させるには民間保有が前提条件であることを要求している。
 この背景に対して、保有形態に特定の好ましい形というのは無いことは完全に同意されるが、国有艦船造船所の民営化は支援されねばならない。共同調達庁の設置を含む防衛設備の共通市場の確立が重要である。これは長期的に統合を助成こととなる。
 
艦船ニーズヘの欧州のアプローチ
 
問題点
・艦船造船所間の更なる協力が国内海軍の運用要件により阻害される。
・潜在的に競争を歪める調和のない輸出規則とそれらの適用と解釈
・防衛設備の真の共通市場の欠如は産業統合の問題となる。
 
勧告
・造船所間の協力を可能とし、システムと船舶または艦隊の合同運用に繋がるように、大規模プロジェクトにおいて合同要件が確立されねばならない。
・加盟国は輸出規則の調和問題を進めなくてはならない。
・防衛設備の欧州市場を形成するための共通ルールが開発されねばならない。それは理事会が要求した防衛能力開発と研究、取得と軍備の分野の域内政府組織の設置をベースとすること。







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