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附録14
AWES報告書 仮訳
AWES 年次報告 2002〜2003
まえがき
 欧州造船事業者は、世界の他の造船事業者と同様に急峻な周期的傾向に曝されている。2000年に受注ピークを迎えてから、我々は現在下降傾向に直面している。しかし我々にとっては、これはいつものことで、正にこれが「造船業」ということである。
 周期的な経験はこれが最初ではない。確かに2000年はピークであった。しかしまた近いうちに上昇面も来るであろう。これも造船の特性である。
 もちろん我々の事業には、強い意志が必要である。不況下の発作によって、気が狂ったような受注活動がこのまま続けば、新規契約獲得にかられた自分たちに後で気づくだろう。しかし過去の苦しかった危機に関わらず、欧州の造船と修繕事業は、いくつかの有意な分野で、生き残っているだけでなく、世界的に顕著な役割を維持している。欧州海事産業は、世界の高付加価値船の64%を現在も造っているのである。
 2003年1月、欧州委員会は、造船業の将来の経済周期に対応するためのビジョンのなかで、造船産業と修繕産業は「知識ベース産業」であるとの認識を示した。欧州委員会は我々の産業が欧州経済への主要な貢献者であり、そのように扱われるべきとノートした。
 欧州において、トータル340億ユーロを売り上げる9000社のネットワークの強さを支え、欧州内の35万人の直接雇用を提供する海事産業を、健全に維持し競争力を保持することは全欧州の利益にかなっている。これが、我々が何故、高価値の創造と補助を受けない産業のための真の欧州政策の確立を求めねばならないかの答えである。
 これは、我々のLeadership 2015 initiativeの強調テーマである。
 その戦略の8つの主要項目を概説すると以下のとおりである。
・平等な競争条件
 これは必須条件である。我々の仕事の活力と産業としての競争力を維持し、平等な競争条件が与えられるように欧州の法令を整備すること。
 この観点から、我々は韓国に関するWTOにおけるパスカルレミー委員長の行動を完全に支持する。WTOにおける救済措置は、暫定防御メカニズムの発動と連携している。しかし、真に効果的なものとなるには、メカニズムには大きな柔軟性と発動のスピードアップが必要である。遅れた裁判は拒絶された裁判と同じである。我々はメカニズムによって境地に立たされなくてはならないのか?もちろんNOである。つまり、不公正な反競争慣行に対する反補助金や反ダンピング措置といった同等な経済的対抗措置は、他の全ての主要産業で享受されているのである。
・研究開発が知識ベース産業の活力であるため、欧州造船事業者の研究開発努力から得られる新しい技術の成果を刺激し加速するという好ましいアプローチ
・知識と先行投資
・海事安全法規と統合されたEU輸送政策の強化
・欧州防衛統一政策の確立
・欧州知的財産保護
・技能開発支援
・産業構造の再考
 参加する欧州委員会担当者と造船所は論理的な結論を得るためにこのプロセスを進めていく。特に、公平な競争条件の開発を通じて、EUは長期にわたり強い海事産業を維持し、戦略的な将来の生き残りを勝ち取れると、私は確信する。
 
パトリックボイサー
2003年フランスにて
 
I. 世界の造船業
世界の造船要件と容量
 世界経済と国際海上貿易は昨年に比べ低いレベルではあるが2002年も成長が続いた。Fearnleysの主要数値では、トン−マイルベースで、海上貿易の成長は0.1%を下回ったが、トンベースでは0.7%の増加であった。乾貨物貿易は成長したものの、油輸送は、トンマイルベース、トンベースともに下落傾向となった。Lloyd's Register-Fairplayの数値によれば、2002年のDWTベースでの世界貿易に従事する商船船腹量は、その貿易量を超える4.75%の増加を示している。船腹量のバランスは、即ち、商船隊の輸送能力と船腹の必要量とのバランスであり、本質的に一層悪化したこととなる。また2001年に大きく悪化した船腹バランスについては、2002年はその悪化の程度は小さくなっている。過去の世界の海上貿易量の進展を添付図に示した。
 
(添付図省略)
 
 AWESの「市場と将来予測の作業グループ」は、これまでの市場の進展を観察し、新造船の所要量の最新予測に関連した検討を行った。最新予測は2001年に同作業グループで策定された。同予測は2000年から2015年の期間をカバーするものであった。
 
 この予測は、過去の同種の評価と同じように、歴史的データと新造船の将来ニーズにとって重要な因子を仮定することを基礎として、予想される将来の新造船の進展を示すことを目的としている。予測は長期傾向に焦点を当て、年毎の変動は扱わない。下表は昨年の年次報告ですでに公表した最新の予測の主要数字である。
 
(表省略)
 
 この予測にはイラク戦争とその他の将来起こるかもしれない戦争による海上貿易と新造船所要量に対する影響は考慮していないことを付言する。
 
 近年世界の造船は、高いレベルの新造発注と高い生産レベルと継続した造船能力の拡大に特徴付けられる。造船能力の拡大は、高い新造船発注の発生と、非常に弱い船価傾向という通常では考えられない組み合わせを背景にしていると見られている。
 
 2002年の新造船の船価レベルは、これまでの最低レベルであり、歴史的な低船価レベルに落ちた1999年よりも低くなった。これらの低船価は、必要船腹量を前倒して、新造船発注することを刺激する原因となっている。
 
 建造されるべき新造船所要量の主要部分は、老朽船ならびに事故により解役される船や例えばFPSOへ改造される船等のリプレースの必要性により発生している。したがって予測期間内に市場から消えると予測されるトータル4億9百万DWTの船腹量は予測新造量の74%に対応している。
 作業グループの評価では、新造所要量については、輸送という観点と既存船腹のリプレースによる必要量から見て、近年の発注レベルは高すぎる。近年の発注活動で発生していると見られる前倒し発注や投機的発注の要素は、将来の新造発注量のレベルが低下することでいずれ相殺されると予測される。この現象は、2001から2002年に発生した悪化した船腹バランスからも明らかである。
 
 1999年冬のタンカー「エリカ」号や2002年冬のタンカー「プレステージ」号のような大事故は海上安全や関連の環境問題に国際的懸念を集めた。そして、より厳しい規則とより安全な船を同時に求めようとする市場心理となって現れた。これは油タンカー商船隊の一部の前倒しリプレースに関する影響要因となっている。
 
 2000年に高いレベルの記録に到達した後、世界の新造発注量は2001年と2002年に下降した。
 
 しかし、2002年の新造量は予測に従った所要量よりも依然高いレベルとなっている。したがって新造発注量の更なる減少がおこると思われる。
 
 作業グループの評価では、世界の造船能力の規模は、既存施設の生産効率の向上と新設施設の建設と既存施設の拡大で、将来も成長し続けることを示している。このような設備拡大は、造船産業の供給能力と建造されるべき新造船の必要量の間の不均衡をさらに拡大することとなる。
 
世界の造船建造量
 2002年に、トータル1539隻が引き渡され、総量で3.34千万GT、2.14千万CGTとなり、昨年の1553隻、3.13千万GT、2.02千万CGTという数字と比して顕著な伸びとなっている。
 
 しかしCGTでのAWESの市場占有率は、2001年の23.6%から2002年には22.9%に落ちた。一方韓国の市場占有率は、2001年の30.2%に対し2002年は31.1%に上昇し、日本のそれは、2001年の32.1%から2002年の30.7%に下落した。
 
 ロイドレジスター統計によれば、クロアチアを含むAWESメンバー国の生産は、390隻4.3百万GT、4.7百万CGTから376隻、4.6百万GT、4.9百万CGTへと若干増加した。
 
世界の新造発注量
 2002年の発注活動は、過去2年より低い。新造発注は、2001年の3.63千万GT、2.33千万CGTから、2002年には3.31千万GT、2.14千万CGTと急激に減少している。
 
 最も影響のあった船型は、クルーズ船とコンテナ船である。2001年の9月11日からたった3隻のクルーズ船しか発注されていない。クルーズ船市場の合併はまだしばらくの間続くものと思われる。コンテナ船の発注活動は2001年の48万TEUから2002年には45万TEUに下落した。
 
 原油タンカー、ケミカルタンカー、LNG船もまた下落したが、程度は小さかった。
 
 発注が増加したのはプロダクトタンカーとバルクキャリヤーだけであった。これは厳しい新規則に対応して老朽船腹のリプレースと日本と中国の強い国内需要が要因である。
 
 2002年の全ての新造発注量シェアーは、韓国37.1%、日本28.3%、欧州10.9%となった。
 
世界の手持工事量
 手持工事量は、2002年末にトータル2795隻、7.49千万GT、4.89千万CGTに達した。
 
 ロイドレジスター統計によれば、AWESは手持工事量の市場占有率を、2001年の24.4%から20.0%へ落とし、韓国が33.3%から31.4%に若干減少し、日本が22.7%から26.9%に増加したことがわかる。
 
 新造船需要は、2003年には下降すると思われる。
 
 世界の建造量のほぼ半分である韓国と中国は成長が見込まれ、世界の造船能力は、ここ数年間は、年間およそ2.9%の成長が予測される。
 
 世界の建造能力の残り半分である日本と欧州の能力は低下すると思われる。







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