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附録3
欧州委員会第7次造船市場報告(概要和訳)
EU産業閣僚理事会向け欧州委員会作成第7次造船事情調査報告書サマリー
1 序章
 本報告書は2002年における世界の造船事情の市場展開を報告する。また、コスト調査の最新情報も添付する。
 
 欧州委員会(EC)は韓国造船業の不公正慣行に関し2002年10月21日にWTO提訴を実施。同提訴解決までの期間限定保護措置としての暫定造船助成も、2002年10月24日以降に成立した契約に関して適用。
 
 OECDでは新造船協定に関する交渉が2002年12月に開始された。
 
 造船業界トップ、組合代表、EU政策担当者を巻き込んでの「LeaderSHIP 2015イニシアティブ」が立ち上げられ、欧州造船業の競争力を死守するため貿易問題、訓練問題、共同開発・調達プログラム等に取り組む提案を作成中。
 
2 市場分析
2.1.1 発注活動と市場シェア
 
 過去の過剰発注、米景気停滞、テロの影響と世界経済の不確実性による影響は続き、2002年には前年比マイナス12.3%と受注が更に減少。
 
 特に影響を受けたのはコンテナ船とクルーズ船部門。プロダクト船とバルクキャリア部門のみが(エリカ号、プレスティージ号事故後の)新EU規制によるリプレースと、日中両国の国内需要によって受注が増加している。
 
 バルクキャリア船部門では国内需要に支えられた連続建造の経済効果で日本造船業が善戦、韓国は欧州船主からの受注を中国造船業と競り合っている。欧州造船所は同部門からは撤退状態である。
 
 欧州造船業が期待できるのは、最近EU規制が採択されたばかりの客船・RO/RO船部門と、プ号事故対策による小型タンカー部門でのリプレース需要のみであるが、ここでも韓国が低船価を提示して足場を築く動きに出ると予想される。
 
 需要に対して2割以上の過剰な建造能力は問題で、中国とベトナムにおける設備投資も進行中の上、韓国ではブロック組立を含む造船業下請け作業関連の設備投資が更に継続しており、船価に悪影響を与え続けるのは必須である。
 
2.1.2 船価の展開
 2001年の年末と比較して2002年の年末における船価は全般的に低くなっている。以下クラークソン社のデータを引用。
 
 欧州造船所の得意とする小型コンテナ船とRO/RO船部門は、韓国がまだ進出しておらず、船価も安定している。
 
 韓国と中国における生産コストの顕著な増加と強い需要によって、小型タンカー部門では船価が2.9%のみ増加。
 
 2003年7月1日発効の新設計規制を受け、バルクキャリア全種において、日中両国の需要により船価が上昇。日本政府による船価規律(price discipline:建造許可のことか?)が効力を発揮(上方にor下方に? 記載なし。)し、中国造船所もこれに追従。
 
 韓国が得意とするガスキャリア船と大型コンテナ船の両部門では、同国造船所が互いに競争して船価の低迷が顕著となっている。欧州委員会(EC)の危惧する通り、韓国内での熾烈な競争が実際のコストを無視した船価に繋がっている事実が証明されている。
 
 米ドルがユーロ、ウォン、円に対してドル安となったにも拘らず、ドル建て船価の上昇となっていない。即ち、船価が全般的に更に下がった事実を意味する。特に2002年第4四半期、顕著なウォン高にも拘らずドル建て船価は値上がりしていない。
 
3 コスト調査
3.1.1 前回報告書コスト調査の更新
 第1次・第2次報告書に示す方法で行ったコスト調査をアップデートした。受注から引渡までの間にコストが変化する場合があるため、常に微調整が加えられている。
 
3.1.2 新コスト調査
 第6次報告書提出後、5件の新コスト調査が実施されている。
 
 これらの調査から、韓国造船所はコスト割れした低船価で受注し続けている事実が明らかとなった。生産コスト+5%の利益として計算された通常船価より低い船価提示が続いており、典型的なものとしてはインフレ財務コストを除外した直接操業費のみをカバーする船価レベルとなっている。2002年において受注船価と通常船価とのギャップは更に開き、1年前の第5次報告書で8%から、今回は平均して20%となっている。
 
 巨大な生産設備を抱える韓国造船所は、どの部門においても需要減少の影響を受け、手持工事量を確保するために船種を選ばず受注に走っている。2001年3月、現代重工代表などが「今後は利益増大を狙って受注を選択する」と発言したのと裏腹に、現状では2002年に赤字計上をする所が続出している。
 
 調査における特筆例として、Hamburg Sud社発注のコンテナ船(5,100TEU)の場合、大宇が550万ドルで受注を確保したが、三星重工がこれを船価切崩しであるとして韓国政府に提訴。同政府は大宇に対し、三星と同レベル(580万ドル)まで船価を値上げするよう命令するという事態に発展した。ECに対しては、「韓国造船所の商慣習に関して、影響力を持たない」と主張してきた韓国政府だが、ロイズリスト紙2002年11月11日付で「大宇の提示船価は低すぎ、公正な競争を歪め韓国輸出業者の信用を傷つける恐れがあると思われる」と語ったと引用されている。一方Hamburg Sud社では、「契約船価は550万ドルで調印され、これが30万ドルも増加する条件を承諾する理由は無い」と断言しており、大宇が値上げを実施したかどうかは不明。
 
4 結論
 生産設備過剰、過去の船腹過剰、世界経済の停滞、9月11日テロ事件の影響で、造船事情は深刻な問題を抱え続けている。特にテロ事件はクルーズ船産業に大打撃を与えている。また韓国内の熾烈な競争が船価下落の要因となっている。日本と中国の造船所のみ、安定した国内需要と良好な船価競争力によって売上を増加している。
 
 2001年と比較して世界的に受注は約12%減となっているが、特にクルーズ船部門に依存するEU造船所では50%減と落ち込んでいる(2000年と比較すると70%減)。
 
 コンテナ船、クルーズ船部門が最も影響を受けているが、タンカー、LNG船も需要が減少。プロダクトタンカーとバルクキャリアのみ需要が増加したが、これが船価に与える影響は限られている。
 
 欧州では造船所の破産が相次ぎ、残る所も人員整理を余儀なくされている。
 
 船価は更に下がり、ここ十年で最低レベルを記録。2002年に値上がりは見られず、2003年の見通しも暗い。
 
 コスト増に反して韓国造船所は更に低船価を提示しており、短期的な支払い債務で行き詰まると予想される。
 
 ECの詳細なコスト調査で、韓国造船所がコストを割る船価で受注されている事実が証明されている。調査結果が示すように、インフレや財務コストを無視した船価設定により、通常船価と提示船価とのギャップは更に広がっている。
 
韓国造船不公正慣行に対する欧州委員会の
WTOパネル設置要請プレスリリース
EU requests establishment of WTO Panel over Korean unfair shipbuilding practices
DN: IP/03/821 Date: 11/06/2003
TXT: FR EN DE
PDF: FR EN DE
DOC: FR EN DE
IP/03/821
Brussels, 11 June 2003
 
EU requests establishment of WTO Panel over Korean unfair shipbuilding practices
 
The European Commission has today requested the WTO's Dispute Settlement Body (DSB) to set up a Panel over the unfair Korean shipbuilding practices, at its next regular meeting of 24 June. This decision has been taken further to the failure of bilateral and or WTO consultations to reach an amicable solution to this long-standing dispute. EU Trade Commissioner Pascal Lamy said: "It is regrettable that Korea has shown no real will to resolve the issue in an amicable manner. In particular, we deplore the fact that Korea has failed to respect its commitments under the bilateral Agreement with the EU signed in June 2000 (the so-called Agreed Minutes). Furthermore Korea has made no efforts to find a solution during the three rounds of WTO consultations which have taken place since October 2002. This lack of progress has left us with no option but to take Korea to the WTO".
The request addresses both the issue of export and actionable subsidies granted to Korean yards whether in the form of export financing by the government-owned Korean Export-Import Bank (KEXIM) or through restructuring subsidies (notably to Daewoo).
Background
In a Decision published in the Official Journal of the European Communities on 19 October 2002 (OJ L 281/15) the Commission announced the initiation of dispute settlement procedures against Korea under the relevant WTO provisions. The European Commission has now officially notified the WTO of its request for a Panel under Article 6 of the WTO Dispute Settlement Understanding.
 
For more information:
IP/01/630, MEMO/01/167, IP/01/656, IP/01/1078, IP/02/642, IP/02/1389 and IP/02/1395
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