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海洋白書 2004創刊号 日本の動き 世界の動き

 事業名 海洋シンクタンク事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


2 GESAMP報告書 "A Sea of Troubles"(仮訳「苦難の海」)(概要)
1. 報告書の構成
第一章 人類と海の関係の変遷
海への圧迫とその効果/問題解決の方法・見方の変遷
第二章 水の現状
汚染/富栄養化/堆積物の流れの変更
第三章 海の生物
漁業/生物多様性/外来種/生息地/サンゴ礁
第四章 海と大気圏
地球温暖化/紫外線/窒素
第五章 陸地と海
都市化/産業/農林業・養殖/水文学的変化/商業と運輸/観光/軍事活動と社会紛争
第六章 行動
失敗の原因/科学と政策/リスクと便益/統合的アプローチ
付録 問題と解決(海洋環境評価作業部会作成の行動勧告)
 
2. 報告書の概要(ハイライト)
悪化のつづく海の環境
 過去10年間を振りかえってみると, 世界の海洋の状態は劣化しつづけており, 数十年前に指摘された問題のほとんどが解決されていないばかりか, その多くはさらに悪化している。そして, 地域的にはかなりの改善の見られるところもあるが, 世界の海全体を見れば, 全般的に悪化のペースと規模が常に改善を上回り, また新たな脅威が次々と生まれ, 海洋と沿岸の伝統的利用と, それから人類が得てきた便益が広汎に損なわれつつある。また, これらはすべて, 人類の活動がますます増大し, かつ広域に拡大していることに起因するもので, 人々が海に近づけば近づくほど海が被る損害は増大する。
 現在世界の海が直面している最も重大な脅威は, 予測される地球温暖化によるものを除いて, 次の5つに要約される。
(1)生物生息地の破壊と変形の拡大。河川, 河口, 沿岸水域などがとくに被害を受ける区域であり, 中でも湿地帯, マングローブ林, 海草原, サンゴ礁等は最も脆弱で, 過去一世紀に世界のマングローブ林の少なくとも半分がなくなり, サンゴ礁の70%が脅かされている。その原因は汚染のみならず, それ以上に埋め立て, 森林伐採, 鉱業, 沿岸における工事, 破壊的漁業等である。
(2)過剰漁業とその環境への影響。集約的漁業は食物連鎖の中間から膨大な量のバイオマスを取り除くことになり, その効果の多くはまだ判明していない。破壊的漁業, 不完全な漁業管理, 持続可能性を否定する社会的・経済的慣行などが危機状態を一層悪くしている。
(3)下水と化学物質の人間と環境への影響。一部の汚染物質は削減されたが, 新たな研究の結果, 下水汚染は世界的に, 人類が患って来た最も恐ろしいいくつかの病気に匹敵する広範囲の影響を健康に対して及ぼすことが判明している。
(4)富栄養化現象の増大。海洋植物の過度な繁殖は世界的に, サンゴ礁, 海草原, その他の生息地など, 生態系と海の健康に重大な障害をもたらし, 赤潮等の被害を起こしている。
(5)ダム工事等による水文学的変化と堆積物の流動への影響。ダム建設, 大規模潅漑施設, 土地利用方法変更などのための工事はしばしば, 生息地を著しく劣化させ, 生態系に大きな変更をもたらす。
 
新たな知見とアプローチ
 過去10年間に, 新たな問題が発生し, 海洋保護を新たな観点からみることが必要になり, かつ海洋の経済的価値が高められた。その例としては, 地球温暖化の海に対する計り知れない効果や, 従来の主要汚染化学物質に代わって, 下水等による過去の理解をはるかに超える損害があらたに認識されたことなどがある。また, 陸上活動が主たる海洋汚染源であり, 主要な問題は非点源汚染との理解がこれまでに比べてなお一層明白となった一方, 汚染は海洋に対する必ずしも主要な脅威とは限らず, むしろ生態系や生息地に対する直接の物理的損害及び資源の乱獲が, より大きな影響を世界的にもたらしていると認識されてきた。また, 海の生物多様性に関する新たな知見が得られ, その人間活動による被害は未だ陸上におけるよりも少ないことが理解され始めた。
 さらに, 後述するように, 海洋の諸問題は個別にではなく, 統合的なアプローチによってのみ取組むことができることが再認識された。この統合管理の原則は, いくつかの国ではうまく採用されているが, 国際条約に具現化されるには時間がかかった。この点もっとも進展を見せたのはバルト海, 地中海等いくつかの地域的海域においてである。
 
水質汚染と堆積物の流れの変更
 汚染問題の中でも下水汚染は, 文明の歴史とともに古いものであるが, 人口の急増によって益々大きな問題を引き起こしている。とくに, 富栄養化, 病原菌汚染, 海水浴客への被害, 貝類によるバクテリア, ウイルス等の蓄積, などの被害はこれまで以上に深刻なことが判明した。また, 放射性廃棄物, 重金属, 石油などによる汚染は, もはやかつてほど重大な害を起こすとは見られず, 環境ホルモン等残留性の潜在的効果を持った化学物質がより注目をあびるに至っている。
 ダム, 堰などの建設による河川流の減少は, 堆積物の海への流入を妨ぎ, 世界各地で河川流の変更や深刻な海岸侵食の原因となっている。場合によっては堆積物が増加することもあり, これがサンゴ礁や干潟を破壊することもある。
 
漁業, 生物の多様性, 外来種
 約10億の人口がその主要蛋白源として頼っている世界の漁業は危機的状態にある。1950年から40年間世界の漁業はブームが続き, 海面漁獲高は4倍以上に拡大したが, その後は横ばい状態となっている。これは主として過剰な漁業の結果で, 世界の漁業資源の60%は生産が下降しているかまたは横ばい状態となり, 残りの40%のみが上昇を維持しているに過ぎない。乱獲のやまない今日の状況が続けば, 世界の海からの食糧供給は10年以内に大きく落ち込む可能性がある。対象魚種の捕獲に付随して漁具にかかるが海に捨てられる混獲魚も, 世界の漁獲高の35%以上にものぼると推定され, その被害は海鳥, 海亀, 海洋哺乳類にも及んでいる。その他, 海底トロール, 爆薬, 流し網等による環境破壊, 遺伝子組替え魚類による野生種への潜在的影響などが問題となっている。
 海の生物多様性は陸上のそれよりはるかに豊かであることが最近判明し, 深海の生物種の数だけでも陸上を上回ると考える者もいる。ことに海洋種は新医薬品開発にとっておそらく最大の未開発原料であろう。サンゴ礁や礁に住む魚種の一部は国際取引や礁の建材としての利用などにより打撃を受けている。
 もう一つの問題は外来種による現地種への害で, 世界が益々小さくなりつつある今日, 種の移動の大規模化がもたらす破壊的影響が懸念されてきている。例えば, 毎日約3千種の動植物が船のバラスト水や船体を通じて世界各地に運搬されていると推定される。
 
海と大気の相互作用
 海は地球温暖化において死活的役割を演じ, 気候変動の度合いに大きな影響を与えるとともにそれによって甚大な影響を受ける。後者の例には, 海面上昇(今後100年間に平均50センチと予測されている)とそれに関連する被害のほかに, 大洋の原動力の一つである主要海流の流れの変更の可能性がある。これは, 海の生態系の構成とその各海域にわたっての配分に変化をもたらし, その結果, 海の生態学と海を利用する諸国の経済に大きな被害をもたらす可能性もある。ハリケーン, 洪水, 干害等の異常気候もさらに激化すると思われる。
 海面上昇は都市や産業に大きな影響を与えるのみならず, それに伴う海流の波のパターンの変更とあいまって, 人間も含め生物にとって死活的に重要な湿地帯, 干潟, サンゴ礁などの生息地に深刻な打撃をもたらす。気温の上昇はまた, コレラ等魚介類を通じて広がる病気を拡大させるおそれがある。
 
オゾン層の破壊
 オゾン層の破壊が進むに従い, 太陽から紫外線の地表への直接投射による害悪が広がっている。海面及び海洋生物(ことにプランクトン)に対する被害についてはまだ十分解明されていないが, 極く少量の紫外線の増加でも海中の光合成や生物種の成長・再生に影響することが判明している。そのうえ, オゾンの減少は, 地球温暖化による極地海面の氷解と複合的に反応し合い, スペクトルと水中に注がれる光線の強度に大きな変化をもたらし, ことに極地に近い海や生態系に深刻な影響を与えている。
 
大気を通じた窒素汚染
 莫大な量の窒素が大気を通じて海に注がれており, 例えばチェサピーク湾においては, その窒素汚染全体の5分の2に相当する。この現象は, とくに化石燃料と肥料の使用の増大が予測される地域の近海について益々悪化すると言えるが, アジア, アフリカ, 中南米諸国の風下にある海域においては, 海の生命に変化をもたらす可能性もある。ことに, 栄養物の欠乏が生物生産性を制御している南・北太平洋への影響が益々懸念されている。燃料使用による窒素酸化物の排出は1990年からの30年間にアジアでは4倍, アフリカでは6倍になり, また肥料からの窒素もアジアでは同期間に2倍になると予測されている。
 
陸上起源の海洋環境破壊活動
 陸上の様々な活動が海洋・沿岸域の環境破壊の最大の原因であることは, 長い間変わらないが, 過去10年間の新しいデータは, それらがその種類と度合いの双方において, 益々増大し, 環境破壊を拡大していることを示している。なかでも, 都市化, 産業, 農業, 林業, 養殖, 河川の水文学的変化, 運輸活動, 観光, 軍事活動, 社会紛争, 等の環境への影響が大きな問題となっている。
 
各国による取組みの欠陥
 世界の海・沿岸域に対する脅威についての認識が広まり, 過去10年間には各種条約の採択等多くの政治的イニシアチブがとられたが, ほとんどの場合効果的な行動が伴っておらず, 目標が達成されていない。その最大の原因の一部は政府による十分な政治的・財政的コミットメントの欠如と, 実行能力不足であるが, とくに途上国においてはその根底にある根強い社会的, 政治的, 経済的原動力も重要な要素である。これらの社会・経済的原因に取り組まなければ, いかなる長期的な解決も期待し得ない。
 
科学と政策
 海と沿岸域の保護・開発と資源の持続可能な利用のためには科学者, 管理責任者そして政策決定者が効率的に協力することが必要である。これがうまく行かない場合, または公衆の感情やメディアの叫びが意思決定を支配する場合には, 理性的な解決方法の採択が困難となる。
 各国の政策決定に際しては, 学際的科学調査・観測に基づく信頼し得る情報が不可欠であるが, 管理責任者や政策決定者は科学的情報を十分に利用せず, 他方科学者もその研究計画策定さいして彼らを十分関与させない傾向にある。将来の優先的な研究計画の立案には双方グループが一致協力して係わる必要がある。
 
予防的アプローチ
 経済的・社会的開発に対する予防的アプローチは, 望ましくない結果を避けたり, その蓋然性を少なくするのに役立つ。このアプローチによれば, ある行動の結果起こりうることは, その目的が設定された時点において評価されるべきであり, また, 人間の福祉や資源・環境に深刻にして不可逆的なリスクが生ずる場合には, たとえその影響や原因が明確でなくてとも, 先制的な措置がとられるべきである。常識的に, リスクの最も大きい活動は最大の注意を要するが, そのためにはリスクの客観的評価が必要となる。
 
統合的アプローチ
 海と沿岸域の多くの環境問題はそれぞれが密接に関連し合っており, 個別的に取り組むことは出来ない。これらの環境に影響し, また環境から発生する人間活動はまた経済的・社会的要素にも依存している。そして, これら諸問題は物理的・制度的境界を越えて存在するため, その解決には国際的協力が不可欠である。今日の環境管理・政策担当者は, 永続的解決は, 総合的にして, 体系的かつ持続的アプローチを通じてのみ達成し得ること, そして, 海のための管理計画と沿岸地帯および川とその流域のための管理計画は調整されたものでなければならない, とますます認識しつつある。これが, 統合沿岸管理(ICM)と言われるもので, いろいろなレベルで適用が可能であり, 多くの国が異なった形で採用しつつある。
 ICMの概念は単純ではあるが, その実施にはしばしば困難が伴う。資金と専門家不足が障害となっており, 多くの国はとくに環境計画と紛争の仲介の訓練を受けた管理責任者を早急に必要としている。
 
原文(英文)は下記のアドレスを参照







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