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4 その他の国際機関の動き
1)国際捕鯨委員会(IWC)
2002. 4. 2  アメリカのワシントン州ニアベイの先住民マカ族の捕鯨委員会は, アメリカ国家海洋漁業局(NMFS)により大幅に緩和された捕鯨許可条件にもとづき, 今月にも伝統捕鯨であるコククジラ捕鯨を再開する予定である。
 
2002. 5.20〜24 IWC第54回総会が日本(下関)で開催された。会議では日本が提案した商業捕鯨再開に向けた改訂管理制度(RMS), 南太平洋・南大西洋サンクチュアリの撤廃, 沿岸小型捕鯨に対する暫定捕獲枠等の提案がいずれも否決された。
 
2002.11.14  IWCは, ケンブリッジにおいて特別会合を開催し, 5月の下関会合で否決された先住民族のための生存捕鯨を認め, またアイスランドの再加入を商業捕鯨モラトリアムに対する留保つきで認めた。
 
2003. 6.16〜19 IWC第55回総会がドイツ(ベルリン)で開かれた。前回に引き続き日本提案はことごとく否決され, 逆に「ベルリン・イニシアチブ」と呼ばれる決議の中で「保存委員会」の設置が強行的に可決された(賛成25, 反対20, 棄権1)。保存委員会の第1回会合は, 来年イタリアのソレントで予定される第56回総会の前に開かれる。日本は, 保存委員会の設置決定を受けて, 来期(2003年9月〜2004年8月期)のIWC分担金支払いについて「態度を留保する」ことを表明した(なお2001年9月〜2002年8月期の日本の分担金は加盟国中最高額の1,820万円, 全体の8.6%にのぼる。第2位は米国の6.3%)。
 
図2-24 氷海を行く目視採集船「第25利丸」
 
2)国際食糧農業機関(FAO)
2003. 4.24  「保存及び管理のための国際的な措置の公海上の漁船による遵守を促進するための協定(FAO遵守協定)」が25ヶ国の受諾を得て発効した。この協定は公海上で操業する便宜置籍漁船が保存管理措置を遵守させずに操業を行うことを防止することを目的として第27回FAO総会(1993年11月)で採択されたもので, 日本は2000年6月に受諾している。
 
3)国際海洋法裁判所(ITLOS)
2002.12. 2  ロシアが国際海洋法裁判所においてオーストラリアを相手取り, ヴォルガ号及びその乗組員の迅速釈放を求めて提訴。ヴォルガ号は同月7月にオーストラリア漁業水域内で違法操業を行っていたとして拿捕されていた。
 
2002.12.23  国際海洋法裁判所は, ヴォルガ号事件(迅速釈放事件)に関して, ヴォルガ号の釈放を認める判決(19対2)を下す。保釈金は合計192万オーストラリアドル。
 
4)国連教育科学文化機関(UNESCO)
2003. 4.18  UNESCOの諮問機関である国際記念物遺跡会議(ICOMOS)は, 国際記念物遺跡デーのテーマとして「水中文化遺産−水中の伝説」を掲げた。これには, 2001年にUNESCO第31回総会において採択された「水中文化遺産保護条約」の早期発効を促す目的があり, 各地で会議, 展覧会, ワークショップ等が開催された。
 
図2-25 
国際海洋法裁判所内の審議風景
 
2003. 6.17〜20 水中文化遺産保護条約の早期発効を目指すため, ジャマイカ・キングストンにおいて, UNESCO文化部と同カリブ事務所による水中文化遺産の保全と商業目的による難破物の引き揚げの規制についての会議が開催された。
 
5)その他の国際機関
2002. 7.19  ACP(アフリカ, カリブ, 太平洋)諸国第3回サミットがフィジーで開催され, 「グローバル化した世界におけるACP連帯ナンディ宣言」が採択された。その中で, ACP諸国周辺の水域における核及びその他の危険物質の輸送に強い反対を表明し, なかんずく事故を未然に防ぐため, その即時中止を要請した。
 
2002. 8.17  フィジーで開かれた第33回太平洋諸島フォーラムは, オーストラリアの留保つきで, 同海域における放射能物質の輸送の継続に重大な懸念を表明し, 輸送国に対し, フォーラム諸国が事前協議制度等に基づく革新的取決めのために策定してきた提案について真摯に話し合うために早期に代表を送るよう呼びかけた。
 
2002.11.15  ワシントン条約第12回締約国会合は, 海洋生物のなかで, 数種のウミガメ, ウバザメ, ジンベイザメ, タツノオトシゴ類を附属書IIに掲載することを決定した。また, オーストラリアが提案したメロ(銀ムツ)の附属書IIへの新規掲載は可決の見通しが立たなかったため, 取り下げられた。
 
2002.11.18  水鳥の生息地として世界的に貴重な湿地を保全する目的のラムサール条約の締約国会議がバレンシア(スペイン)で開催され, わが国との関係では愛知県の藤前干潟と北海道の宮島沼が条約の下で登録され, 全国の登録地は合計13ケ所となった。
 
5 アジアの動き
1)海洋環境保全の取組み(PEMSEA, NOWPAP, APECなど)
2002. 3. 1〜3 インドネシア・ジャカルタにおいて「東アジア海域における海洋電子ハイウエー(MEH)の開発に関するプロジェクト運営委員会第2回会合」が開催された。2004年からマラッカ・シンガポール海峡においてタンカー数十隻に電子海図情報表示装置(ECDIS)を搭載し, 陸岸局の整備を図り, MEHの実証実験等を行った上で, 2007年からMEHを開始するプロジェクトが承認された。
 
2002. 3.19〜22 韓国のプサンで, 第8回東アジア海域環境管理パートナーシップ(PEMSEA)運営委員会会議が開催された。同会議には東アジア12ケ国の政府, 地球環境ファシリティ(GEF), 国連開発計画(UNDP), IMO, 世界銀行など国際機関, 日本財団その他の関係者が出席し, 地域の持続可能な開発戦略, 国の海洋政策, 及び長期かつ自立的な地域協力のあり方について話し合った。
 
図2-26 
PEMSEAの統合沿岸域管理プロジェクトサイトのあるアモイ
 
2002. 3.20〜22 北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)の第7回政府間会合が, ウラジオストク(ロシア)において開催された。NOWPAPは, 国連環境計画(UNEP)によって提唱されている地域海行動計画のひとつであり, 日本海及び黄海の環境保全を目的として, 日本, 韓国, 中国, ロシアの4ケ国によって, 1994年に採択され, 海洋環境データの整備, 海洋環境モニタリングの構築, 海洋汚染に対する準備及び対応などの分野で事業が進められている。
 
2002. 4.22〜26 韓国のソウルで, 「海洋及び沿岸資源の持続利用」をテーマにした初めてのAPEC海洋閣僚会議(21会員国の海洋関連大臣または代表, NGO, 民間などが参加)が開催された。会議ではアジア・太平洋地域海洋資源の持続性を確保するための構想と実践方策を含むソウル宣言を採択した。次の会議はインドネシアで開催する。
 
2002. 7. -  ベトナムのハノイで開催されたASEAN沿岸環境ワーキンググループにおいて, PEMSEAの実施するプログラム(東南アジアにおける持続可能な開発戦略:SDS-SEA)が地域協力の好事例として評価されるとともに, ASEAN環境戦略行動計画の支援につながるとして位置づけられた。
 
2002. 9.20〜22 中国のアモイ(厦門)で, 「海洋と沿岸の総合管理におけるリーダーシップ」セミナーが開催された。このセミナーには, 東アジア各国の中央・地方政府関係者, 海洋シンクタンク・研究所その他関係者, GEF, UNDP, 世界銀行, 国連工業開発機構(UNIDO)など国際機関関係者など80名を超える参加者が集まり, 海洋の持続可能な利用について検討した。なお, これにあわせて第3回沿岸域統合管理実施のための地方政府地域ネットワークフォーラム(RNLG)が開催された。
 
2003. 2.24  PEMSEAは, 沿岸域統合管理の第3のパラレルサイトとして, インドネシアのスカブミを選定した。PEMSEA事務局長のチュア氏とスカブミ統治区代表のママン氏の間で, 環境プログラムに関する覚書が取り交わされた。
 
2003. 2.25〜27 北大西洋地域海行動計画・沿岸環境評価地域活動センター(NOWPAP/CEARAC, 富山市)が主催する, CEARAC第1回専門家会議が富山市内で開催され, 加盟4ケ国の専門家が集まった。今後は「リモートセンシングによる海洋観測」と「赤潮を含む有害藻類の増殖(HAB)」の2つのテーマに取り組んでいく。
 
2003. 3.20  PEMSEAとSOF海洋政策研究所は, 東アジア海域の環境保護と沿岸資源の持続可能な開発を目指す覚書に署名した。同覚書は, 2つの組織が協力して, 東南アジアにおける持続可能な開発のための地域戦略, 各国の海洋政策や戦略の形成支援, 人材育成などを促進することを確認している。今後, 地域の海洋シンクタンクの設立に向けての提言や会議開催についても協力していく予定である。
 
2)海賊
2002. 3. 5〜7 インドのジャカルタで, 海上保安庁および日本財団の支援の下に, 「第2回海賊対策のための海上警備機関による専門家会合」が開催された。これは, 2000年4月の東京での「海賊対策国際会議」において採択された「アジア海賊対策チャレンジ2000」に基づいて, 関係各国等の海上警備機関間の連携・協力の更なる推進について協議することを目的としたものである。17の国と地域の参加の下に, 目的とする協議と, 地域協定のための予備協議も行われた。
 
2002. 7.10〜12 2001年11月にブルネイで開催されたASEAN+3(日中韓)首脳会議において, 小泉総理が海賊対策に関する地域協力協定の作成を政府レベルで検討するための「政府専門家作業部会」の開催を提案したことを受け, 東京において「アジア海賊対策地域協力協定作成のための第1回政府専門家作業部会」が開催された。この作業部会には, ASEAN諸国をはじめとする計15ケ国から, 外務省及び海上警備機関における海賊対策の専門家が出席し, 本格的な協定の作成作業が始まった。
 
図2-27 マレーシアにおける海賊対策訓練風景
 
2002. 9.10〜12 「アジア海賊対策地域協力協定第2回交渉」が, 第1回小作業部会として東京で開催された。
 
2003. 3. 6〜7 フィリピンのマニラにおいて「第3回海賊対策のための海上警備機関による専門家会合」が開催された。最近の海賊事件検挙状況と効果的な海賊対策, 情報交換, 国際協力の促進について協議が行われた。
 
2003. 4. 7〜11 東京において, ASEAN諸国を含む16ケ国の参加の下, 「アジア海賊対策地域協力協定第3回交渉」が開催された。日本の起草した共同提案テキストに基づき議論が行われた結果, 共通交渉テキストを採択した。その主な内容は, (1)海賊に関する情報共有体制と各国協力網の構築, (2)海上警備機関の協力強化, (3)各国の海上警備能力向上への協力となっている。
 
2003. 5.22  東京において, 国土交通省, マラッカ海峡協議会, 日本財団, SOF海洋政策研究所, (社)日本船主協会, (社)日本海難防止協会による「第1回マラッカ海峡懇談会」が開催された。マラッカ海峡の安全確保のための費用負担問題に関して, 沿岸3国の対応, 3ケ国技術専門家グループ(TTEG)の近況について情報交換が行われ, 今後の費用負担問題の解決へ向けて関係者間の協議が行われた。
 
2003. 5.26〜30 「アジア海賊対策地域協力協定第4回交渉」は, 14ケ国が参加してソウルにて開催された。(1)情報共有センターを通じた海賊に関する情報共有体制と各国協力網の構築, (2)海上警備機関間の協力強化, (3)各国海上警備能力向上への協力を内容とする, 協定条文草案の第一読を終了した。第5回交渉は, 7月に韓国のプサンで開催される予定である。
 
2003. 6.18  カンボジアで開催された第10回ASEAN地域フォーラム(ARF)において, 「海賊行為及び海上保安への脅威に対する協力に関するARF声明」が採択された。ARF参加国は, 海賊行為を防止するため, 関係国際法の履行に努めるとともに, 参加国間の協力を強化するとし, 参加国は, 国際航行を行う船舶を保護するため, (1)IMOや国際海事局(IMB)海賊対策センターとの協力を強化すること, (2)海上犯罪者を国内法に従って訴追すること, (3)IMOが作成した文書や発出する提案を支持するなどで合意した。
 
2003. 6.24  インドネシアのメガワティ大統領は, 6月22日から25日まで日本を公式訪問し, 小泉首相と首脳会談を行った。ここでの共同声明の中で, 東南アジア海域において増大する海賊問題の克服を重視し, 海賊行為の増加が日本を含む近隣諸国の海上輸送の安全に対し深刻な脅威をもたらすとともに, 地域の社会的及び経済的発展に対し悪影響を与えるとの認識が示された。両首脳は「アジア海賊対策地域協力協定」の早期採択を含めた, 海賊行為の予防及び防止に関する協力を両国が強化する緊急の必要性があるとの見解で一致した。
 
3)沿岸警備隊, テロ対策
(1)沿岸警備隊の動き
〈マレーシア〉
2003. 6. -  マレーシアでは沿岸での監視・監督の強化のため沿岸警備隊の創設が検討されている。現在, 海上警察, 海軍及びその他の政府機関によって個々に行われている管理に対して, 最近の不法入国者の増加問題などで政府が指示を出し, 総理大臣傘下の国家安全室が独立組織としての創設を研究・検討している。
 
〈インドネシア〉
2003. 2.18  インドネシア政府は18日, 東南アジア海域で深刻化する海賊による被害を食い止めるため, 沿岸警備隊を創設すると発表した。6月頃までに大統領令を発布し, 正式決定する方針。
 
(2)海上テロ及び海上テロ対策
2002. 5.16  サッカーワールドカップでの対テロ協力態勢を確認のため, 日本の海上保安庁と韓国海洋警察庁はプサン港内で特殊部隊も動員した合同訓練を実施した。
 
2002. 7.20  北太平洋6ケ国の海上警備機関長官級会合において, 海上保安業務に共同で対処する指針と海上テロに対する共同声明が発表された。
 
2002.10. 6  約40万トンの重油を積んだフランスのタンカー「リンブルグ号」が, イエメン沖で爆薬を詰め込んだボートによってテロ攻撃を受け, 船体が破損し, 乗組員1名が死亡, 約9万バーレルの重油が周辺海域を汚染した。11日, イスラム過激派「アデン・アビヤン’イスラム軍」を名乗る団体が犯行声明を出した。
 
6 その他の動き
〈自然エネルギー利用〉
2002. 8.19  オランダは, 北海沖合10kmに, 世界最大級(2,750kW×36基:総発電量約10万kW)の洋上風力発電所を建設する。
 
2002. 9. 2  イギリスのエンジニアリング・ビジネス社は, スコットランドのシェットランド諸島に新しい潮力発電装置の試作機である「スティングレイ」を設置し, 試験の結果次第で2004年までに装置を量産する。この「スティングレイ」は, 海の自然の力を利用して発電する事業を奨励する英国政府の戦略の一環として, 資金助成を受けた。







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