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海洋における法執行−海軍/米沿岸警備隊の経験
背景
 米国の海洋における法の執行制度は特殊である。それは海軍と「第五の軍」すなわち沿岸警備隊が、200年を超える歴史のなかで特殊かつ密接な関係で結び付いてきたことによる。南北戦争後、警察活動に軍隊の使用を禁じる法律Posse Comitatus Actが議会を通過したことにより、沿岸警備隊は法執行の権限を有する唯一の軍となっている。18 このような規定があるにもかかわらず、警察活動のみならず他の任務においても、海軍と沿岸警備隊は歴史的に関わりが深い。平時の場合、沿岸警備隊は国土安全保障省に属する独立の機関である。しかし、1790年に創設された沿岸警備隊の前身Revenue Marineが1797年、フランスとのQuasi-Warにおいて、初めて海軍と共同行動を行って以来、米国の主要な戦争に積極的に参戦し、第一次、第二次世界大戦では実質上海軍の所属となった。19 近年の代表的な武力衝突では、朝鮮半島及びベトナムで沿岸の防護と海上作戦に参加し、また、ペルシャ湾、紅海、旧ユーゴスラヴィア沖、イラク戦争時には港湾の保安と海上阻止作戦を実行した。ここ数年、沿岸警備隊がその中心的任務である警察活動を海軍が支援し、一方で海軍が従来担当していた国際的任務を沿岸警備隊が支援するケースが増えている。このように両海上部隊が「自国艦隊」として任務を遂行することにより、両者の関係がさらに進展し、相互の支援体制がより緊密化するだろう。
 
米沿岸警備隊の役割
 米沿岸警備隊の主要な任務は、(1)海上の保安、(2)海洋における法の執行、(3)海洋環境の保護、(4)国家防衛の4つである。1982年に規定された従来の沿岸警備隊の役割と任務について、近年第1回目の大幅な見直しが行われたが、これら4つの基本的な任務については変更がないと思われる。20 これらの任務を支えているのは、海事上の法令及び条約の執行、捜索及び救助、海上の保安、海洋環境の保護、航行支援、防衛準備態勢、砕氷作戦の、主要な7つの作戦プログラムである。21
 米沿岸警備隊による海洋における法執行(MLE)プログラムは、海洋生物資源、麻薬密輸入の阻止、外国人の移入阻止の3つの分野に関する法令及び条約を執行する役割を担っている。
 
沿岸警備隊−海軍の連携による法執行
 沿岸警備隊は、これら3つの海洋における警察活動という主要な任務を負いつつ、同時に捜索や救助といった他の任務を負うことがあったり、海軍を支援する場合もある。海軍の首脳陣が最近述べたように、「海軍艦船は平時の場合、北半球における沿岸警備隊の任務を支援している。海軍は麻薬対策を日常的に支援し、大量移入、大規模捜索及び救助、又は他の海上における重大事件が発生した場合には、沿岸警備隊を支援するための余地を残している。」22 (実際、海軍艦船はこの10年間、キューバ人及びハイチ人移入者の捜索、救助、及び入国阻止、航空機事故後の救助及び復旧作業の支援など、沿岸警備隊の任務の補助に深く関わってきた。)前述したように、沿岸警備隊は任務の遂行に関して、海軍及び他の連邦政府機関に支援を要求する法的権限を有している。一方、領域外の活動及び国防長官又は国防副長官による事前の許可を得た場合は、法執行において他の軍隊を投入できるという例外も存在する。例えば1996年10月、沿岸警備隊法執行班がバミューダ沖で暴力的な不法移入者が83名乗船している商船に立ち入った際に、米海兵隊が後方支援したというケースがある。23
 特定領域における対麻薬作戦では、米海軍は捜索及び監視の指揮機関として沿岸警備隊を支援している。先進のレーダー及び通信システムを搭載した軍艦及び航空機は、麻薬の密輸入を阻止する際の情報収集や追跡を行うための貴重な手段となる。24 現在、米海軍は対麻薬作戦においてカリブ海に軍艦を常時2隻配備し、東太平洋には通常1隻を配備している。米海軍は法執行の権限を持たず、入国阻止、押収及び逮捕については、沿岸警備隊が権限を行使することができる。にもかかわらず、海軍戦艦は沿岸警備隊法執行班(LEDET)を乗船させて入国阻止、押収及び逮捕の任務に当たることもある。通常の場合、LEDETの乗船期間は6〜7週間である。LEDETプログラムでは、年間、平均して約35隻の米海軍フリゲート艦、駆逐艦、巡洋艦にLEDETを乗船させている。主な派遣先はカリブ海と東太平洋の中継地帯である。全般的に、疑わしい船舶への立ち入り検査を行うケースは、年間で平均100隻に上る。25 この10年間で、イラクと旧ユーゴスラヴィアに対する国連の制裁措置に違反していると思われる船舶に対して行った捜索は、数万隻に達した。26
 米沿岸警備隊は冷戦後、平時の国際任務において、米海軍及び米軍地域戦闘司令官との連携と支援を強化した。法執行権限の及ぶ領域において、沿岸警備隊は海上部隊の共同プログラム及び警察訓練を主導している。特に、カリブ海沿岸諸国では、ハイチの沿岸警備隊の編成及び訓練をカナダと合同で行い、最近では、沿岸警備隊の訓練に補給艦を派遣している。フロリダ海峡においては、非公式であるがキューバ国境警備隊と共同で移入者の阻止及び対麻薬作戦を展開している。また、ベーリング海においてはロシア連邦国境警備隊と共同で漁業取り締まりを行っている。27 米沿岸警備隊は、同警備隊の施設及び海外での機動訓練部隊(MTT)を通して徹底的な訓練を実施している。1986年以来、MTTの派遣回数は65カ国で延べ5,000回を上回っている。米沿岸警備隊は、海外でMTTを通して毎年2,000名を、国内の警察学校で300名を訓練している。従来の、カリブ海及び南アメリカで毎年実施される合同演習UNITASに加え、最近では、米国外の平時の任務において沿岸警備隊の部隊の活動がますます活発化している。世界の海軍の大部分は、規模の面でも任務の内容から見ても、米海軍よりもむしろ米沿岸警備隊に近いことを考えれば、この事実は驚くに値しない。また、沿岸警備隊の白い船体は、その第一の任務が人道的捜索・救助、保安、及び法執行であることから他の国家に受け入れられやすく、また沿岸警備隊の船舶が存在しても反感を買いにくい(例えばハイチでは1994年に、米海軍の退去後も米沿岸警備隊は活動を継続することができた)。近年では、米軍地域戦闘司令官の要請により、沿岸警備隊巡視船が地中海、バルト海、黒海、ペルシャ湾に前方配備され、毎年米軍が実施するCARAT演習にも参加した。最近になり、沿岸警備隊は、第二次世界大戦以来初めて巡視船を空母戦闘群に配備した。28 また、沿岸警備隊の港湾保安部隊及び航空部隊は、トルコ、紅海、ペルシャ湾、及び韓国に配備された。太平洋海域のフィリピンでは、米沿岸警備隊は水路管理に関する援助計画の一貫として初回評価を指揮し、フィリピンに巡視船を派遣した。1999年9月、シンガポールの学生が米沿岸警備隊のNational Search and Rescue(SAR)に初めて留学したのを機に、米沿岸警備隊はシンガポールのCivil Aviation Centerと共同でSAR課程の運営を始めた。このような双方向の演習の延長として、沿岸警備隊は、ベトナムにおける海事上の必要性評価を実施している。沿岸警備隊のMTTは最近、コンテナ収納検査の支援に日本を訪問した。アジア太平洋地域で米沿岸警備隊の訓練課程に参加したか、MTTを受けた要員がいる国は26カ国に及んでいる。特筆すべきことに、1999年、中華人民共和国からの密航者がグアムに上陸するのを阻止するため、米沿岸警備隊は、太平洋区域の前方に配備されている通常の装備(巡視船及び設標船)の補足として、遠距離巡視船、C-130輸送機、巡視船及び設標船を追加投入した。このグアムでの任務において、18隻以上の密輸船の入港を阻止し、1,100名の密航者を本国に送還した。29
 
米海軍/米沿岸警備隊連携の将来
 米海軍と米沿岸警備隊の歴史的に緊密な協力関係は将来も続き、強化していくだろう。沿岸警備隊の2020年のビジョンに関する文書によると、沿岸警備隊は米国の海事上の法執行機関として必要性がいっそう高まり、今後も引き続き米海軍の支援を受けることは確実であるとしている。国防長官と運輸長官との間で交わされた1995年の合意により、米沿岸警備隊は、米軍地域最高司令官の支援のため、次の主要な任務を行うこととなった。(1)海事上の検査業務(2)軍関係の環境対応業務(3)港湾の業務、保安、及び防衛(米国内外)(4)平時における軍関係の任務(3)及び(4)の任務について、最近、米海軍は次の通り述べている。「沿岸警備隊は、世界の海上部隊及び海軍に対して、沿岸警備に関する独自のスキルを提供している・・・(中略)・・・しかし、この任務を支援するには沿岸警備隊の能力にも限界があり、この任務には現在のレベルである年間約370日(延べ)の運航日数(shipdays)が適当である。」30 海軍は次のようにも指摘している。最近のイラク戦争などの本格的な戦争において、特に港湾の保安及び防衛、環境災害への対応、沿岸での阻止作戦、危険度が中から低程度の環境で重要な貨物を護衛する任務などを行う上で、沿岸警備隊の支援は必要である。海外での地域協力任務については、海軍−沿岸警備隊間の縄張り争いを懸念する向きもある。しかし、米国沿岸警備隊の規模は主力巡視船41隻(海軍フリゲート艦サイズのハミルトン級巡視船(3,000トン)12隻、海軍コルベット艦サイズの中距離巡視船29隻(うちベア級(1,820トン)13隻、リライアンス級(1,000トン)16隻))、航空機190機、要員35,000名を擁する「世界第7位の海軍」である。これに対して、米海軍は600隻から295隻に縮小され、このうち水上戦闘艦は100隻を多少上回る程度である。この現状を考慮すれば、沿岸警備隊はさらに大きな任務を担うべきであり、また、事実そのようになっている。31
 米海軍及び米沿岸警備隊の連携をより緊密にする方法に関しては、1998年9月21日の海軍作戦部長と沿岸警備隊長官による共同政策声明で概要が発表されている(2002年末に改訂された)。この政策声明の目的は、「海軍と沿岸警備隊が両者の任務と職務を相互に支援できるようにする」ことであった。32 自国艦隊は「財政的に可能で順応性があり、共同運用することができ、さらには機能を相補できる水上戦闘艦と主力巡視船から構成されている。・・・(中略)・・・必要に応じて共通の機器やシステムの設計、作戦計画、訓練、兵站の調整も行う。海軍は、さまざまな海軍任務に柔軟に対応できる、高性能多目的水上戦闘艦を提供できる・・・(中略)・・・一方、沿岸警備隊は、平時及び緊急時の沿岸警備任務に即応可能な汎用戦闘艦として、比較的小型で喫水の浅い巡視艇を提供できる。自国艦隊に所属する全ての艦船及び航空機は、共同作戦行動が可能な体制が整っている・・・」”33 米海軍としては、退役した小型フリゲート艦に替わる船艇を保有しておらず、これらを沿岸警備隊の船艇が補ってくれることを期待している。一方、沿岸警備隊は現在、船舶、航空機、及びC41のシステムを統合して従来の巡視船や航空機のリニューアルを図る、新しい「遠洋」プログラムを開発中であり、自国艦隊の任務を遂行することにより、このプログラムを進展させることができる。「沿岸警備隊は海軍ではなく、独自のアイデンティティと目的を持った、他と一線を画する部隊である」と沿岸警備隊長官が述べたにもかかわらず、海軍と沿岸警備隊は双方のニーズに迫られ、運用面での両者の協力関係は今後さらに強まるだろう。34
 
アジア太平洋の海事運用上の協力(APMOC)−海上テロリズムから「海を護る」
 前の概要で述べた通り、海上テロリズムの脅威は広範囲に及び、また増大している。35(過激化が見られる洋上での海賊行為は、海上テロリズムと重なる点が多く、過去10年の間に大きくクローズアップされてきた。)港湾及び領海内における海上テロリズムや海賊行為の脅威は、その大部分が国家レベルで対処しなければならない問題である。従って、海軍と沿岸警備隊との連携が重要であることは前に強調した。しかし、残りの部分については世界レベルでの取り組みが必要である。現時点ではIMOや地域の輸送機関による取り組みが進行中であり、最近ではAPECが輸送セキュリティ・イニシアティブを打ち出し、テロ対策としての港湾、コンテナ、及び船舶の保安に関する世界標準を設定している。にもかかわらず、地域レベルでは未だに対応策がとられていない。地域が協力して、海上、特にアジア太平洋地域の航路帯及び要衝地点を航行中の船舶に対するテロの脅威に対処することが必要である。
 今日までの約10年間、海洋の信頼醸成と透明性の確保に向けて議論が重ねられてきた。機は熟している。今こそ成果を集約し、海事運用面で協力して「海を護る」というコンセプトを実行に移し、同地域の極めて重要な航路帯及び要衝地点に対する海上テロなど、新たな脅威に立ち向かう必要がある。
 地政学的には、海事運用に関する各国の協力は3つの基盤の上に成り立っている。すなわち、海上テロリズム及び海賊行為という共通の敵、航路帯の保安という共通の目標(石油、ガス及び貿易製品の安定供給は東アジア経済の発展と繁栄の鍵を握っており、その重要性はさらに高まりつつある)、及び初期の海事協力に不可欠な、海洋に関する相応の知識と相互の信頼である。これらが得られたのは、海洋の信頼醸成措置に依るところが大きい。海軍は過去10年間、特に交流や表敬訪問に力を入れてきた。実際、アジア太平洋地域では、海事運用面での協力活動の先がけともいえる海洋イベントが相次いで実施されている。例えば日本、インド両国の艦船による東南アジア地域の海賊対策を目的とした合同演習や相互協力、インドネシア、マレーシア及びシンガポールの合同海賊パトロール、米国海軍とインド海軍の協力(対海賊パトロールにおける協力を含む)、多国間的性格の強い大規模地域軍事演習(コブラゴールド、CARAT等)を挙げることができる。
 新たに重点が置かれているアジア太平洋の海事運用面での協力を成功させるためには、ターゲットを絞り、調整に努め、多国間で協力し、相互運用を可能にするよう努めなければならない。ペルシャ湾と北東アジアの間に位置する航路帯は極めて長距離であるが、そのどこに限られた海軍(おそらく沿岸警備隊)部隊を投入するべきか検討する必要がある。論理的には、海上テロリスト(海上における過激な海賊行為も同様)の脅威に最もさらされている地点は航路帯及び要衝地点である。まずこの地点のパトロールが必要であろう。地理的には、マラッカ海峡の西の入口から東の入口にかけてのパトロール(及び特定の大型船の護衛)をまず行うのがベストであろう。ペルシャ湾出口からスマトラにかけて長距離にわたって開放された航路、及びシンガポール海峡から南シナ海を経由して北東アジアに至る航路においては、海軍及び沿岸警備隊に長距離船舶を保有する国家が定期的に通航及びパトロールを行うよう、緩やかに調整することを旨とした非公式の合意を取り付けるのが妥当である。無論、対象として挙げたこれら領域においては、多国籍軍を編成し、作戦面でより一層の調整を行い、最低でも基本的な通信方式の互換性は確保する必要がある。
 地政学的という新たな見地に立った共通の脅威、航路帯の保安に対する共通の関心、及び海洋のCBMの成果としての地域海軍の理解向上など、太平洋における海事運用面での協力への移行に向けて議論が重ねられている。何はともあれ、地域国家はまず海事運用面での協力を公式化するための方法(及び予算)について詳細を詰める必要がある。近年における発展、歴史的な地域闘争、領地をめぐる紛争が続いているにもかかわらず、また、地域規模の安全保障フォーラムがARFという形で初めて結実したにもかかわらず、アジア太平洋地域には合同の軍事司令組織が編成されておらず、近い将来も編成される見込みがない。欧州で「常設海軍部隊」の設置と運用が実現したのは、NATOのこのような構造によるものであった。正規の「太平洋常設海軍部隊」の構想すら存在しない理由は、こうしたNATOのような構造が存在しないためであると考えられる。とはいえ、アジア太平洋における海事運用面での協力体制(APMOC)は、常設海軍部隊とはいかないまでも、極めて重要な航路帯及び要衝地点における海上の安全を確保するには十分な援助を提供できるであろう。
 アジア太平洋における海事運用面での協力を取りまとめるための方法(及び予算)について、速やかに詳細を定めるためには、当面の間3つの方針が考えられる。これらを単独で用いても複数を組み合わせてもよい。まず第一の方針は、非公式(「トラック2」)のCSCAP Maritime Cooperation Working Groupがこの件を最優先事項に含め、次回2004年に開催される西太平洋海軍シンポジウム(WPNS: Western Pacific Naval Symposium)に議題として採用してもらうことを目標とする。(実際、同件は既にWPNSで議題となった2つのアクションアイテム、すなわちSLOC保安のための多国間協力、及び海軍による防護と整合している。)第二の方針は、次回の海軍の首脳レベル会議において、このイニシアティブの具体化について討議してもらうことを目標とする。同会議は隔年で開催され、次回は2004年にシンガポールで開催が予定されている。WPNSは非公式で、かつ各国の主立った海軍首脳陣のすべてが参加しているという利点がある。一方、WPNSは年1回開催と頻度が低いため、緊急を要する海上テロリズム問題についていけないという欠点がある。第三の方針は、おそらく他の方針と併行で進められるだろうが、CSCAP Maritime Cooperation Working Groupが、2004年春に開催されるCBMに関する中間会合に基本案を持ち込むことである。この会合は公式(トラック1)レベルのもので、外交官を団長とする代表団を随行させたものとなる。したがって、海事運用上の協力向上のための基本案を具体化し、推進させるのに最適である。2004年春のCBMに関するARF中間会合の開催中に、1998年10月の会合のときと同様、1日だけ海事専門家による会合もスケジュールに組み入れるべきである。協力の公式化のスキームでは、CSCAP Maritime Cooperation Working Groupが作成した基本案に対してWPNS及びARFが検討を加え、さらに内容を煮詰めた上で承認を行う。さらに、拡大されたアジア太平洋における海事運用面での協力体制は、地域各国の海軍が拠出した戦力が目下の海洋テロ対策に振り向けられているかどうか、地域の航路帯の安全を確保するために使われているかどうか、チェック機能を果たすことができる。地域内の各国は、さらに航路帯への依存度を高めつつある。このような状況の下、こうした協力活動は地域全ての国の経済にとってプラスとなり、ひいては「海を護る」というコンセプトの実現につながるはずである。
 
結論
 アジア太平洋地域における航路帯の保安環境は、テロリズムをはじめ海賊行為、麻薬密輸入、不法入国など、広範囲にわたる複雑な「海洋における法と秩序」問題に脅かされている。しかし、最近になって、地域が共同でテロリズムや他のさまざまな問題に対処し、国家間の協力を強化して海軍と軍以外の海事機関(沿岸警備隊など)との連携により航路帯を保安するという認識が高まっている。国家や地域の協力を強化することは、アジア太平洋における航路帯の保安環境への脅威に対応し、ひいては「海を護る」上で、極めて重要な鍵を握るだろう。
 
参考文献
1 "Terrorism from the Sea," Naval Forces, 6/2001, Vol. XXII, pp. 7-8.
2 "UK Warships Go On Alert after Attack Warning," Financial Times, June 12, 2002.
3 Gribbin, Anthony, "Seaports Seen As Terrorism Target," Washington Times, January 22, 2002.
4 Scott, Richard, "USN Ups Tempo for Anti-Terrorist Force Protection," Jane's Defence Weekly, January 9, 2002, pp. 28-29.
5 Simon, Richard and Sahagun, Louis, "Officials Propose Series of Steps to Tighten Security at Seaports," Los Angeles Times, December 7, 2001.
6 McMichael, William H., "Navy on Lookout for Pirates in Indonesia," Navy Times, January 28, 2002, p. 10.
7 McMichael, William H., "U.S. Vessels Patrol for Pacific Pirates," Navy Times, June 17, 2002, p. 28; India and U.S. 'Free to Patrol Malacca Strait', The Straits Times, April 24, 2002.
8 Washington Times
9 Ibid.
10 "FBI Chief: Suicide bombers Will Hit U.S.," CBS News.com, May 20, 2002.
11 "House Passes Maritime Bill," Inside the Navy, June 10, 2002, p. 19.
12 Conroy, Joe, "Maritime Homeland Defense Team" Armed Forces Journal International, January 2002, pp. 44-47; "Border Security Initiative Boosts Coast Guard Funds," AFISNEWS, January 30, 2002
13 "Coast Guard Port Security Plans Taking Shape; Navy may Play Role", Inside the Navy, January 28, 2002; "US Seeking to Extend Cargo Security," Wall Street Journal, January 7, 2002, p. A10.
14 "U.S. Agents Going to Singapore," Washington Post, June 5. 2002, p. E2; "U.S. in Efforts to Make Cargo Shipping Safer," Financial Times, May 22, 2002.
15 "Maritime Force Protection with No Risk to Personnel," Naval Forces, 6/2001, Vol. XXII, p. 15.
16 Watkins, Eric, "Shipping Fraud Heightens Terror Threat," BBC News, February 6, 2002.
17 Wood, Daniel B., "America's Ports Vulnerable, Even with More Patrols," Christian Science Monitor, December 26, 2001
18 Posse Comitatus Actの規定にはさまざまな解釈がある。米国内では、州兵の部隊は、州知事の通常の管轄下にあり連邦の管轄下に置かれていない場合は法執行の任務を遂行でき、事実、過去から現在に至るまでそうしてきた。海外では、米国防総省及び連邦裁判所は、当該規定が米国領域外では適用されないとしているが、DoD Directive 5525.5により国防長官又は国防副長官が特定の例外を認めた場合を除き、米国防総省は、現在まで当該規定を米国領域外でも遵守してきた。Maj.Jeff Colwell, USMC, pp.4-5、未公表の論文による。
19 VADM Thomas Fargo, U.S. Navy, and RADM Ernest Riutta, U.S. Coast Guard, "A National Fleet for America," U.S. Naval Institute, Proceedings, April 1999, pp. 45-51.
20 See GAO/T-RCED-00-116, U.S. General Accounting Office, Coast Guard: Strategies for Procuring New ships, Aircraft and other Assets, Testimony of John H. Anderson, Jr., to Sub Committee on Transportation, Committee on Appropriations, US House of Representatives, March 16, 1999; Admiral James M. Loy, "The Coast Guard in the 21st Century," Joint Forces Quarterly, NDU, Spring 1998, pp. 9-16.
21 GAO/RCED-97-110, US General Accounting Office, Coast Guard. Challenges for Addressing Budget Constraints, May 1997, p. 15.
22 米沿岸警備隊の役割及び任務に関する、海軍長官及び海軍作戦部長からInteragency Task Forceへの声明、運輸副長官宛ての1999年10月12日付SECNAVの書簡による。
23 Colwell.
24 Fargo and Riutta, p. 49.
25 米沿岸警備隊のCdr. Lou Orsiniより著者に宛てられた1999年10月18日付の覚書。
26 Loy, p. 12.
27 U.S. Coast Guard, "Coast Guard Contributions to National Security"、日付なし、要約。
28 Truver, Scott C., "A Navy-Coast Guard Renaissance?" Armed Forces Journal international, November 1999, pp. 30-36; Loy, pp. 12-13.
29 "Coast Guard Contributions to National Security"
30 米沿岸警備隊の役割及び任務に関する、Interagency Task Forceに対する海軍長官及び海軍作戦部長の声明。
31 George, Trevor, p.34、役割及び任務に関する討議については、Holzer, Robert, "U.S. Navy, Coast Guard Spar over Deepwater," Defense News, August 23, 1999, p. 3及び“Troubled Waters: Turf Battle Brewing,” in Jane's Defence Weekly, March 24, 1999, pp. 23-25を参照のこと。
32 Fargo and Riutta, p. 49.
33 "Navy, Coast Guard Sign Joint Policy on National Fleet," Inside the Navy, September 18, 1998, pp. 4-5.
34 Loy, p. 10; Bender, Bryan, "GAO Bears Down on Deepwater Plan," Jane 's Defence Weekly, November 11, 1998, p. 8; Hoizer, Robert, "US Navy Seeks Closer Ties with Coast Guard Operations," Defense News, November 1, 1999, p. 26.
35 詳細については、2002年2月18-19日、韓国のソウルで開催されたCSCAP Working Group on Maritime Cooperation第1回会合において発表した著者の論文“Maritime Terrorism”を参照のこと。







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