日本財団 図書館


1-2 造船各社の技能継承に関する問題認識
 アンケートによれば、既にベテラン世代の退職が始まっている大手では、技能水準が以前よりも低下していると感じている企業が全体の3分の1に達するなど、造船業各社とも技能継承に関しては問題との認識を持っている。
 技能水準が向上しない理由としては、「ベテランの減少による技能レベルの低下」に加え、「技能継承の機会がないこと」、「技能水準向上に対する意欲の弱さ」などが挙げられている。中小造船、協力事業者では、加えて指導者、施設の不足を回答する社が多い。
 また、技能水準の低下に対する危機感から研修の機会や施設の充実について、約8割の社が何らかの必要性を感じている。
 このことからすると、造船業の技能継承は、特に中小造船・協力事業者については、自社だけでは解決困難な構造的な問題であり、業界を挙げての対処が必要な状況にあると言える。
<関連データ>
・技能水準についての評価(アンケートQ2)
構成比 造工 中造工 日造協 全体
1. 経年的に向上している 10.3% 13.6% 22.1% 17.3%
2. 同じレベルを維持している 48.3% 54.3% 53.8% 53.3%
3. 以前よりも低下している 34.5% 25.9% 21.2% 24.8%
4. よくわからない 0.0% 1.23% 0.0% 0.47%
無回答 6.90% 4.94% 3% 4.21%
 
Q2 技能水準向上 構成比
(拡大画面:39KB)
 
・技能水準が向上しない理由(アンケートQ3)
回答率 造工 中造工 日造協 全体
1 ベテランが減り、若手が多く全体の技能レベルが低下した 48.3% 27.2% 23.1% 28.0%
2 レベルの高い技能者技能を継承する機会がない 37.9% 54.3% 51.0% 50.5%
3 レベルの高い技能を指導できる人材がいない 10.3% 25.9% 14.4% 18.2%
4 外注化による社内技能レベル低下 13.8% 17.3% 12.5% 14.5%
5 標準化により技能向上仕事の場が減った 10.34% 9.88% 14.4% 12.1%
6 技能研修場がない 3.45% 29.6% 23.1% 22.9%
7 技能水準向上に対する意欲が弱い 27.6% 38.3% 17.3% 26.6%
8 必要な設備投資ができない 6.90% 24.7% 16.3% 18.2%
9 その他 10.34% 3.70% 9.62% 7.48%
 
Q3 技能水準が向上しない理由 回答率
 
・研修の機会や施設の充実について(アンケートQ4)
構成比 造工 中造工 日造協 全体
1. 是非そうしたい 6.7% 12.3% 14.4% 12.6%
2. 出来れば、そうしたい 56.7% 56.8% 70.2% 63.3%
3. その必要はない 26.7% 8.6% 3.8% 8.8%
4. よくわからない 0.0% 3.7% 1.9% 2.3%
無回答 10.0% 18.5% 9.6% 13.0%
 
Q4 研修の充実 構成比
 
1-3 造船業における技能継承の課題
 以上より、造船業における技能継承の課題は以下のように整理される。
 
(1)2万人の大量採用新人に対する教育
 現在我が国造船業の従業員の最も多くを占める団塊の世代は、間もなく退職を迎えるが、実はこの世代が、我が国造船業の高い生産性と高品質を支えており、大量退職に伴う新人の早期戦力化と技能のスムーズな継承が差し迫った大きな課題と言える。
 アンケート結果から推計すると、退職が従業員の4.5%/年で進んでいくのに対して、最近の新人の採用状況は、大量建造を反映してコンスタントに進められているが、従業員の3%/年程度であり、退職者数の2/3に抑えられている。我が国の造船業の総従業員数は約7万人であり、アンケート結果より推計した退職・採用比率を乗じると、今後10年間に退職約3万人、採用約2万人が見込まれ、この数字からも新人の早期戦力化の必要性が高いことがわかる。
 
<関連データ>
・新人採用数(アンケートQ8、Q9、Q10)
 
Q8. 過去5年間の新人採用数
実数 新人採用
5年(a)
年平均(b) 現役技能者
総数(c)
b/c
造工 1,451 290 11,129 2.6%
中造工 422 84 2,323 3.6%
日造協 791 158 4,707 3.4%
全体 2,664 533 18,159 2.9%
 
Q10 今後5年間の新人採用の見通し
  新人採用
5年(a)
年平均(b) 現役技能者
総数(c)
b/c
造工 1,635 345 11,129 3.1%
中造工 396 68 2,323 2.9%
日造協 1,000 200.9 4,707 4.3%
全体 3,031 613.9 18,159 3.4%
 
Q9. 新人採用計画(今後5年間)
実数 造工 中造工 日造協 全体
1. 毎年定期的 86.7% 9.9% 12.5% 21.9%
2. 毎年ではないが定期的 0.0% 19.8% 15.4% 14.9%
3. 不定期に採用 3.3% 46.9% 58.7% 46.5%
4. 計画、見通しなし 0.0% 16.0% 9.6% 10.7%
無回答 10.0% 7.4% 3.8% 6.0%
 
Q9 新人採用計画(今後5年間)







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION