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7. バリアフリー化による外出行動の変化
 船や港のバリアフリー化による外出行動の変化についてみると、「外出する範囲がひろがる」が32.2%で最も多く、次いで「島外への外出が増える」が30.1%となっている。
 年齢別にみると、年齢が高くなるほど「1人で外出できるようになる」をあげる人の割合が高くなり、一方、「島外への外出が増える」の割合は少なくなっている。
 
図5-7-1 バリアフリー化による外出行動の変化(複数回答 n=928)
 
図5-7-2 バリアフリー化による外出行動の変化(地区別)
 
図5-7-3 バリアフリー化による外出行動の変化(年齢別)
 
 障害の種類別にみると、歩行や階段の昇り降りに何らかの障害を有する人では、いずれの項目においても、バリアフリー化によって外出行動に変化があると回答した人が多い。視覚に何らかの障害を有する人では、「外出する範囲ひろがる」や「1人で外出できるようになる」をあげた人の割合は全体と比べて高いが、一方、「島外への外出が増える」の割合は低くなっている。
 次に障害の程度別にみると、「外出する範囲がひろがる」をあげた人は「歩行には差し支えないが階段の昇降はきつい」人や「1人での歩行は困難(介助者が必要)」な人、「よく聞こえないときがある」人や「ほとんど見えない(外出はできる)」人で多い。
 「島外への外出が増える」については、「車いすを使用している」人で多くなっている。
 また「1人で外出できるようになる」については、「歩行には差し支えないが階段の昇降はきつい」人や「1人で歩行は困難(介助者が必要)」な人、「ほとんど見えない(外出できる)」人で多くなっている。
 
図5-7-4 バリアフリー化による外出行動の変化(障害の種類別)
 
図5-7-5 バリアフリー化による外出行動の変化(障害の程度別)
 
【外出する範囲がひろがる】
 
【島外への外出が増える】
 
【1人で外出できるようになる】
 
8. 自由回答
 利用しやすい船と港の実現に向けた自由回答では、203件の意見があげられた。その中の代表的な意見を、以下にあげる。
 ハード面については、問13と同様に「タラップの階段や傾斜を緩やかにする」が11件、「乗降用の昇降機を設置する」が11件、「乗船経路へ屋根を設置する」が10件など、船の乗降に関するものが多くあげられた。また「切符を簡単に買えるようにする」も10件あげられた。ソフト面では、港や旅客船ターミナル、船舶において「係員による案内や介助を充実させる」が12件あげられた。
 このほか、「島民の意見をきいた船や港づくりを進めるべき」との意見が12件あり、港や旅客船ターミナル、船舶のバリアフリー化を進めるにあたって、島民や高齢者、障害者のニーズにあった船や港づくりが求められている。
 
*タラップの階段や傾斜を緩やかにする
・上部からの下船が広くて2重3重にも下船出来ますがタラップが急な為潮が低い時しか使用出来ないので、満潮の時でも使用出来る様に空港の様な長いタラップを作って使用したら安心して下船乗船出来ると思う。今更船の改造も出来ない事でしょうが、もう少し考えて設計すべきです。(北薩地区、70歳代、男性)
・乗下船の際の不便には毎回考えさせられます。船荷物の積下し荷の作業場を通過するので危険に晒されながら長距離歩かなければならず、やれやれの後に、急勾配のタラップが待っている始末です。(奄美地区、70歳代、男性)
 
*乗降用の昇降機を設置する
・島に来る定期船は大型なので階段の上り下りが達者な老人でもきついといいます。客室の広場近くまでエレベーターがあれば老人の利用が多くなると思います。隣りの島々ともいろいろな交流がありますのでたのしい交流が盛んになると思います。(奄美地区、70歳代、女性)
・将来年老いて行き今の船内までの距離を考えると体力に自信がない。ぜひとも年配者だけ、身体の不自由な人だけでもよいのでエレベーターを考えてほしいと思います。(奄美地区、40歳代、女性)
 
*乗船経路への屋根の設置
・定期船と待合所の距離が遠いと悪天候の時は荷物も身体もずぶ濡れとなり折角の旅行も船旅も悪いイメージのみが残り二度と船旅はしたくない気持になる。各港とも今後の大きな課題である。(奄美地区、70歳代、男性)
 
*切符を簡単に買えるようにする
・お盆、正月等帰省客の多い時、何時間も前から並んで切符を買う状態を無くすような船の運航をしてほしい。(北薩地区、70歳代、女性)
・利用される方にとって気の毒に思うのは夏休み中の運航です。会社の都合で大変と思いますが島外からの客の整理券を頂くのに長時間並ばねば切符が手にできないのは、なんとか効率よい方法を考えて頂けたらといつも思います。整理券なしで乗れたらよいのにと思いますが、これが出来なければ短時間並んで買えることができるようお願いいたします。(北薩地区、70歳代、女性)
 
*ターミナルや船内において係員による案内・介助の充実
・乗船の際、船内で車いすを使用するかどうか聞いてくれるか案内係りを分る様にしてくれると有がたい。(奄美地区、60歳代、男性)
・私は船での移動を願ってはいるが、現実的に白杖をついて、荷物をもってという移動が困難です。空港のように乗船の時は荷物を預かり、下船時にターミナルビルで荷物を引き渡すシステムなどあれば高齢者や障害者も利用しやすくなります。早く客船のユニバーサル化を導入して欲しいです。視覚障害者の場合、乗船まで鹿児島のガイドヘルパーが誘導しますが、船の中では自分1人になります。船内客室乗務員にもガイドヘルパーの心得のある人がおれば安心です。わざわざ資格を取らなくてもいいですから、スタッフ研修の内容に加えてみるのはいかがでしょうか。(奄美地区、40歳代、女性)
・転勤で離島にきましたが初めて1人で船に乗るとき、船の乗り場はどこなのか、切符はどこで買うのかなどの案内が見あたらず不安になりました。もう少し観光客や島外の方がわかりやすい案内が必要だと思います。又、天候によって急に出航時刻が変更になっていて定刻に行ってみたら出航したあとだったりして、海上タクシーで帰島した事もあります。昔から住んでらっしゃる方はわかりきった事でも私達にはわからない事、知らない事もあるので誰にでもわかる案内、放送の充実をお願いしたいと思います。(奄美地区、40歳代、女性)
 
*島民の意見をきいた船や港づくりを進めるべき
・役所(運輸局)は現地も見て歩き、現場も見て歩いてほしい。島民の願いも聞いてほしい。(熊毛地区、70歳代、女性)
・観光客中心でなく混雑が予想されるお盆など帰省客は故郷へ帰るのが苦痛になります。観光客も大切ですが屋久島に暮す島民の為の客船を主になる様によろしく御願いします。(熊毛地区、70歳代、男性)
・船の大型化や高速化が図られる中、観光客等の増加で島の活性化があり大変いいことと思います。しかし、少子高齢化が他地域と比較して高い当村であります。特に高齢化はある面では健康で長寿者が多いということで自慢していいと思いますが、一たん病気になり本土の病院に診療するため出かけます。必ず船に乗らなければいけないのです。島に住む者の利便を考えると、短時間で安全な船の確保が大事です。今後共いい港、船の実現に向けてご検討ください。(北薩地区、60歳代、男性)
・往時の船とちがって改善もすすんでいると思います。高齢者や障害者、幼児等の視点からの機能も備え改善をすすめて欲しい。ささいなことでもバリアーとなります。当事者でなければわかない苦痛を、いま痛感させられています。(奄美地区、70歳代、男性)
 
*その他
・身障者用の部屋ほしい。(奄美地区、60歳代、男性)
・先ず船の階段を無くすること。桟橋から直接船内に行けるようにすること。定期船にはすべての階に行けるようエレベーターをつけること。階段では食堂の利用も身体障害者は不便である。(奄美地区、50歳代、男性・女性)
・始発港である鹿児島港、乗降客と荷役用作業車が同じ処を通って居る為危険を感じる。待合室を2階に設置し乗降橋を付けるか作業車と離れた場所から乗降出来るように改善を希望します。回答者が健状である為、船や港の状況で不便を感じないが身障者の立場から考えた場合、スロープやエレベーターが設置出来れば大いに希望するところです。(奄美地区、60歳代、男性)







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