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2. 地方自治体へのアンケート調査結果
 
 鹿児島県内の離島に位置する市町村を対象としてアンケート調査を実施し、各市町村におけるバリアフリー化の取り組みや、港湾ターミナル等におけるバリアフリー化の現状と問題点、今後の取り組みの方向性などを把握した。
 
(1)調査の概要
 対象となる28市町村について、郵送法・自記式にて実施した。回収状況は、有効回答数27市町村、回収率は96%となっている。また、各港湾におけるバリアフリー化の現状については、鹿児島県港湾課からも回答を得て、集計の対象とした。
 
(2)調査対象市町村における交通バリアフリー化の取り組み
(1)市町村における交通バリアフリー化の所管部署
 全体の約8割にあたる22市町村では、交通バリアフリー化を所管する部署は決められていない。一方、所管部署がある5市町村では、それぞれ以下の課が所管している。
*屋久町:建設課
*十島村:船舶課
*宇検村:建設課
*龍郷町:地域整備課
*知名町:土木課
 
図4-2-1
市町村におけるバリアフリー化の所管部署
(n=27)
 
(2)市町村における交通バリアフリー化の取り組み
 交通バリアフリー化についての何らかの取り組みを行っているのは、全体の1/3にあたる9市町村である。
 
図4-2-2
市町村におけるバリアフリー化の取り組み
(n=27)
 
 具体的には、船舶、道路、公共施設における取り組みがあげられた。
 
■船舶におけるバリアフリー化対応
・第3セクターが運営する定期航路にエレベーターを設置。(里村)
・事業者と協議し、2002年10月にバリアフリーを考慮した新船を就航。(上甑村)
・2003年に就航した桜島フェリーの新船については、車両甲板から3階客室まで車いすの乗れるエレベーターを設置。客室・トイレは身障者用も設置。また、ターミナルビルは窓口の高さを低く改造し、点字ブロックやエレベーターを設置。(桜島町)
・船内にエレベーターを設置、トイレの段差解消。(三島村)
■道路のバリアフリー化対応
・歩道の段差解消。(出水市)
・町道の歩道部について、バリアフリー化を実施。(南種子町)
・道路の改修や整備等において、段差解消やスロープ等の設置。(屋久町)
・歩道と車道の段差解消。(和泊町)
■公共施設におけるバリアフリー化対応
・公共施設のドアの自動化。(和泊町)
・空港や港湾においては、待合室にスロープを設けることによって、車イス等の円滑な移動に対応できるよう設計している。(与論町)
 
(3)海上輸送のバリアフリー化に関する問題点
 本土と離島、あるいは離島相互間を結ぶ海上輸送のバリアフリー化において、各市町村が感じている問題点を質問したところ、13市町村から回答があった。
 そのうち、乗下船時における問題が最も多く、その他港湾施設における問題点等があげられた。
 
■乗下船時における問題点
・本土と離島を結ぶフェリーには、乗降口が左右ともに設けられているが、エレベーターは一方にしか設置されていない。(鹿島村)
・船の乗り降りに際し、障害者(特に車いす使用者)への対応が遅れている。(下甑村)
・名瀬港についてはボーディングブリッジが整備されているが、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島には、未だ整備がなされておらず、車イス等での乗り降りには不便を期している。(笠利町)
・定期船の乗降におけるバリアフリー化は、全船で改善がなされていないため、対応が必要である。(住用村)
・港におけるボーディングブリッジの整備をすすめてもらいたい。バリアフリー化は、就航船会社に対応をお願いしたい。(喜界町)
・外海離島のため、安定航路には船の大型化が必要であったが、船が大型化されたことにより、その乗降には時には70〜80段の階段を利用しなければならないこととなった。老人や障害者には特に苦痛となるので、ボーディングブリッジの設置が理想である。(和泊町)
・定期船乗降時、階段が高く利用しにくい船がある。(知名町)
・船舶の階段が高くて高齢者が負担を感じている。(与論町)
■港湾施設等における問題点
・港湾施設と定期船の整備に一貫性がない。(里村)
・旅客船ターミナル前での車の往来が激しく、なおかつ身体障害者用スロープに続く歩道が区分けされていないため、改善が必要である。(西之表市)
・港湾施設や船舶の構造上、限られたスペースで、トイレ、階段、船室のドアなどのバリアフリー化に対応することは難しい。(上屋久町)
・日除け・雨除対策が不十分である。(与論町)
■その他
・本航路に就航している船舶は法施行前に就航しており、バリアフリー化するには改造を要するため、その経費が問題である。(十島村)
・台風等が多いため、港湾施設への多額の設備投資が困難と思われる。(伊仙町)
 
(4)今後の海上輸送のバリアフリー化への取り組み
今後、離島部の海上輸送においてバリアフリー化に取り組みたいこととしては、具体的に3市町村から回答があったが、いずれもハード面でのバリアフリー化への取り組みがあげられた。
・舷門から遊歩甲板間の階段の移動手段。(十島村)
・ボーディングブリッジの設置。(和泊町)
・階段、エレベーターの改善。(知名町)
 
 また、「財政状況が厳しいため、現在のところ具体的な取り組みは検討していない。海上輸送施設は、国道や県道と同様と考えて、国または県が対応すべきである」(与論町)との意見もあげられた。
 
(3)調査対象港湾の属性
 鹿児島県内において離島航路が発着する港湾(以下「対象港湾」とする)のうち、27市町村および鹿児島県港湾課から、計40の港湾のバリアフリー化の現状について回答が得られた(同一の港湾でも複数の地区に離島航路が発着する場合には、それぞれ独立した港湾として集計した)。港湾管理者別にみると、「県管理の港湾」が21港、「市町村管理の港湾」と「県管理の漁港」がそれぞれ9港となっている。また「その他」では、市町村管理の避難港が1港ある(浦之前港)。
 なお、桜島町の新島においては、新島港と本土を結ぶ行政連絡船「しんじま丸」が島民の移動手段として使用されていることから、ここでは新島港を「対象港湾」に含めて集計を行った。また桜島港については、桜島〜鹿児島航路が本土間の航路となるため、港湾のハード面におけるバリアフリー対応状況では集計の対象外としているが、参考として対応等を記載した。
注)「行政連絡船」とは、慣例的な呼称として、定員12名以下の船舶による定期または不定期の航路事業のうち行政が運航する船舶を指す。「しんじま丸」は、新島における町民の交通の利便および町行政の円滑な振興を図ることを目的として町営により桜島・新島間に設けられた定期の海上渡船であり、木曜日と日曜日を除き2往復/日である。
 
図4-2-3 種別にみる離島航路の発着する港湾数(n=40)
 
(4)高齢者・身障者等の利用状況
(1)高齢者の利用状況
■全乗降人員に占める高齢者の割合は、20%〜40%未満が多い
 対象港湾の乗降人員全体のうち、65歳以上の高齢者の占める比率は、「20%〜40%未満」が最も多くなっている。また、「60%以上」との回答も全体の約1/4ある。
 
図4-2-4 各市町村における対象港湾の高齢者の占める割合(n=19)
注)以後、市町村単位の集計を行う場合は、対象港湾の立地しない8市町村を除く19市町村を対象とする。
 
(2)身障者等の利用状況
■車いす利用者については、半数の市町村が「ほとんどない」と回答
 身障者等の利用状況についてみると、車いす利用者では「ほとんどない」が約半数を占めており、他の障害者と比べて利用頻度は低い。一方、車いす利用者以外の肢体不自由者では「時々」との回答が6割以上あり、相対的に利用頻度が高い。
 
図4-2-5 障害別にみた身障者等の利用頻度(n=19)







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