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3. 交通バリアフリー化への取り組みの現状
 交通バリアフリー法では、公共交通事業者等に対し、旅客施設および車両等における移動円滑化実績等を報告することを義務づけている。報告は毎年5月31日までに行うこととなっており、2001年が初年度であった。以下では、2001〜2003年各年の3月末時点における旅客施設および車両等の移動円滑化実績を比較する。
 
(1)旅客施設の移動円滑化実績
 2003年3月末において、1日平均利用者数が5,000人以上の旅客船ターミナルの総施設数は全国で9施設であった。このうち、移動円滑化基準への適合状況を「段差の解消」に基づいてみると、基準適合施設は前年の3施設から5施設に増加し、全体に対する割合は半数を上回った。「誘導用ブロックの設置」については、前年の3施設から4施設に増加した。また、前年まで実績がなかった「身体障害者用トイレの設置」も1施設となった。
 旅客船ターミナルと他の旅客施設の移動円滑化実績を、全体に対する基準適合施設の割合で比較すると、「段差の解消」は、バスターミナルより低いが、鉄軌道駅や航空旅客ターミナルを上回っている。「誘導用ブロックの設置」では、鉄軌道駅やバスターミナルを下回っている。「身体障害者用トイレの設置」は、バスターミナルや航空旅客ターミナルを大きく下回り、鉄軌道駅とともに低い水準にある。
 
表2-3-1 旅客施設の移動円滑化実績(段差の解消)
  総施設数 移動円滑化基準(段差の解消)に
適合している旅客施設数
全体に対する
割合
2001 2002 前年比 2003 前年比 2001 2002 前年比 2003 前年比 2001 2002 2003
旅客船
ターミナル
9 8 89% 9 113% 3 3 100% 5 167% 33.3% 37.5% 55.6%
鉄軌道駅 2,775 2,742 99% 2,739 100% 795 902 113% 1,068 118% 28.6% 32.9% 39.0%
バス
ターミナル
42 44 105% 45 102% 25 30 120% 32 107% 59.5% 68.2% 71.1%
航空旅客
ターミナル
22 21 95% 22 105% 1 2 200% 4 200% 4.5% 9.5% 18.2%
注1)各年3月末日現在
注2)「段差の解消」については、交通バリアフリー法に基づく移動円滑化基準第4条(移動経路の幅、傾斜路、エレベーター、エスカレーター等が対象)への適合をもって算定
注3)航空旅客ターミナルについては、身体障害者が利用できるエレベーター・エスカレーター・スロープの設置はすでに2001年3月31日までに100%達成されている。
資料)「公共交通事業者等からの移動円滑化実績等報告書の集計結果概要」(国土交通省)よりUFJ総合研究所作成
 
表2-3-2 旅客施設の移動円滑化実績(誘導用ブロックの設置)
  総施設数 移動円滑化基準(誘導用ブロックの
設置)に適合している旅客施設数
全体に対する
割合
2001 2002 前年比 2003 前年比 2001 2002 前年比 2003 前年比 2001 2002 2003
旅客船
ターミナル
9 8 89% 9 113% - 3 - 4 133% - 37.5% 44.4%
鉄軌道駅 2,775 2,742 99% 2,739 100% - 1776 - 1,988 112% - 64.8% 72.6%
バス
ターミナル
42 44 105% 45 102% - 24 - 26 108% - 54.5% 57.8%
航空旅客
ターミナル
22 21 95% 22 105% - 7 - 8 114% - 33.3% 36.4%
注1)各年3月末日現在
注2)「視覚障害者用誘導用ブロックの設置」については、交通バリアフリー法に基づく移動円滑化基準第8条への適合をもって算定
資料)「公共交通事業者等からの移動円滑化実績等報告書の集計結果概要」(国土交通省)よりUFJ総合研究所作成
 
表2-3-3 旅客施設の移動円滑化実績(身体障害者用トイレの設置)
  総施設数 移動円滑化基準(身体障害者用トイレ
の設置)に適合している旅客施設数
全体に対する
割合
2001 2002 前年比 2003 前年比 2001 2002 前年比 2003 前年比 2001 2002 2003
旅客船
ターミナル
- 7 - 8 114% - 0 - 1 - - 0.0% 12.5%
鉄軌道駅 - 2,601 - 2,607 100% - 64 - 326 509% - 2.5% 12.5%
バス
ターミナル
- 43 - 45 105% - 3 - 14 467% - 7.0% 31.1%
航空旅客
ターミナル
- 21 - 22 105% - 4 - 10 250% - 19.0% 45.5%
注1)各年3月末日現在
注2)「身体障害者用トイレの設置」については、交通バリアフリー法に基づく移動円滑化基準第12〜14条への適合をもって算定
注3)総施設数については便所を設置している旅客施設のみを計上
資料)「公共交通事業者等からの移動円滑化実績等報告書の集計結果概要」(国土交通省)よりUFJ総合研究所作成
 
(2)旅客船等の移動円滑化実績
 旅客船については、2003年3月末の総旅客船数は1,116隻である。このうち、移動円滑化基準に適合した旅客船は2001年時点では全く存在していなかったが、2002年は2隻、2003年には23隻と大きく増加した。ただし、全体に対する割合は、2.1%にとどまっている。
 鉄軌道車両等の移動円滑化実績との比較では、全体の2割前後が基準に適合している鉄軌道車両や航空機と比較して、旅客船はかなり低い水準にある。ただし、基準適合車両等の対前年増加率でみると、2003年における旅客船の増加率が極めて高い。
 交通バリアフリー法において、旅客施設を新たに建設するとき、もしくは旅客施設について大規模な改良を行うとき又は車両等を新たにその事業の用に供するときは、当該旅客施設又は車両等を移動円滑化基準に適合させることが義務づけられている。基準適合義務に関する条項は、旅客施設については法施行の2000年11月15日から施行されたが、車両については、法律の施行に伴う経過措置として、法律の施行からおよそ1年半後の2002年5月から施行された。特に旅客船は、建造に長期間を要することから、鉄軌道車両等と比較して基準に適合した船舶の供用までに時間がかかり、2003年になって基準適合数が飛躍的に増加したものと考えられる。
 
表2-3-4 車両等の移動円滑化実績
  車両等の総数 移動円滑化基準に適合している
車両等の総数
全体に対する
割合
2001 2002 前年比 2003 前年比 2001 2002 前年比 2003 前年比 2001 2002 2003
旅客船 1,030 1,114 108% 1,116 100% 0 2 - 23 1150% 0.0% 0.2% 2.1%
鉄軌道車両 51,234 50,967 99% 51,136 100% 5,193 7,565 146% 9,922 131% 10.1% 14.8% 19.4%
バス 58,348 57,992 99% 58,424 101%                
 低床バス           2,877 5,105 177% 8,095 159% 4.9% 8.8% 13.9%
 ノンステップバス           1,289 2,294 178% 3,835 167% 2.2% 4.0% 6.6%
航空機 450 455 101% 465 102% 3 57 1900% 114 200% 0.7% 12.5% 24.5%
注)「移動円滑化基準された車両等」は、各車両等に関する移動円滑化基準への適合をもって算定
資料)「公共交通事業者からの移動円滑化実績等報告書の集計結果概要」(国土交通省)よりUFJ総合研究所作成
 
(3)基本構想の策定状況
 交通バリアフリー法に基づき市町村が作成する基本構想は、2003年12月10日現在、112市町村116基本構想が国土交通省に受理されている。この中には、乗降客数5,000人以上の旅客施設のない市町村も7市町(北海道室蘭市、遠軽町、北見市、山口県菊川町、島根県多岐町、山形県南陽町、新潟県糸魚川市)も含まれている。
 また、2002年6月における国土交通省の調査によると、今後の作成を予定している市町村を含めると594(その後作成した市町村を含む。以下同様)に上り、1日の利用者が5,000人以上である旅客施設が所在する市町村のうち、64%(573市町村中368市町村)が基本構想を作成済みあるいは基本構想の策定を予定していることが明らかとされた。
 鹿児島県内では、鹿児島市が基本構想を作成し、2003年3月28日に受理されている。







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