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(3)改正ハートビル法の概要
 
(1)法改正の概要
 2003年4月より、「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(以下「改正ハートビル法」とする)が施行された。ハートビル法は建築主への指導、誘導などの総合的措置を講じることによって、高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる建築物の建築を促進することを目的に1994年に成立したものである。法改正にあたり、建築物におけるバリアフリー対応の一層の促進を図ることを目的として、特定建築物の範囲を拡大し、特別特定建築物の建築等について利用円滑化基準に適合することを義務付けるとともに、認定を受けた特定建築物について容積率の算定の特例、表示制度の導入等支援措置の拡大を行う等の所要の措置を講じることが定められた。
 
(2)法律の趣旨
 改正ハートビル法は、高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる建築物の建築の促進のための措置を講ずることにより建築物の質の向上を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的としている。
 
(3)法律の対象
 改正ハートビル法では、改正前のハートビル法で対象となっていた特定建築物(病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、ホテル、百貨店等の不特定多数の者が利用する建築物)に加え、不特定でなくても多数の者が利用する学校、事務所、共同住宅等の用途の建築物にも対象範囲が拡大された。
 特定建築物に該当する交通施設として、「車両の停車場又は船舶もしくは航空機の発着場を構成する建築物で、旅客の乗降または待合いの用に供するもの」とされており、港湾の旅客ターミナル等も対象となる。
 
(4)法律の基本的枠組み
■建築主が講ずべき措置
 不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、身体障害者等が利用する特定建築物で、高齢者、身体障害者等が円滑に利用できるようにすることが特に必要とされるものは、政令によって「特別特定建築物」に定められている。
 特別特定建築物について、2,000m2以上の建築(用途の変更をして特別特定建築物にすることを含む)をしようとする者は、当該特別特定建築物を高齢者、身体障害者等が円滑に利用できるようにするために必要な政令で定める特定施設の構造及び配置に関する基準(以下「利用円滑化基準」とする)及び地方公共団体が条例により上記基準に付加した基準に適合させなければならないとされている。
 また、特定建築物の建築、修繕又は模様替え等を行うにあたっては、利用円滑化基準に適合させるために必要な措置を講じるよう努めなければならないとされている。
 
■認定建築物に対する支援措置
 利用円滑化基準を超え、かつ、高齢者、身体障害者等が円滑に利用できるようにするために誘導すべき国土交通省令で定める特定施設の構造及び配置に関する基準(以下「利用円滑化誘導基準」とする)に適合する特別特定建築物及び特定建築物の建築等をしようとする者は、当該建築物の建築等および維持保全の計画を作成し、所管行政庁の認定を申請することができる。
 バリアフリー対応に係る利用円滑化誘導基準に適合すると認定を受けた特定建築物に対しては、法改正以前より行われていた税制上の特例措置、低利融資、補助制度に加え、容積率の算定の特例や、認定建築物の敷地等に計画の認定を受けている旨を表示することができるといった支援措置がとられる。
 
■所管行政庁の責務
 所管行政庁とは、建築主事を置く市町村又は特別区の区域については当該市町村又は特別区の長をいい、その他の市町村又は特別区の区域内については都道府県知事をいう。
 所管行政庁は、特別特定建築物の建築もしくは維持保全をする者に対し、利用円滑化基準への適合に関する事項に関し報告させ、規定に違反している事実があると認めるときは、その是正のために必要な措置をとることを命ずることができる。
 
(4)鹿児島県福祉のまちづくり条例の概要
 鹿児島県では1999年3月に「鹿児島県福祉のまちづくり条例」を制定し、2000年2月にはこれに基づき「鹿児島県福祉のまちづくり条例 施設整備マニュアル」を策定している。
 
(1)目的
 福祉のまちづくりに関し、県、市町村、事業者及び県民の役割を明らかにするとともに、県の施策の基本方針及びこれに基づく施設等の整備その他必要な施策を定めることにより、福祉のまちづくりの総合的な推進を図り、もって県民の福祉の増進に資することを目的とする。
 
(2)対象施設
・公共的施設
 建築物、建築物以外の公共交通機関の施設、道路、公園等、建築物以外の路外駐車場
※建築物のうち、公共交通機関の施設には、港湾の旅客施設も含まれる。
※建築物以外の公共交通機関の施設にも、港湾の旅客施設が含まれる。
・特定公共用施設
 公共用施設のうち、高齢者、障害者等が安全かつ快適に利用できるようにするために整備を促進することが特に必要な施設
・公共輸送車両等
 一般の旅客の用に供する鉄軌道の車両、自動車、船舶等
 
(3)基本的枠組み
 公共的施設について、新築等(新築、新設、増築、改築、大規模な修繕、大規模な模様替え又は用途の変更)をしようとする者は、当該公共的施設を整備基準に適合させるよう努める、とされている。また、既存の公共用施設を所有し、又は管理する者についても、当該公共的施設を整備基準に適合させるよう努める、とされている。公共的施設の所有・管理者は、当該公共的施設が整備基準に適合していることを証する適合証の交付を受けることができる。
 また、特定公共用施設の新築等を行う場合には、工事着手の30日前までに届出が必要とされ、当該特定公共用施設が整備基準に適合しない場合、県は指導・助言を行うことができる。
 
2. 交通バリアフリー化に関する支援制度
(1)海上旅客輸送のバリアフリー化に関する補助制度
 海上旅客輸送のバリアフリー化の促進に向けた全国レベルの補助制度を整理すると、表2-2-1のとおりとなる。
 
表2-2-1 交通バリアフリー化に関する公的補助・融資等
制度名等 概要 実施主体 補助率等
離島航路船舶近代化建造費補助金(近代化バリアフリー化船建造費補助金) 離島航路整備法に基づく国庫補助対象航路で使用する船舶の近代化及びバリアフリー化を図るために船舶の代替建造を行う事業 国土交通省 バリアフリー化に係る工事費の50%
上記を除いた船価の10%
交通バリアフリー施設整備助成制度 旅客船ターミナルや旅客船などにおける車いす対応エレベーター等交通施設の設置に対する助成事業 交通エコロ
ジー・モビリ
ティ財団
助成対象経費の20%以内
共有旅客船のバリアフリー化施設にかかる支援 鉄道建設・運輸施設整備支援機構と共有建造する船舶のうち、バリアフリー対応の船舶に対する補助事業 鉄道建設・運輸施設整備支援機構 バリアフリー化のための追加的な建造費のうち事業団持分相当額に係る利息相当額を軽減
旅客船ターミナルの一体的なバリアフリー化事業 バリアフリー化に資する浮桟橋等の係留施設や、通路・照明・スロープ・手すり等に対する補助事業 国土交通省 (一般の港湾整備に準じる)
港湾利用高度化拠点施設
緊急整備事業費補助金
制度
民活法特定施設を整備する場合、高齢者・障害者に配慮した施設に対して補助率をかさ上げする制度 国土交通省 国と港湾管理者で7.5%
港湾の機能の高度化に資する中核的施設整備事業に関する融資制度 民間事業者(第3セクターを含む)が行う旅客船ターミナル施設等のバリアフリー施設整備事業に対する融資制度 日本政策投資銀行 金利・政策金利III、融資比率50%
資料)国土交通省ほか各実施主体ホームページよりUFJ総合研究所作成
 
(2)海上旅客輸送に関する運賃割引制度
 海上旅客輸送についての運賃割引制度については、表2-2-2のようになっている。ただし、これらの適用に対する国の補助等はなく、割引相当額は事業者の負担となっている。
 
表2-2-2 身体障害者および知的障害者の運賃割引制度
割引運賃の区分 券種 割引率
本人 介護者
1種 単独 2等、急行便にかかる1等、急行 50% -
介護者あり 2等、1等、特等、特別室、座席指定、寝台、急行、回数 50% 50%
定期 30% 30%
2種 単独 2等、急行便に係る1等、急行(101km-) 50% -
本人12歳未満 介護者あり 定期 - 30%
1種)第1種身体障害者:(1)両眼の視力がそれぞれ0.06以下の者、(2)両眼の視野がそれぞれ10度以内でかつ視野について視能率による損失率が90%以上の者、(3)両耳の聴力が耳介に接しなければ大声語を理解し得ない者、(4)両上肢を中手指関節以上でまたは両下肢をショバー関節以上で失った者、(5)両上肢または両下肢の機能を著しく傷害された者、(6)体幹の機能障害により起居、移動の困難な者、(7)心臓、腎臓、呼吸器または小腸の機能の障害により、社会での日常生活活動が著しく制限される者、(8)ぼうこうまたは直腸の機能障害により家庭内での日常生活活動が著しく制限される者、(9)前各号の障害の種類を2以上有し、その障害の総合の程度が前各号に準ずる者
2種)第2種身体障害者:第1種以外の身体障害者
資料)「一般旅客定期航路事業の運賃及び料金の標準設定方式」(日本旅客船協会)よりUFJ総合研究所作成







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