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はしがき
 本報告書は、当センターが日本財団の平成15年度助成事業として実施した「循環資源・リサイクル製品の海上輸送の促進に関する調査」の成果を報告書としてとりまとめたものであります。
 平成14年度には「離島における廃棄物等の処理・輸送に関する調査」において、長崎県の主要な離島を対象とした循環資源の海上輸送の促進、そのための条件等を検討しました。この調査より、循環資源の海上輸送の促進には、排出側とリサイクル側の両方について、問題点、対応策などを検討する必要があることが明らかになりました。
 また、循環型社会の形成のためには、全国規模での循環資源、リサイクル製品の輸送システムの構築が必要でありますが、現在は、中近距離からのトラック輸送が中心となっており、遠距離からの効率的かつ環境に配慮した輸送が求められております。
 特に、リサイクル産業を臨海部に集積させ、先進的な取り組みとして全国的に注目されている北九州エコタウンでは、リサイクル施設群の順調な稼動のためには、九州離島や関東などの広域圏での循環資源の安定的な収集やリサイクル製品の搬出が求められており、海上輸送の促進が課題となっております。
 本調査は、こうした背景を踏まえ、北九州市と九州離島、関東などの広域圏間における循環資源、リサイクル製品の輸送の現状、海上輸送へのシフトの可能性や条件を把握し、循環資源、リサイクル製品の海上輸送の推進のためのハード・ソフト両面の具体的な対応策を検討、提案することを目的に実施したものであります。
 調査の方法は、関係者等による調査委員会を設置して、北九州市及び九州離島や関東などの産業廃棄物中間処理業者、産業廃棄物収集運搬業者、港湾運送事業者へのアンケート、ヒアリング調査等により、北九州市への循環資源の海上輸送状況、ニーズおよび北九州市からのリサイクル製品の搬出状況、ニーズならびに輸送機関利用の条件を把握しました。さらに、それらを踏まえた海上輸送の促進方策を検討、整理の上、報告書としてとりまとめております。
 この報告書が関係者の方々にいささかなりともご参考になれば幸いに存じます。
 終わりになりましたが、本調査をとりまとめるにあたって終始ご指導を頂きました北九州市立大学 北九州産業社会研究所 池田 潔 助教授はじめ委員各位、関係官公庁並びに調査にご協力頂きました関係の方々に、改めて御礼申し上げます。
 
平成16年3月
財団法人 九州運輸振興センター
会長 田中浩二
 
循環資源・リサイクル製品の海上輸送の促進に関する調査
 
委員名簿
(順不同・敬称略)
 
委員長  池田 潔 北九州市立大学 北九州産業社会研究所 助教授
委員 安藤 祐 新日本製鐵(株)八幡製鐵所 総務部 開発企画グループ 部長代理
 〃  廣田隆治 三菱化学物流(株)九州支社 営業一部長
 〃  今井忠道 日鐵運輸(株)環境事業部長 副理事
 〃  春日尚公 日本通運(株)福岡支店 業務部 次長
 〃  白石 学 山九(株)九州エリア 環境事業推進部 九州地区担当部長
 〃  肥田幹也 日本貨物鉄道(株)九州支社 次長
 〃  川崎邦宏 阪九フェリー(株)取締役 九州営業部長
 〃  小塚 勉 (株)名門大洋フェリー 常務取締役 新門司港支店長
 〃  村中正道 オーシャン東九フェリー(株)取締役 北九州本店長
 〃  二宮一朗 鶴丸海運(株)北九州支店 小倉営業所 所長
 〃  江又俊雄 (株)ジェネック 取締役 営業開発担当 兼 営業第一部長
 〃  鹿子木公春 西日本ペットボトルリサイクル(株)代表取締役社長
 〃  徳原英利 (株)響エコサイト 代表取締役社長
 〃  新江 禎 北九州ELV協同組合 専務理事 事務局長
 〃  赤木 聡 長崎県 県民生活環境部 廃棄物・リサイクル対策課 課長補佐
 〃  松嶋義隆 北九州市 企画政策室 主幹(物流開発)
 〃  小林一彦 北九州市 環境局 環境産業政策室 次長
 〃  吉永高敏 北九州市 港湾局 企画部 計画課長
 〃  石崎仁志 九州運輸局 企画振興部長
    (河田守弘) 
 〃  金城史郎 九州運輸局 海事振興部長
 〃  北崎 保 九州運輸局 企画振興部 物流振興・施設課長
事務局 中園規詮 (財)九州運輸振興センター 専務理事
 〃    竹光 基 (財)九州運輸振興センター 調査役
 〃    山川康行 (財)九州運輸振興センター 調査役
調査機関 栃木 晃 (株)地域開発研究所 企画部・経済グループ 主任研究員
   〃    川口順子 (株)地域開発研究所 企画部 研究員
   〃    井上洋一 (株)地域開発研究所 企画部 研究員
 
( )は上記委員の前任者
 
北九州市における循環資源・リサイクル製品の海上輸送の促進に向けた提言
提.1 海上輸送促進方策
 北九州市の循環資源のリサイクル及び輸送に関わる官民の関係者の意向、関東、九州離島、沖縄において具体的に把握されたニーズ等を踏まえた北九州港における海上輸送促進方策は、以下の通りである。
 
図−提.1 循環資源・リサイクル製品の海上輸送の促進方策の全体像
 
I. 北九州市における必要機能の確保
 
(1)公共埠頭における必要機能の確保
◇「リサイクルポート荷役取扱基準」を策定し、取扱い可能な対象貨物の拡大や、荷役作業時の原則の変更を行う。
◇効率的な荷役のために、クレーンの設置を検討する。
◇廃棄物処理法、港湾管理条例の規制緩和を前提に、リサイクルポート背後に廃棄物の積替え・保管施設の機能を備えた上屋・野積み場の整備を検討する。
◇海面への循環資源のこぼれ、飛散の防止技術(こぼれ防止ガイド、マット、鉄板等)の開発、荷役後の掃除、届出等のルールを確立する。
 
図−提.2 公共埠頭における必要機能の確保(イメージ)
 
(2)パイオニアプロジェクトの推進
◇北九州港内で建設廃材の海上輸送の実証実験を行うことにより、こぼれ、飛散等の循環資源取扱上の問題点、課題の把握、対策の検討を行う。
◇北九州港と東京湾、九州離島、沖縄の公共埠頭との循環資源の海上輸送の実証実験を行い、技術、管理運営上の問題点、課題の把握を行う。
◇岸壁への一時仮置き、積替え・保管による荷役の実証実験を行い、効果、問題点等を検討する。
 
図−提.3 パイオニアプロジェクトの推進(イメージ)
 
(3)効率的なコンテナ輸送容器の検討
◇循環資源輸送用コンテナについて標準・汎用的な機能、容量等を検討する。また、経済的かつ円滑な利用が可能となるコンテナの所有・利用方式を検討する。
◇リサイクルポート推進協議会における全国的な検討、取り組みを提案する。また、循環資源の輸送の効率化・円滑化のシステムとして、国にも働きかけていく。
 
図−提.4 様々な循環資源の輸送用容器(イメージ)
 
II. 規制・制度の緩和
 
(1)「北九州リサイクル特区」の形成による規制緩和の推進
◇再委託条件の緩和、岸壁への直置き禁止の緩和など、循環資源の輸送に係わる規制緩和内容を検討し、国への提案を行う。
◇国が特区内で認めた規制緩和内容から北九州に適したものを検討し、「北九州リサイクル特区」として国に申請し、規制緩和を推進していく。
◇北九州市において、規制を緩和した構造改革特区の導入を図り、他地域にない循環資源の輸送を可能とすることが、競争力の確保において重要である。
 
図−提.5 「北九州リサイクル特区」の形成による規制緩和の推進(イメージ)
 
III. ネットワークの形成
 
(1)港湾連携による海上輸送ネットワークの形成
◇北九州港と相手港(東京湾港湾、九州離島港湾、沖縄港湾)の港湾管理者による連絡協議会を設立し、循環資源輸送における公共岸壁利用の問題点とその対策を協議することにより、公共岸壁利用の円滑化を図り、循環資源の海上輸送ネットワーク確立に結びつける。
 
図−提.6 港湾連携による海上輸送ネットワークの形成(イメージ)
 
IV. 北九州エコタウン・リサイクルポートのセールス展開
 
(1)混載・帰り荷の集荷システムの構築
◇循環資源の海上輸送の混載・帰り荷の集荷システムについて、官民の関係者による研究会において検討し、その結果に基づき運営組織の設立、システム構築、システムの運営を行う。
 
図−提.7 混載・帰り荷の集荷システムの構築(イメージ)
 
(2)提案・営業機能の確立、展開
◇リサイクル業者、収集運搬業者、北九州市(港湾、物流、環境担当)の連携によるセールス体制を確立する。「北九州港エコタウン・リサイクルポート推進機構(仮称)」などの名称が考えられる。
◇本調査をベースに、関東圏、九州離島、沖縄の排出業者、収集運搬業者のニーズを、アンケート、ヒアリング等により把握する。
◇把握された潜在顧客に対し、「北九州港エコタウン・リサイクルポート推進機構(仮称)」が訪問し、セールス、調整を行う。民間事業者は、「企画書」、「見積書」を提示する。
 
図−提.8 提案・営業機能の確立、展開(イメージ)
 
(3)「北九州エコブランド」形成の検討
◇北九州の循環資源輸送に係わる官民の関係者により、「北九州エコブランド研究会(仮称)」を設置し、「北九州エコブランド」の形成に向けた検討を行う。
◇「北九州エコブランド研究会(仮称)」では、北九州におけるリサイクル、循環資源輸送において確保すべき品質基準、標章、顧客への認知の仕方等を検討し、「北九州エコブランド」の内容を確定する。
◇「北九州エコブランド」を確立・運営するために、研究会を発展的に改組して「北九州エコブランド運営委員会(仮称)」を設置し、品質基準、標章の維持、顧客へのPR等を行うことが考えられる。
 
図−提.9 「北九州エコブランド」の形成の検討(イメージ)







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