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2・1・6 主軸駆動発電装置
(1)概要
 最近船舶の運航コストの低減,省エネルギー化の観点から航海中に主機ディーゼル機関の排熱を回収して,その蒸気による排ガスタービン発電機を採用する方法が行われているが,これは主機出力が比較的大形の機関にしか採用できないので省略し,ここではこれらの目的のために使用される主機軸駆動式の交流発電装置について記述する。
 なお,交流発電機自体は一般の船用発電機と変らない。
 発電機の駆動方式すなわち主機によるか補機によるかによって主機と補機の使用油種の相違及び燃料消費率の相違から主機駆動発電機の方がはるかに省燃費となり経済的であるので最近は主機駆動式の発電機が多くなりつつある。
 ここで注意を要することは,電源の二重装備を要求される船舶において主機駆動発電機の場合は,主機の回転条件に左右されずにいつでも使用可能な発電機でなければ主電源として認められない。
 したがって,バックアップエンジンにより運転可能な主機駆動発電機,可変ピッチプロペラを備えた主機駆動発電機又は油だき可能な排ガスタービン発電機などを考慮する必要がある。
 主軸駆動発電装置は電源の性質上,大きく分けて次のようなものがある。
周波数変動形(非定周波数形)
定周波数形
 一般に推進用主機軸又は中間軸から増速装置を介して交流発電機を駆動する方式であり,主機軸の回転速度に変動があればそれにともなって交流発電機の回転速度すなわち周波数が変動するもので,何らかの補正装置を設けないものである。したがって,主機回転速度の変動により発電に利用できる範囲はある程度限定される。ある限度を超えると発電機の運転を停止しなければならない。
 通常は主機の常用出力回転速度付近において使用される。この場合,可変ピッチプロペラ(CPP)船は固定ピッチプロペラ(FPP)船より主機運転中の回転速度の変動が比較的少ないので,その主軸駆動によって発電可能な範囲すなわち稼動時間を長くすることができる。
 周波数変動形の場合に問題になるのは周波数の変動幅であるが,この変動幅が大きくなると船内電気設備に支障が生じてくるので補機の発電装置に切換えるか又は何らかの方法を講じなければならなくなる。
 交流発電機と主機軸との結合方法は種々あり増速にはギヤー,チエン,ベルト等が主として使用される。その一例を図2.22に示す。ただし,この場合バックアップ用補助ディーゼル機関を備えないものも多い。
 
図2.22 主軸駆動発電装置概略結合図(周波数変動形)
ME: 推進用主機関
SG: 主軸駆動発電機
G: 減・増速ギヤー
C: カップリング又はクラッチ
DE: 補助ディーゼル機関(バツクアツプ用)
 
(3)定周波数形
 主軸駆動発電機において駆動軸側に回転速度の変動があっても交流発電機の出力側の回転速度を一定に,又は出力を電気的に変換して周波数を一定に保持する電源装置であって主として次のような方式が採用されている。
(a)渦電流接手方式
(b)油圧多板クラッチ方式
(c)インバータ方式
(a)渦電流接手方式
 この方式は渦電流電磁すべり接手とも称するもので主機軸側と交流発電機との間に設け,主機軸回転速度がかなり大幅(容量にもよるが1.3〜2倍)に変動しても交流発電機の出力周波数を一定に保持するものである。
 構造的には交流発電機にこの接手を組込んで共通体としたものと別体としたものがある。
(i)動作原理
 動作原理は図2.23に示す基本構造図のように励磁巻線に直流電流を流すと互に隣接したNS極が磁化され磁束が発生する。N極から出た磁束は外周側の鉄の円筒形ドラムを経てS極に至る磁路を形成する。この時磁極が回転すると磁極とドラム間にすべり(速度差)が生じ電磁誘導により,うず電流が発生する。このうず電流と磁束の相互作用によってトルクが発生し,ドラムは磁極と同一方向に回転し磁極の回転力がドラムに伝達される。
 
図2.23 渦電流接手の基本構造
 
(ii)伝達トルク
 この接手の伝達トルクは図2.24の特性曲線に示すように磁極とドラムの間のすべりが大きい程,また,磁極の磁束量が大きい程大きくなる。
 したがって,負荷が変動しても励磁電流を調整することにより出力側の回転速度を一定に保つことができる。
 
図2.24 励磁電流の変化に対するすべり速度と伝達トルクの相対特性







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