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(社)海外運輸協力協会創立30周年記念
2. 国際協力講演会
日時 2003年11月11日(火)
場所 虎ノ門パストラル新館 5階「ローレル」
 
プログラム
 
1. 開会挨拶 (社)海外運輸協力協会 会長 竹内 良夫
2. 来賓挨拶 国土交通省 政策統括官 矢部 哲
3. 基調講演 「開発途上国における都市交通問題の現状と課題」 東京大学工学部 教授 森地 茂
4. 協会の歩み (社)海外運輸協力協会 常務理事 桑原 薫
5. 調査研究報告
I. 「運輸分野におけるCDM推進の課題」 元主任研究員 竹内 義治
II. 「ジャマイカ観光の現状」 主任研究員 前野 靖彦
III. 「東南アジアにおける空港の現状と課題」 主任研究員 新関 陽一
6. 閉会挨拶 (株)海外運輸協力協会 理事長 山下 哲郎
 
1.開会挨拶
(社)海外運輸協力協会会長 竹内 良夫
 
 当協会創立30周年記念講演会に、このような多数のご出席を頂き、心よりお礼申し上げます。本日の講演会には、日頃ご指導を頂いています、国土交通省政策統轄官の矢部哲様、国際業務課長の稲葉一雄様、相当の方々を始め、当協会の会員、その他関係多数ご参加いただき、重ねて御礼申し上げます。
 
 当協会は、今年で創立30周年を迎えました。創立当時を思い起こしますと今昔の感がございます。
 当時、政府開発援助(ODA)の強化が図られる中で、開発途上国から運輸インフラの整備を望む声が増加しておりました。その要請に応えて、当時コンサルタントが本格的に始めた海外活動を支援する目的で、当協会が「海外運輸コンサルタンツ協会」として、設立されました。
 その後、30年間、国土交通省のご指導と、日本財団のご支援を頂いて、着実に事業を実施して参りました。
 しかしながら、我が国はODA供与国として平成3年から世界一の座についたものの、ODAをめぐる環境が激変いたしました。
 国内の厳しい経済・財政事情を反映して、我が国のODA予算は、このところ削減の一歩をたどり、今年度も、対前年度比約6%の削減となっています。これまでのODAの主要分野であったインフラ整備が減少し、貧困撲滅や教育、医療などのBHN(Bacic Human Needs)、あるいはNGOの支援に重点が移りつつあります。
 また、国際協力の憲法ともいうべき「ODA大綱」が見直され、この8月には閣議決定されるに至りました。その中で、ODAは経済大国としての義務という従来の考え方から、国益にも合致する方向へと大きく政策転換を遂げています。我々といたしましても、これからの新たな試練に対応していく必要があると考えています。
 しかしながら、ODA予算が減少したと言いましても、30年前の10倍で世界第2位の額となっています。また、運輸インフラの整備は、開発途上国の経済発展のためにも、依然として中核的な役割は、益々重要になっています。
 このような時代であればこそ、原点に立ち返って、国際協力の役割を踏まえつつ、我々に何ができるかを考える必要があります。
 我々といたしましても、これまでの海外活動の実績を踏まえた調査研究活動の充実を図ることが重要と考え、30周年という節目に、このような講演会を企画いたしました。
 本日は、基調講演といたしまして、都市交通分野では大変著名な東京大学の森地先生をお招きしております。
 森地先生には、海外コンサルティング・エンジニアの育成や開発途上国の物流インフラ整備の方向性などにつきまして、ご指導をしていただいております。
 本日のご講演は、これからの協会活動の方向性を導く上で、貴重なお話をしていただけるのではないかと、我々一同大変期待しております。
 また、当協会では、調査研究の重要性に対応するために、平成6年には日本財団からの財政的なご支援を受けて「運輸協力研究センター」を設置し、また、平成14年には「観光開発研究所」を設置しております。
 本日は、当協会のこれまでの事業活動の概要について、常務理事の方から紹介するとともに、研究センター及び研究所に所属する担当者が、「調査研究報告」を行います。ここで実施している環境保全、観光、航空分野のテーマについて皆様方にご報告する予定です。
 
 最後に、当協会への引き続きのご支援、ご協力をお願いいたしまして、主催者の挨拶といたします。
 
2. 来賓挨拶
国土交通省 政策統括官 矢部 哲
 
 只今、ご紹介にあずかりました政策統括官の矢部でございます。協会が創立30周年を迎えられましたことに対して、心よりお慶び申し上げます。
 
 さて、本日の協会創立30周年記念「国際協力講演会」の開催にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。
 貴協会は、昭和48年に創立され、本年で30周年を迎えられました。この間、永年にわたって情報収集、案件形成、人材育成等に取り組まれ、運輸分野の国際協力を推進して来られました。これまでの活動に対し心から敬意を表します。
 
 貴協会が設立された昭和48年は、第1次オイルショックの年であり、戦後の高度経済成長が終わりを告げた年でありました。経済成長で蓄えた力をもとに、外に向かって積極的に援助を展開しようとしていた時期であったのかと思い至ります。そして、翌49年には、現在のJICAが設立されて、政府全体の技術協力推進体制が確立されました。
 その後30年、ODAを巡る状況は大きく変化しました。我が国のODA援助実績額は、30年前の9倍の98億ドルにもなっております。しかしながら、それもピーク時と比べるならば3分の2に過ぎません。限られた予算をいかに有効に活用するかが、今日のODAの課題となっております。
 本年8月には、政府は11年振りにODA大綱を改定いたしました。新大綱は、ODAの目的として、「国益」すなわち日本の安全と繁栄、国民の利益増進を明確に打ち出しました。「国益」とは何か、今後具体的事業を積み重ねながら、しっかりと考えていく必要があります。
 また、これまで、ODAの重点地域とされてきた東アジアでは、めざましい経済発展を遂げる国が現れ、これらの国々とはODAに限定されない関係を強化する必要が生じております。
 昨年1月には、ASEAN諸国を歴訪した小泉総理が、「日ASEAN包括的経済連携構想」を提唱し、我が国とASEAN各国との自由貿易協定(FTA)の締結に向けて、大きく踏み出しました。
 国土交通省においても、交通は諸経済活動を支えるインフラであり、経済全般に先駆けて連携を強化する必要があるとの考え方から、本年10月にミャンマーで「第1回日・ASEAN交通大臣会合」を開催し、日ASEAN連携の枠組みと具体的協力プロジェクトについて合意しました。今後、物流プロジェクト、次世代航空保安システム等16の共同プロジェクトを並行して実施することとしておりますが、主要なものについて、貴協会に調査等を委託しているところであります。素晴らしい成果を挙げてくださるものと期待しております。
 このように、国際協力をとりまく状況は大きく変化しております。しかしながら、経済のグローバル化と地域的経済統合とが並行して進む今日の世界において、国際協力の重要性はいささかも減ずるものではなく、むしろいよいよ増大してくるものと考えます。
 貴協会並びに会員の皆様がこれまでに蓄積された知見・ノウハウは、交通分野において、我が国が「顔の見える援助」を展開していくうえで欠くことのできない大切な財産であります。引き続き、皆様のご協力をお願い申し上げます。
 私ども国土交通省といたしましても、官民連携して充実した国際協力が行われるよう、皆様の活動をご支援申し上げるとともに、運輸分野の国際協力の推進のため、一層の努力を傾けて参る所存であります。
 
 最後に、貴協会、会員各位並びにご臨席の皆様の、益々のご発展を祈念して、私の挨拶とさせて頂きます。







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