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海外運輸 2004年1月
年頭所感
新年を迎えるに当たって
(社)海外運輸協力協会
会長 竹内 良夫
 あけましておめでとうございます。新年を迎えるに当たり一言ご挨拶申し上げます。
 昨年は、当協会創立30年となる節目の年を迎えました。当協会は「社団法人 海外運輸コンサルタンツ協会」として、運輸分野における海外コンサルティング活動の振興を目的として創立され、以後30年を越える長きに渡り、着実に事業を実施して今日を迎えることができましたが、これもひとえに、皆様方の今日までのご支援、ご指導の賜物であり、この紙面を借りて改めて感謝申し上げます。
 今回、創立30周年記念事業を集大成すべく、この「海外運輸」新年号を「創立30周年記念特集号」として発刊いたしました。当協会が昨年実施した「座談会」及び「創立30周年記念 国際協力講演会」の内容を掲載して、記録に残しましたが、関係の皆様方に利用していただければ幸いであります。
 さて、最近の国際情勢は、北朝鮮の核開発をめぐる関係6ヶ国協議の行方が不透明になっている中、イラクの戦後復旧にアメリカの同盟国としての責務が我が国に求められ、昨年末に政府は、自衛隊のイラクヘの派遣を決定しました。軍事力を背景とした国際協力・国際貢献には必ず危険がつきまといますが、イラクの復興に尽力していた2人の外交官が殺害されるという痛ましい事件が起きてしまい、国民の間にもその危険性を感じて自衛隊のイラク派遣に対して意見が分かれているところです。また、フセイン元大統領が拘束されるという新しい展開がありましたが、イラクをめぐる情勢には依然として不安定なものがあります。
 これに対して、ODA等の開発途上国に対する経済協力は、国際協力を安全に実施するという観点からも、大変重要な国策であると考えられますが、我が国のODA予算に目を転じますと、国内の厳しい経済・財政事情を反映して、今年度も、対前年度比約6%の削減となっています。また、近年では、貧困撲滅や保健医療等のBHNやNGOへの支援に重点が移りつつあり、これまでODAの主要分野であったインフラへの投資が減少傾向にあります。
 しかしながら、運輸インフラの整備は開発途上国の経済発展のためにも、依然として中核的な役割を果たしており、また、戦後復興が必要な国々にも緊急に望まれています。
 我々は、今後の国際情勢の新たな変化に対応していく必要がありますが、このような時代であればこそ、原点に立ち返って国際協力の役割を踏まえつつ、我々にできることを考える必要があります。例えば、昨年閣議決定された新たなODA大綱の中でも、開発途上国のODAによるインフラ整備についても、環境保全との調和を図ることが必須条件になってきており、今後、我が国の技術協力も環境保全に係る分野の充実・強化を図っていく必要があると思われます。
 コンサルタント業界を取り巻く環境は、依然として厳しい状況ではありますが、当協会としても、この創立30周年を契機として、会員の皆様方とともに業界の課題の解決に向けた活動をより一層進めていく所存でありますので、今後も、これまでにも増して、皆様方のお力添えをよろしくお願い申し上げます。
 最後に、今年一年の会員の皆様方のご多幸とご発展を祈念いたしますとともに、関係の皆様方におかれましてもより一層のご支援とご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
 
年頭のご挨拶
国土交通省総合政策局
国際業務課長 稲葉 一雄
 新年おめでとうございます。
 昨年は、新ODA大綱の制定、JICAの独立行政法人化などODA関係では大きな動きがありました。しかし、それとともに、あるいはそれ以上に、2003年は地域経済統合の流れが定着し加速された一年として記憶されるべきであろうと思います。「日ASEAN」「自由貿易協定」などの文字が何度も新聞紙面を飾りましたが、先行するビジネスを追いかけるように、政治・行政でも、アセアン各国との連携を強化する方向に明確な一歩を踏み出し、先々は東アジア共同体を望もうかというところまで来ました。紆余曲折はありましょうが、各国との自由貿易協定も確実に進められるはずです。
 私の担当分野でも、東アジア各国のカウンター・パートとの接触が、実に頻繁かつ密になりました。アジア重点主義はそれこそ十年も前から言われてきたことでありますが、ここに来て一層の進展を見せるとともに、その内容は急速に変わりつつあります。
 シンガポール、タイ、マレーシアなどは、政府担当者レベルにおいても、援助国・被援助国の関係から脱却した、新しい対日関係を意識するようになっています。その一方で、CLMV諸国などは、社会経済インフラの整備を含めて、わが国のODAに大きな期待を持っています。必要なODA事業はどしどし進めつつ(世銀等においてインフラの重要性が再認識されているのはよい兆候です)、並行して交通政策面での協議・調整を息長く試みるというような対応がこれからは必要であろうと考えています。
 アジアのいずれの国でも日本に対する信頼がきわめて厚いのは、このような仕事を進める上でたいへん幸いなことです。田中総理の東南アジア歴訪が激しい反日デモに見舞われた1974年から今日までの変化を「日本の政府と企業が30年間にわたって陰徳を積んできた結果である」と要約された方がおられました。このような先達の努力は、我々が引き継がなくてはなりません。東アジア諸国は好むと好まざるとに関わらず今後ともわが国のパートナーであるとするならば、政府であれ民間であれ、あらゆる局面でこれらの国と深く関わり、支援し、良い関係を結んでいくほかに途はないように思います。質の良い仕事をしていくことが何よりも重要であろうと思います。
 海外運輸協力協会では、会員企業の声を集約するとともに、個々の会員では行いにくい活動を進め、政府と民間との連携の場を提供して来られました。このような役割は、今後の国際協力、とりわけアジアとの協力を進めるうえにおいて、一層重要になっていくものと思います。私どもも、気持ちを新たに、協会および会員の皆様と協力しつつ、どしどし仕事を進めて参りたいと思います。
 今年もどうぞよろしくお願いいたします。
 
30周年記念新年号の発刊に当たって
(社)海外運輸協力協会
運営委員長 垣内 元紀
 新春のお慶びを申し上げます。
 30周年記念新年号の発刊にあたり、運営委員長としてご挨拶の機会を得ましたことは、大変光栄なことと感謝いたします。
 当協会も早や30周年を迎えることとなりましたが、これも諸先輩方のご苦労とご尽力の賜物であると敬意を表します。これまでの足跡を辿り、さらにこの節目を機会として、新しい一歩を踏み出すことが重要であると思料致します。
 当協会をめぐる環境として、まず我々の活躍の場である海外に目を向けると、イラクやスリランカなど各地の紛争が解決に向かっているとは言え、まだテロ問題など我々を脅かす問題は山積し、さらに日本国内においても、ODAの削減やJICAの独立行政法人化等々があり、時代の変化による多様な変革に十分に対応していく必要に迫られております。
 ODAの予算削減によるプロジェクトの量から質への転換や、新ODA大綱による国益重視あるいは「顔の見える援助」の実現などに対応するためには、プロジェクトをより一層円滑で且つ効率的、経済的に遂行することが不可欠であり、その為の重要な役割を担うのが当協会の会員各位でありましょう。
 一方、当協会は国土交通省とコンサルタント等の会員とのパイプ役でもあり、今後もどのような形で会員に役立って行けるかが、今後の協会活動を大きく左右するものと思料致します。
 このような非常に厳しい状況下にある今、これを乗り超えるためには、官民一致団結してプロファイやプロジェクトを遂行することが重要ではないでしょうか。また、これらの活動をするにあたり、官側も民間側も、もう本音と建前を分ける時代ではなく、本音で意見交換をし、より建設的な結論を求めるべきではないでしょうか。その橋渡しをする場、即ち官と民がFree Talkingできる場を協会が積極的に提供し、今後の世界の運輸プロジェクトをリードしていく議論を活発化させれば、当協会活動のより一層の発展に繋がるものと信じます。
 幸い世銀やアジ銀では、既にインフラプロジェクトの重要性を再認識し、当協会に適したプロジェクトの遂行を唱えております。それは日本のODAにも大きな影響があるものと思われ、その意味でも当協会会員の活発な活動とその活動を支援する当協会の重要性は増すばかりです。運営委員長としての任務を精一杯果たしたいと思いますので、今後ともより一層皆様のご支援を賜りますようお願い申し上げます。







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