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海外運輸 2003年2・3月
就任ご挨拶
常務理事 桑原 薫
 
 本年(平成15年)2月28日、当協会の総会、理事会を経て、常務理事に選任されました。昨年7月に顧問として当協会に勤務して以来、実質的には常務理事の職務を行ってきましたが、今後はさらに気合いを入れ直して職務に専念したいと思っております。
 
 私は、昭和47年から30年間にわたり旧運輸省及び国土交通省において、海陸空にわたる様々な職務を経験しました。国際関係では、ILO(国際労働機関)、IMO(国際海事機関)、IHO(国際水路機関)、IALA(国際航路標識協会)等に係る業務のほか関西国際空港(株)において航空会社との着陸料、賃料交渉等に従事したことが思い起こされます。
 
 国際協力業務については、当協会に勤務してから、本格的に関わることとなり、以来8ケ月ほど、ODAの実際の姿を私なりに勉強してきました。外務省・JICAの業務、財務省・JBICの業務、各省庁の国際協力業務、特に国土交通省に係る業務、アジア開発銀行等の業務のほか、当協会の会員の皆様が行うコンサルタント等の業務を踏まえた当協会の役割について概要を把握するとともに、平成14年度から15年度にかけての当協会の事業実施及び計画策定に携わってきました。
 
 我が国のODA業務のありかたについては、我が国の景気後退・国家財政の逼迫、不祥事の発覚等から、きびしい見直しが求められ、外務省改革、JICAの独立法人化、ODA大綱の見直しなどが鋭意進められております。さらに公益法人改革が進められるなど、当協会をめぐる情勢はきわめてきびしいものがあります。しかしながら、国内でも、税金や社会保険料を通じて、貧富の差や身障者等援助を必要とする人々の事情に配慮した施策が行われているように、国際協力も、発展段階の異なる世界の国々のあいだの格差を埋めて平和で貧困のない共存共栄できる国際社会をめざすうえでは、不可欠の役割をはたすものと信じています。
 援助の重点の置き方や実施方法についてより有効な方策を求めて随時見直しを行うことは必要なことですが、それなりの規模のODAを行っていくことの意義は、国際社会に生きる日本として、今後とも変わりがないと思います。
 
 私は、海上保安庁で灯台部長の職に就いたことがありますが、そのとき非常に印象に残ることが幾つかありました。そのひとつにこんなことがあります。それは、明治初期に、イギリスの技術者(ブラントンが有名)が、日本の主要な灯台の建設に協力してくれたことです。それらは、デザインも材質もきわめてすぐれており、今でもなお我が国を代表する文化財としての価値を有するものとなっております。イギリスにも当時軍事的・経済的思惑はあったにせよ、長期的に見て日本のためになる立派な灯台を建設してくれた事例は今後の我が国の国際協力を進める上でのよき指針となると思います。
 
 国際協力を進めるにあたっては、なんといっても開発途上国の関係者の声にすなおに耳を傾け、親身になって計画的かつ有効なインフラ整備の促進に貢献することが大切だと思います。
 国土交通省をはじめ関係機関のご支援・ご指導を受けつつ、会員の皆様との協力の下に、当協会が、今後ともよりよい国際協力業務を推進できますよう、私も全力を尽くす所存ですので、これまで以上にどうぞよろしくお願いいたします。







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